[2016/12/21]
674KB
シールド機内側から交換可能!ディスクローラーカッターの交換技術を開発
~最大深度100m・最高水圧1MPaの地質条件でも、安全かつ迅速に作業実施~
鹿島(社長:押味至一)は、2002年に当社が開発した「リレービット工法※1」の適用範囲を拡大すべく、主に岩盤や巨礫・玉石混じり地盤などの掘削に用いられる「ディスクローラーカッター」を、シールド機内側から安全かつ迅速に交換する技術を開発しました。
これにより、最大深度約100m・最高水圧約1MPaの大深度・高水圧下の地盤でも、作業者が切羽前面に出るための地盤改良や薬液注入等の補助工法を必要とせず、シールド機内側から安全にディスクローラーカッターの交換を行うことができます。特に高水圧となる大深度地下では、これまで地盤改良に多大な工事期間と工事費を要していましたが、本技術の適用により、大幅な工程短縮と工事費の縮減が期待されます。
開発の背景
リレービット工法は、泥土圧式・泥水加圧式のいずれのタイプのシールド工法でも補助工法を必要とせず、“いつでも、どこでも、何回でも”シールド機内側からカッターを交換できる技術として、これまでに数多くのシールド工事にて適用されています。
近年、大深度・高水圧下の硬質地盤における長距離トンネルの構築ニーズが増大しており、シールド工法による高速施工を実現するため、大型のディスクローラーカッターを安全かつ迅速に、任意の場所で交換できる技術の確立が求められています。しかし、高水圧が作用する大深度地下における硬質地盤でのディスクローラーカッターの交換は、耐久性や止水性、作業安全性確保の観点から難易度が高く、これまで施工実績はありませんでした。
そこで鹿島は、川崎重工業株式会社の協力を得て、既存のカッター交換技術である「カッターホルダースライド方式」を用いた、ディスクローラーカッターの交換技術を開発しました。これにより、先例のない大深度・高水圧下の硬質地盤でも補助工法を必要とせず、シールド機内側からディスクローラーカッターを安全かつ迅速に交換できるようになりました。
ディスクローラーカッター交換技術の特長
大深度・高水圧下の硬質地盤での、カッター交換時にかかるカッターホルダーへの負荷を最小限に抑えるべく、カッターホルダースライド方式を採用しました。摩耗したディスクローラーカッターを油圧ジャッキによってカッターホルダーごとカッタースポーク内へ引き込み、シールド機内側へカッターホルダーを取り込む構造です。従来の回転方式と比べ、カッター交換時における土砂の流入を最小限に抑えることができるため、カッターホルダーにかかる負荷を抑制し、耐久性を高めます。
カッターホルダー引込み後に、カッタースポーク内に設置された止水ゲートを閉めることにより、切羽前面からの地下水の流入を防ぎます。さらに、カッターホルダーに止水シールを貼付することによって、ゲート開閉時の止水性を補完します。また、カッターホルダーに抜出防止ピンを取り付けることで、ゲート開閉時のカッター交換作業を安全に実施することができます。
また、カッターホルダーに内蔵された摩耗計測器や回転検出器のデータを基に、ディスクローラーカッターの交換計画を策定することができ、カッターの交換回数を最小限に抑えられることも特長の一つです。
なお、長距離シールド工事では、岩盤などの硬質地盤から、砂質土や粘性土地盤といった未固結地盤までの土質変化が想定されます。粘性の高い地盤をディスクローラーカッターで掘進すると、掘削土の付着によりカッターの回転が妨げられ、偏摩耗により掘進困難となる可能性があります。しかし、掘削地盤に合わせてディスクローラーカッターを先行ビット※2に換装することで、円滑なシールド掘進が可能です。
本技術は、川崎重工業播磨工場にて、最大深度約100m・最高水圧約1MPaを模擬した条件のもと、実物大のディスクローラーカッターを用いた実証実験を行い、狭あいな空間におけるカッター交換の作業安全性、また被圧水下での止水性を検証しました。その後、ディスクローラーカッターの切削力に相当する荷重を10万回繰り返し載荷したあと、再度カッター交換を行うことで、所定の耐久性・止水性・作業安全性を有していることを確認しました。
今後の展開
今後鹿島は、更なる大深度化、長距離化が見込まれる都市部のシールド工事だけでなく、大深度・高水圧下の岩盤や巨礫・玉石混じり地盤といった厳しい施工条件が想定される山岳部において、積極的に本技術の適用を提案してまいります。
※1 鹿島の土木技術 シールドトンネル技術 「リレービット工法」
https://www.kajima.co.jp/tech/c_shield_tunnel/inherent/index.html#!body_01
※2 地山を先行して切り崩すカッタービット
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。