[2022/08/24]
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高速道路のグラウンドアンカーに
光ファイバを用いた張力計測システムを初適用
切土のり面におけるグラウンドアンカーの健全性と地中の変状を見える化
鹿島(社長:天野裕正)は、2016年に3社※1で共同開発した「光ファイバを用いた張力計測システム」を、中日本高速道路株式会社発注の「東名高速道路上石山地区切土のり面補強工事」(神奈川県足柄上郡山北町、以下「本工事」)におけるグラウンドアンカー更新工事に適用しました。高速道路切土のり面への本システムの本格的な適用は初めてです。
本システムを適用することで、従来よりも簡便かつ安全にグラウンドアンカー全長の張力分布を高精度に把握することができます。これにより、グラウンドアンカーの健全性※2が見える化されるとともに、切土のり面の変状を随時検知できるようになります。今後、本システムを活用することで、高速道路のり面の安全性の向上、維持管理の高度化・効率化に大きく貢献していきます。
※1 鹿島、住友電工スチールワイヤー株式会社、ヒエン電工株式会社による共同開発
※2 グラウンドアンカーが地山に定着して正常に機能している状態
適用の背景
社会的に重要なインフラである高速道路には、切土のり面で構成されている区間が数多く存在します。このような区間では、地山の長期的な動きや大雨・地震などの自然災害でのり面が崩壊しないよう高速道路の安全性を確保する対策が求められます。対策工の一つとして、地山内部にストランドと呼ばれる高強度な鋼より線を定着させ補強する「グラウンドアンカー工法」が広く用いられています。しかしながら、経年劣化や自然災害などによる地山の変状がグラウンドアンカーの健全性を損ね、高速道路の維持管理を行う上での大きなリスクとして顕在化している区間もあります。
一方で、地中も含めたグラウンドアンカーの劣化状況を把握することは難しく、従来の健全性評価手法としては、主にグラウンドアンカー頭部への荷重計設置やグラウンドアンカー頭部をジャッキで引っ張るリフトオフ試験による張力計測が行われていました。しかし、これらの試験も切土のり面内部の変状まで推定することはできず、さらには荷重計の耐久性及びリフトオフ試験の作業性や安全性にも課題がありました。
高速道路切土のり面における本システムの適用
今回、高速道路の切土のり面で初めて、本システムをグラウンドアンカー更新工事に適用しました。本システムに用いる光ファイバは、通信分野でも用いられている汎用性の高い廉価なものを使います。
本工事では、計測管理対象となるグラウンドアンカー21本に本システムと荷重計が併用される計画です。計測管理対象となるグラウンドアンカーの全てに本システムを適用するため、荷重計が故障した場合のリフトオフ試験が不要になるとともに、張力の変動要因となる地山内部の変状を面的に精度よく把握することが期待されます。
今後の展開
本システムの核となる光ファイバ計測技術は、同じように汎用性の高い光ファイバで延長することで、遠く離れた地点の計測を行うこともできます。この特長を活かし、広範囲に存在するグラウンドアンカーで補強された切土のり面を、遠隔で一元的にモニタリング・管理することも可能となります。
また、将来的には、グラウンドアンカーだけでなく、橋梁やトンネル、舗装などにも光ファイバを設置し同一の計測システムに統合することで、道路構造物を構成するインフラの状況を光ファイバで網羅的に把握することも目指していきます。
今後、本工事で得られた成果と実績を切土のり面補強工事に広く展開していくとともに、インフラ維持管理の高度化に活かすため、光ファイバ計測技術のさらなる開発を進めていきます。
工事概要
工事名 | : 東名高速道路 上石山地区切土のり面補強工事 |
場所 | : 神奈川県足柄上郡山北町山北 |
発注者 | : 中日本高速道路株式会社 |
施工者 | : 鹿島建設株式会社 |
規模 | : グラウンドアンカー工385本(うち光ファイバ張力計測システム採用21本)、 |
セメントモルタル吹付工1,192m2 他 | |
工期 | : 2020年8月~2022年11月 |
(参考)
グラウンドアンカーに光ファイバを用いたPC張力計測システムを活用
(2017年11月16日プレスリリース)
複数のグラウンドアンカーの張力をリアルタイムに連続計測できる光ファイバを用いた張力管理システムを
開発 (2020年8月20日プレスリリース)
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