[2017/07/31]
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最終処分場“エコアくまもと”で今年もホタルが舞う
~地域の生態系を守り育てるホタルビオトープの成立を実証~
鹿島(社長:押味至一)が、熊本県公共関与産業廃棄物管理型最終処分場(熊本県南関町、以下エコアくまもと)に構築したホタルビオトープでは、今年もホタルが舞い、地域生態系保全に貢献する施設として成立していることを確認しました。
2015年10月の竣工以来、ホタルをはじめとした地域に生息する限られた生物資源を殖やし、環境基盤を盤石にするとともに、鹿島の技術である動植物・環境モニタリングシステム“いきものNote®”を活用した調査・管理を継続、グリーンインフラの構築を通じ、「地域に役立つ施設」となっています。
なお、これらの実績などが高く評価され、エコアくまもとは、「平成28年度土木学会賞環境賞」を受賞しました。
ビオトープ構築の背景
雑木林と水田が混在する里山に建設されたエコアくまもとは、地域社会と調和する最終処分場としてだけではなく、資源循環や生物多様性保全を学習する県北の環境教育拠点としても大きく期待されていました。そこで、地域のシンボルであるホタルや、近年、周辺地域の生態系構成要素である里山環境の保全が重要視されていることに着目し、処分場敷地内にホタルビオトープを構築しました。
ビオトープの実証
ホタルは、植生や外気温、水温など、生息する地域の環境要因に適応した地域固有のライフサイクルを営んでいます。また、ホタルは成長の段階に応じて水中から陸上へ生息場所が変わるため、当地でホタルが飛翔することは、良好な里山環境が維持されていることの指標になります。したがって、今回ビオトープを設計するにあたり、地域の生態系を特徴づける環境要素の抽出や、現地での計測・実験に基づいた環境条件の定量化が求められました。
また、エコアくまもとでは、構築するビオトープへの“ホタル”とその餌となる“カワニナ”の導入・定着が課題でしたが、竣工後の継続的なモニタリングや管理により、地域の環境基盤としてビオトープが機能し続けていることを確認しています。
1. 現地調査とビオトープの設計
環境条件の調査や、水源となる敷地内のため池の水を用いた実験を現地にて行い、水温の変動やカワニナの成長量を実測しました。その結果、カワニナが良好に生育する条件を見出すことができ、ホタルビオトープの設計の最適化を図ることができました。
2015年10月の竣工と同時にカワニナを放流し、その定着を確認したうえで、翌年の3月に増殖したゲンジボタルの幼虫をビオトープへ放流しました。
なお、これまでのホタルの生態に関する研究から得られた知見は、幼虫の輸送方法や放流時期の選定などに活かされています。
放流直後から、動植物・環境モニタリングシステム“いきものNote※1、2”を活用し、現在も継続して調査・管理を実施しています。その結果、ビオトープ構築後2年連続でゲンジボタルの飛翔が確認できました。また、希少種であるコガタノゲンゴロウやウチワヤンマの飛来も確認できたほか、多種多様な生き物が移入・定着するなど、ビオトープが周辺地域の生態系の環境基盤として機能し、生物多様性に貢献していることが確認できました。
現在も継続してモニタリングを実施しており、“エコアくまもと”は環境教育拠点として有効に活用されています。
※1 iPadを利用した動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」を開発 (2013年2月25日リリース)
※2 「平成28年度ダム工学会 技術開発賞」受賞
今後の展開
鹿島は、生態系保全の場として地域に貢献する処分場施設を目指し、外来種の放流などによって生物多様性の危機にさらされている淡水魚類の保護・増殖拠点としても、“エコアくまもと”のビオトープが活用できるよう、学識経験者と連携した新たな取り組みを始めています。
今後も、モニタリングの継続によりさまざまなデータを蓄積し、先進的なグリーンインフラ整備や地域生態系・生物多様性の保全技術の高度化を図ります。
工事概要
工事名 | : 熊本県公共関与管理型最終処分場建設工事 |
発注者 | : 公益財団法人 熊本県環境整備事業団 |
施工者 | : 鹿島・池田・興亜・岩下特定建設工事共同企業体 |
工事場所 | : 熊本県玉名郡南関町下坂下冷水1953 |
工期 | : 2013年7月1日~2015年10月21日 |
施設種類 | : 産業廃棄物管理型最終処分場 (クローズド・無放流型) |
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。