[2021/03/23]
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台形CSGダムにおける保護コンクリート構築の
合理化施工システムを開発・実用化
~ 成瀬ダム堤体打設工事において初適用し有効性を確認 ~
鹿島(社長:押味至一)は、上下流面が階段状の保護コンクリートで覆われる台形CSGダム※の施工において、型枠および目地・止水板の設置作業を自動化・合理化する「置き型枠自動スライドシステム」を開発し実用化しました。本システムは、置き型枠自動スライドリフタ、止水板台車、おもり台車の3種類の台車で構成され、保護コンクリートの型枠設置、打設および目地・止水板設置作業における施工速度、安全性、生産性の向上を実現するものです。今般、秋田県で施工を進める成瀬ダム堤体打設工事に初適用し、その有効性を確認しました。
本システムは、当社が開発した自動運転を核とした次世代の建設生産システム「A4CSEL®」による、CSG高速打設を実現する自動化施工技術の一つです。
※ダムの型式の一つで、砂礫に水とセメントを配合して生成されたCSG (cemented sand and gravel) を台形状に盛り立てたコンクリートダムの一種
開発の背景
台形CSGダムの施工では、CSGを高速打設する技術が確立されているため、CSGに追随して打設する上下流面の保護コンクリートの型枠設置作業が、堤体の打ち上がり速度に大きく影響します。従来の施工方法を採用した場合、型枠の吊り上げや設置には堤体打設面にクレーンを据える必要がありますが、堤体の幅は打設が進むにつれ狭くなり、打設作業との競合が増すなど、施工速度の低下や安全面での課題がありました。
また、保護コンクリートの目地・止水板設置作業は、狭隘な空間での作業となるため、作業に手間がかかることに加えて、コンクリートの締固め不足により、品質が低下するといった懸念がありました。
本システムの特長と仕様
本システムは、(1)置き型枠を自動で吊り上げ、所定の位置にセットする置き型枠自動スライドリフタ、(2)止水板のリフトアップに用いる止水板台車、(3)保護コンクリート打設時に置き型枠の滑動・転倒を防止するおもり台車、の3種類の台車で構成されます。各台車は、置き型枠として用いるH形鋼をレールにして走行するため、堤体打設面でのクレーン作業は不要となり、堤体での作業を阻害することなく保護コンクリートの施工が行えます。
(1)置き型枠自動スライドリフタ
CSGのリフト高さ0.75mに合わせてH形鋼(H400)を2段重ねた置き型枠(H=0.8m、L=5m)を、既打設の最下段から吊り上げて設置するものです。設置完了後、次の箇所に5m横移動し同様の作業を行います。これら一連の作業をタブレット端末からの操作により自動的に行うことができます。 |
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(2)止水板台車
保護コンクリートは、15m毎に鋼製目地板と2枚の止水板を設置する構造になっています。 今回適用した止水板台車は、ロール状に巻いた止水板を保護コンクリートの打設の進捗に合わせて引き上げるだけで固定作業が完了するものです。CSG打設面の外側から作業を行うことができるため、堤体打設面上のクレーン作業を省略することが可能です。 |
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(3)おもり台車
保護コンクリート打設時の置き型枠の滑動と転倒を防止するため、おもり(荷重)を置き型枠に載せることでコンクリート打設時の側圧に抵抗します。5mのおもり台車3台を連結して並べて1ブロック(15m)を打設し、終了後、隣のブロックへ横移動します。 これにより、置き型枠の固定が不要となり省力化が図れます。 |
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従来の作業方法との比較
本システムによる保護コンクリートの型枠および目地・止水板の設置作業を、従来の方法と比較しました。保護コンクリートの打設速度が格段に向上したとともに、生産性・安全性の向上も確認できました。
今後の展開
本システムを、今回適用した台形CSGダムにとどまらず、堤防、防潮堤、護岸など、階段形状で延長の長い構造物の構築工事に普及・展開していきます。
工事概要
工事名 | : 成瀬ダム堤体打設工事(第1期) |
工事場所 | : 秋田県雄勝郡東成瀬村椿川地内 |
発注者 | : 国土交通省東北地方整備局 |
施工者 | : 鹿島・前田・竹中土木特定建設工事共同企業体 |
諸元 | : 台形CSGダム、堤高 114.5m、堤頂長 755m、堤体積 4,850,000m3 |
工期 | : 2018年5月~2022年12月 |
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「台形CSGダムにおける保護コンクリート構築の合理化施工システム」
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