[2017/07/27]
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「パイルMB工法」を開発、大型既存杭の解体工事に実適用
微少発破を用いる「鹿島MB工法®」がさらに“深化”
鹿島(社長:押味至一)は、2011年に開発した微少発破による建物基礎の解体工法「鹿島マイクロブラスティング(MB)工法」を、より深い場所まで一度に発破できるよう改良した「パイルMB工法」(商標登録出願中)を開発し、このほど都内再開発工事の大型既存杭解体工事に実適用しました。その結果、騒音・振動の低減、解体工期の削減に大きな効果があることが確認できました。
パイルMB工法による発破後、地上に露出した既存杭
開発の背景
都市部の再開発工事においては、新築される建物の地下部分は既存の建物より深くなることがほとんどであり、既存の基礎や杭が新築部分に干渉する場合は、その解体工事を伴うことになります。地下の狭あいな場所での解体は、小型重機による非効率的な作業となり時間を要することが多く、また大型の基礎構造物を解体する場合は油圧ブレーカなどを用いた打撃による作業が必要となり、騒音、振動など、周辺環境への影響が大きくなるという課題がありました。
鹿島ほか2者※が共同開発した鹿島MB工法は、微少量の爆薬を用いて構造物を局所的に発破し、あらかじめ「ひび割れ」を入れることで、効率的に解体する画期的な工法です。地下構造物解体工事の工期短縮はもちろんのこと、発破時の一瞬の騒音はあるものの、油圧ブレーカによる継続的な騒音と比較すれば周辺環境への影響を大きく軽減できます。これまで都心部を含む20件の適用実績を重ねるとともに、2016年日本建築学会賞(技術)を受賞しています。
※鹿島、国立研究開発法人産業技術総合研究所、カヤク・ジャパン株式会社による共同開発
鹿島MB工法による周辺環境への影響低減のイメージ
パイルMB工法の概要
パイルMB工法は、鹿島MB工法をより深い場所まで発破できるよう、改良した工法です。
鹿島MB工法では、爆発のエネルギーを効果的に構造物に伝えるため、爆薬を装填する孔を細く(φ24mm以下)設定しています。しかし、細い径で長く穿孔することは技術的に難しいことから、地中深くまでの発破が必要な既存杭への適用は限定的でした。
そこで、地中深くまで穿孔可能な太い径(φ65mm)でも発破の効果が変わらないよう、孔に水を充填することで爆発エネルギーのロスを抑える、パイルMB工法を新たに開発しました。これにより、従来の約5~6倍の深さまで一度に発破することが可能となり、効率的、かつ低騒音・低振動で建物基礎を解体する画期的な工法が、既存杭の解体にまで幅広く適用できるようになりました。
作業手順は以下の通りです。
Step 1 穿孔 : クローラードリルなどを用い、爆薬を装填するための孔をあけます
Step 2 装薬 : 爆薬を装填し、水を充填します
Step 3 発破 : 発破し、地中の杭をあらかじめ割ります
Step 4 掘削・破砕 : 杭を地上に露出させ、破砕により解体します
パイルMB工法による既存杭解体工事の作業手順
現場への適用
今回開発したパイルMB工法を、都内の代表的な再開発工事である「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業(A地区)」の既存杭解体工事に適用しました。大口径(φ1800mm以上)の既存杭25本の解体に適用、発破によりひび割れを入れた後の破砕作業において、油圧ブレーカを継続的に用いる在来工法より騒音・振動とも大幅に低減されたことはもちろん、地中で発破することにより発破時の一瞬の騒音においても改善が見られました。また、解体作業全体にかかる時間も、在来工法による想定より短縮されました。
現場への適用
都市部の新築工事において、既存基礎解体工事における騒音・振動低減、工期短縮へのニーズは今後も大きいと考えられます。当社は鹿島MB工法とパイルMB工法の効果的な活用により、このようなニーズに積極的に応えてまいります。
工事概要
工事名 | : 日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業(A地区) |
事業主 | : 日本橋室町三丁目地区市街地再開発組合 |
工事場所 | : 東京都中央区日本橋室町三丁目1番地他 |
建物規模 | : S造一部SRC・RC造、地上26階、地下3階、延べ約168,000m2 |
工期 | : 2015年12月~2019年3月(予定) |
設計 | : 基本設計 株式会社 日本設計 |
実施設計 鹿島建設株式会社 | |
デザイン監修 ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン 株式会社 | |
株式会社 ランドスケープ・プラス | |
施工 | : 鹿島建設・清水建設・佐藤工業特定業務代行共同企業体 |
※参考
騒音・振動の少ない基礎の解体工法「鹿島マイクロブラスティング工法」を開発

(2011年10月27日プレスリリース)
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