[2019/12/17]
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安価で、高速施工を可能にする「スマート床版更新(SDR)システム」を開発
工事費を2割低減、床版取替工程を1/3に短縮、ソーシャルロスを大幅に低減
鹿島(社長:押味至一)は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスの大幅な低減を可能にする新しい床版更新システム「スマート床版更新(SDR※)システム」を開発しました。
本システムを適用することで、既設床版の撤去、鋼桁上フランジの錆などを除去するケレン作業(以下、主桁ケレン)、高さ調整工、新設床版の架設を同時並行で進めることができ、これらを順次繰り返しながら行う標準的な施工方法と比較し、床版取替工程を約1/3に短縮する高速施工が可能となります。また、新たに開発した大型クレーンに代わる軽量な床版撤去機および架設機を適用することで、取替え作業時に鋼桁に作用する荷重を低減できるとともに、クレーンによる床版の旋回を伴う揚重作業が不要となるため、交通規制範囲の最小化、ならびに近接する交通や周辺施設に対する高い安全性の確保が可能となります。さらには、工事現場の近傍に設置したプレキャスト工場で床版を製作することにより、工事費が2割程度低減すると見込んでいます。
※Smart Deck Renewal
開発の背景
高度経済成長期に整備された道路橋は、大型車の通行量の増加や凍結防止剤の散布などにより、現在急速に劣化が進行しており、適切な維持管理および更新が喫緊の課題となっています。
道路橋の床版更新工事にあたっては、工事に伴うソーシャルロスを低減するため、交通規制の期間や範囲を最小限にする技術に加え、近接する交通や周辺施設への安全を確保できる施工法が求められています。
スマート床版更新(SDR)システムによる床版取替の概要
本システムは、床版取替にかかわる4つの作業、(1)既存床版の縁切り・撤去、(2)主桁ケレン、(3)高さ調整工、(4)新設床版の搬入・架設を、それぞれ専門の作業班が前進しながら並行して作業する、いわゆる「移動式工場」を目指した施工システムです。(1)から(4)までの作業を順々に繰り返していく標準的な工法と比べ、各作業班での連続作業が可能となり、工期の大幅な短縮を実現します。
<施工の流れ> ((1)~(4)を同時に施工)
(1)既存床版の縁切り・撤去
撤去可能な大きさに切断した既設床版上に、新たに開発した床版撤去機から吊り下げた剥離装置をセットし、鋼桁から床版を引き剥がす。
引き剥がした床版を剥離装置と共に吊り上げた後、床版撤去機の内部に誘導した搬出用トラックに積み込み、場外に搬出する。
(2)主桁ケレン
鋼桁上フランジのケレン作業を行い、防錆剤を塗布する。必要に応じてずれ止めも除去する。新たに開発したR面取りロボットやケレンロボットを適用することで、作業員の負担を大幅に減らすことが可能となる。
(3)高さ調整工
床版の高さを調整するための硬質ゴムと、床版下の無収縮モルタルの漏れ止めとなるソールスポンジを設置する。
(4)新設床版の搬入・架設
新設床版を乗せたターンテーブル付の床版運搬台車を、新たに開発した床版架設機の内部を通過させながら架設位置の手前まで移動する。
ターンテーブルを90度回転して床版架設機で新設床版を吊り上げ、架設位置まで前進し、床版を降下・設置する。
スマート床版更新(SDR)システムの特長
◇高速
大型クレーンを用いた標準的な施工方法に対し、既設床版の撤去から新設床版の架設までの工程を約1/3※に大幅に短縮できます。
※クレーン2台に対する値。1台の場合約1/6
◇安全
床版撤去機および床版架設機の内部を、床版搬出用トラックおよび床版運搬台車が通過できるため、既設床版および新設床版の旋回を伴う揚重作業が不要です。これにより、最小規制範囲での施工が可能になり、一車線規制による半断面施工時においても、近接する交通や周辺施設に対する安全性が確保できます。
◇軽量
軽量な床版撤去機および床版架設機を用いることで、大型クレーンを用いた標準的な施工方法に対して、施工時に鋼桁に与える影響(発生応力)を1/2~1/3に大幅に低減できます。
工事現場近傍にプレキャスト工場(サイトプレキャスト工場)の設置
本システムの採用に加えて、JIS認証(JIS A 5373)を取得したPC床版を製作するプレキャスト工場を、工事現場の近傍に設置することで、床版の製作経費や運搬費が削減でき、工事費の2割程度の低減が見込めます。また、床版部材の車両運搬に伴う騒音振動や交通渋滞、CO2排出等によるソーシャルロスを削減することで、本システムの効果を一層高められます。さらに、サイトプレキャスト工場とすることで、地元企業から生コンクリートの調達が可能となり、地元との協業も図れます。
実物大実証実験
2019年9月に、既設床版の縁切り・撤去、新設床版の搬入・架設作業を対象として、サイクルタイムおよび施工安全性の検証を目的とした実物大実証実験を行い、本システムの有用性を確認しました。
今後の展開
実物大実証実験において所期の結果を得たことを受け、今後は実工事への適用に向け、本システムを積極的に提案していきます。併せて、自動化を初めとした機能向上についても研究開発を進め、交通規制等によるソーシャルロスを最小限にとどめる道路橋床版更新工事の実現に寄与していきます。
(参考)
動画でみる鹿島の土木技術「リニューアル」
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。