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プレスリリース

[2019/07/25]

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環境DNA技術を用いたホタルの調査手法を開発

~少量の水試料からホタルの幼虫の存在を把握~

 鹿島(社長:押味至一)は、環境DNA※1を活用して、水中に生息し小型で発見しづらいホタルの幼虫の生息状況を調査する手法を開発しました。
 本手法は、独自に開発したPCRプライマー※2(ホタルプライマー)を用いて、通常は成虫の飛翔を目視で数えて把握するホタルの生息状況を生化学分析で行えるようにするもので、これまで困難であった水中生活期のホタルの幼虫のモニタリングを可能にするとともに、調査に伴う環境への人為的な影響を最小限に抑えることができる、環境に優しい手法です。

※1 環境DNA・・・生物の生息環境(水中や土中等)に、生物が放出したDNA
※2 PCRプライマー・・・目的のDNAを判別する目印の働きをする合成DNA

環境DNA技術を用いたホタルの調査手法

環境DNA技術を用いたホタルの調査手法

開発の背景

 ホタルは古くから人々に親しまれている生物であり、また里山を代表する生物種の一つです。鹿島ではホタルが生息できる環境を保全、再生する技術を確立し、2015年に竣工した熊本県公共関与産業廃棄物管理型最終処分場「エコアくまもと」内にホタルビオトープを構築しました。その後、ホタルを始めとした動植物の生息状況を継続的に調査し、ビオトープの状態を把握するとともに、維持管理を行っています。
 ホタルの生息状況の把握には、通常、成虫の飛翔を目視で数える手法が採用されていますが、ホタルは一生の大部分を幼虫として過ごすため、『ホタルがどこに、どのくらい生息しているか』をより正確に把握するには、幼虫の生息状況の把握が重要です。しかし、ホタルの幼虫は体長0.5~2.5cm程度と小さく、水中の石の隙間や草の根元等に隠れているため、目視で確認することは非常に困難でした。
 そこで鹿島は、水中のホタルの幼虫の存在を把握する方法として、新しい生物調査技術として注目を集めている環境DNA技術に着目しました。

技術の概要

 環境DNA技術は、生物が自らの生息環境(水中、土中、空気中)に放出した糞や粘液由来のDNAを分析し、対象生物の存否や生物量を推定する技術です。近年研究が盛んに行われており、魚類を中心に活用が始まっています。
 しかし、ホタルを含む昆虫類については、魚類と比べ糞や粘液の量がごく僅かな上、放出されるDNAは更に微量で検出が困難なことから、研究事例がまだ少ないというのが現状でした。
 この検出困難とされるごく微量のホタルのDNAを、調査地で採取した水(水試料)の中から検出し、幼虫のモニタリングへの活用を可能にしたのが、今回開発した調査手法です。

調査手法の特長

 本手法の主な特長は以下のとおりです。

1.ホタルの幼虫のDNAのみを増幅する専用のPCRプライマー(ホタルプライマー)を独自に開発

 採取した水試料中には、環境中に存在する様々な動植物由来のDNAが多量に存在しています。このため、それらの中からホタルの幼虫のDNAのみを検出するには、専用の“PCRプライマー”が必要です。本手法では、ゲンジボタルの遺伝子配列情報を基に独自に設計・開発したホタルプライマーを用いてゲンジボタルのDNAのみを判別、PCR装置にて増幅することにより、様々な生物のDNAが含まれる水試料からゲンジボタルのDNAのみを確実に検出することが可能です。

2.少量の水試料からゲンジボタルの幼虫の存在を把握

 当社技術研究所にて飼育中のゲンジボタルの幼虫を対象に、ホタルプライマーを用いたDNAの検出実験を行いました。様々な条件を設定し、飼育水中のDNAの検出を行った結果、幼虫の個体数、密度や大きさ、並びに浸漬時間に応じて検出されるDNA量が変化することを確認しました。

ホタル飼育水からのDNA検出結果

ホタル飼育水からのDNA検出結果

3.ホタルの生息地の水試料からゲンジボタルのDNAを検出

 飼育水にてホタルプライマーの精度を検証できたことから、さらにDNA濃度が低いと想定されるホタルの生息地(関東圏)で、1リットル程度の水試料を採取し、本手法を適用しました。検証の結果、ゲンジボタルのDNAを検出することに成功し、DNAの検出された地点ではゲンジボタルの飛翔も確認できました。


今後の展開

 環境DNA技術を活用した本手法の開発により、ホタルのモニタリングを、より効率的に行える基礎的な技術を確立することができました。現在、当社が維持管理を行っている「エコアくまもと」のホタルビオトープで適用を進めながら、本手法のホタルの生育調査手法としての完成度を高めています。
 わずかな水試料の採取のみで行える本手法は、調査自体がもたらす人為的な影響を最小限に抑える環境に優しい手法であり、広範囲かつ幅広い動植物を対象とする網羅的な生物モニタリングにも応用できます。これらの技術を発展させ、鹿島が施工するグリーンインフラの品質確保や、地域の環境保全ニーズに対するソリューションに積極的に貢献できるよう、今後も研究を進めてまいります。

エコアくまもとに併設するホタルビオトープ

エコアくまもとに併設するホタルビオトープ

(参考)
最終処分場“エコアくまもと”で今年もホタルが舞う 別ウィンドウが開きます
(2017年7月31日プレスリリース)

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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