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プレスリリース

[2021/06/30]

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山岳トンネル工事を対象とした自動化施工システム
「A4CSEL for Tunnel」の開発

トンネル工事のずり出し作業およびコンクリート吹付け作業の自動化を実現

 鹿島(社長:天野裕正)は、建設機械の自動化を核とした次世代の建設生産システム「A4CSEL®」の適用拡大に向け、ダム工事を対象とした「A4CSEL for Dam」に続き、山岳トンネル工事を対象とした自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」の開発を進めています。
 今般、一般社団法人日本建設機械施工協会施工技術総合研究所(静岡県富士市)内に設けた模擬トンネルで、山岳トンネル工事における自動ホイールローダによるずり出し作業および自動吹付機による吹付け作業の自動化を実現しました。

自動ホイールローダによるずり搬出の様子

自動ホイールローダによるずり搬出の様子

自動吹付機による切羽面の吹付けの様子

自動吹付機による切羽面の吹付けの様子

開発の背景

 当社は、建設業界における喫緊の課題である「熟練技能者不足」、「頻発する労働災害」、「他産業と比べて低い生産性」の抜本的な解決を目指し、技術開発を進めています。
 山岳トンネル工事での切羽周辺作業は、周辺岩盤の性状予測技術や崩落検知などの計測技術による危険度評価がなされているものの、根本的な安全確保には至っておらず、依然として岩盤の崩落等の危険度が高い作業です。切羽周辺の作業は熟練を要し、自動化は困難とされてきましたが、究極の安全性向上策として切羽周辺域の無人化を目指し、関連する作業の自動化に取り組んできました。

開発技術の概要

 「A4CSEL for Tunnel」では、山岳トンネル掘削工事における一連の作業である (1)穿孔 (2)装薬・発破 (3)ずり出し (4)アタリ取り (5)吹付け (6)ロックボルト打設に使用する各重機を自動化するとともに、作業方法の分析・シミュレーションによる基本作業の最適化、現場環境に適合した作業の構築を行います。これにより、熟練技能者による作業に匹敵するレベルでの自動運転を実現し、安全性や生産性、施工品質の向上を同時に満たすことを目指しています。
 2016年に穿孔作業を自動で行う「4ブームフルオートコンピュータジャンボ」を導入、2019年にはロックボルト打設の一連作業を完全機械化する専用機を開発するなど、順次、掘削作業の機械化・自動化を進めてきました。また、2018年からは模擬トンネルにおいて「コンクリート吹付け」作業の自動化開発に着手、2020年からは「ずり出し」作業の自動化の開発を進め、このほど、自動ホイールローダによるずり出し作業および自動吹付機による吹付け作業の自動化を実現しました。

「A<sup>4</sup>CSEL for Tunnel」のコンセプト

「A4CSEL for Tunnel」のコンセプト
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1.トンネル工事におけるずり出し作業の自動化

 ずり出し作業は、発破によって切羽に発生した岩砕をホイールローダですくい取り、そこから数10mから150m程度後方に配置した破砕設備等に積み込む作業です。標準的な二車線道路のトンネル(断面積約80m2)工事では、1回の発破で発生するずりを搬出するために、ホイールローダが切羽と破砕設備間を50回程度往復走行しなければならず、坑内という作業環境と相まって苦渋を伴う作業となります。
 ホイールローダの自動運転は、屋外での実施例はありますが、トンネル坑内はGPSが使用できず、リアルタイムでの動的な位置計測が困難なため、実施例はありませんでした。
 今般、コマツ(社長:小川啓之)製のホイールローダ(WA470)を同社と共同で自動化し、坑内GPSおよびSLAMを組み合わせて自己位置をリアルタイムに計測・把握できるようにするとともに、これまで「A4CSEL for Dam」の開発で培った自動運転技術を応用、適用しました。これにより、模擬トンネルにおいて、自動ホイールローダが切羽に堆積する岩砕をすくい取り、その後バックで走行、破砕設備を模したホッパに投入するまでの一連作業の完全自動化に成功しました。

※SLAM:Simultaneous Localization and Mapping
移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術。高精度スキャナ等を使って自己位置を推定した上で周辺の障害物等を検知し構築した地図情報を使って障害物等を回避し、特定のタスクを遂行できる。

PCから自動ホイールローダに指示を送る

PCから自動ホイールローダに指示を送る

自動ホイールローダと坑内の高精度スキャナ

自動ホイールローダと坑内の高精度スキャナ

2.コンクリート吹付け作業の自動化

 凹凸のある掘削面の上に所定の厚さで均質にコンクリートを吹き付ける作業は、対象面の形状に合わせた複雑なノズル操作が必要な熟練を要するものであるため、自動化による効率的な施工が最も難しい作業です。これに対し鹿島では、吹付け機械を自動化するとともに、対象面を計測し、その結果に合わせて必要な吹付け厚および範囲を迅速に計画、その計画通りに動作する制御システムを開発しました。
 自動吹付け作業の目標は、(1)所定の範囲を必要な厚さで「きれいに」、(2)少ないリバウンド(対象面からはね返る無駄なコンクリート)量で、(3)速く作業することです。このため、コンクリート材料の性状の他、ノズルのスイング速度や角度、対象面までの離隔といった様々なノズルワーク指標など種々の要因に関し、シミュレーションや実験によって最適な材料、吹付けパラメータと制御方法を決定し、これらを定式化しました。これにより、複雑な形状の対象面でも設定した厚さに対し±2㎝という高い精度で吹付けが可能となり、リバウンド量も従来と比べて約30%低減することが可能となりました。模擬トンネルの実験では、切羽面、支保工裏、坑壁面と異なる対象部位に高品質な吹付けを短時間で行うことに成功しました。

自動吹付機による支保工裏への吹付けの様子

自動吹付機による支保工裏への吹付けの様子

自動吹付機

自動吹付機

今後の展開

 今回開発した2つの技術により、「A4CSEL for Tunnel」のうち、「装薬・発破」を除く全ての施工ステップにおいて、機械化、自動化、およびそれらを核とした施工システムのメニューが揃いました。今後はこれらを現場に実適用するためのブラッシュアップを図っていきます。
 また、各施工ステップの自動化とともに、効率的で生産性の高い施工マネジメント技術の確立を図っていきます。さらに、専用オペレータの育成など自動化施工に即した施工体制も並行して確立し、自動化技術を核とした次世代建設生産システム「A4CSEL for Tunnel」の早期の現場展開を進めていく予定です。

模擬トンネル概要

一般社団法人 日本建設機械施工協会施工技術総合研究所
敷地内テストフィールド 模擬トンネル西側(新設模擬トンネル)
場所  : 静岡県富士市大渕3154
諸元  : トンネル延長55m 掘削断面積76m2(高速道路二車線断面を想定)

動画でみる鹿島の土木技術 山岳トンネル
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その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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