[2025/06/02]
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斜杭式桟橋・ドルフィン上部工のフルプレキャスト化の実現により、
海上作業を大幅に省力化
「クロスパイルピア工法®」を開発し、沿岸技術研究センターの評価証を取得
鹿島(社長:天野裕正)は、海上における斜杭式の桟橋およびドルフィン※1の構築方法として、上部工のフルプレキャスト化により海上作業を大幅に省力化する「クロスパイルピア工法」(以下、本工法)を開発しました。本工法は、あらかじめ陸上で製作した上部工コンクリート(以下、プレキャスト上部工)と斜杭頭部の接合構造を新たに開発することで、桟橋・ドルフィン上部工をフルプレキャスト化し、気象・海象条件の影響を受けやすい海上作業を大幅に省力化するものです。これにより、海上工事の期間短縮、生産性および安全性の向上や環境負荷の低減など多くのメリットが期待されます。
なお、本工法は、このたび一般財団法人沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」の評価証(第24005 号)を取得しました。
※1 沖合に設置される複数の独立した構造物からなる係留施設。主にタンカーなどが利用する
開発の背景
桟橋およびドルフィン上部工の構築は、一般的に、足場・型枠・支保工設置、鉄筋組立、コンクリート打設の一連作業を全て海上で行います。そのため、風や波浪、潮位などの気象・海象条件の影響が大きく、工程遅延や施工効率低下のリスクがありました。その解決策の一つとして、プレキャスト上部工を陸上ヤードで製作し、海上に打設した杭の上に起重機船(クレーン船)で一括架設するフルプレキャスト工法があります。一般的には、プレキャスト上部工に杭を挿入する孔を設けておきますが、斜杭では、斜角を考慮する必要があるため、直杭に比べて接合部の孔が大きくなります。そのため、接合部の品質や強度を確保する補強等の海上作業が必要となり、施工に時間を要していました。このように、斜杭式では、品質と合理的な施工性確保の両立が困難であり、プレキャストのメリットを十分に活かすことができないため、フルプレキャスト化が進んでいませんでした。
そこで鹿島は、斜杭式の桟橋・ドルフィン上部工のフルプレキャスト化を実現すべく、プレキャスト上部工と斜杭頭部の接合構造を新たに開発しました。
本工法の概要と特長
本工法は、プレキャスト上部工と斜杭頭部の接合構造を新たに開発し適用することで、上部工をフルプレキャスト化し、海上作業を大幅に省力化する斜杭式桟橋・ドルフィンの構築方法です。本接合構造は、プレキャスト上部工に杭を挿入する一般的な接合構造とは異なり、仮受管を鋼管杭に被せ、その上面に鋼管杭と同じ斜角の鞘管※2 を埋め込んだプレキャスト上部工を架設し、鞘管と鋼管杭の中に小径の接合管を挿入するものです。
※2 プレキャスト上部工に接合管を通すための鋼管
フルプレキャスト化した杭頭接合構造の概要
※3 無収縮モルタルとの付着強度を高めるために、鋼管杭の内周および接合管の外周にあらかじめ取り付けた鋼材
本工法による接合手順は、次のとおりです。まず、海上に斜めに打設した鋼管杭の上部に仮受管を設置し、その上に、プレキャスト上部工を起重機船で一括架設します。その後、鞘管と鋼管杭の中に接合管を挿入し、シムプレート(鋼板)を接合管上部と鞘管に溶接します。最後に、無収縮モルタルやコンクリートで斜杭頭部を充填することで、プレキャスト上部工と斜杭頭部を一体化します。
本工法によるプレキャスト上部工と斜杭頭部の接合手順
- 海上工事の期間短縮、品質の安定、安全性の向上を実現
- 潮待ち作業※4 が減り、工程遅延リスクが低減
- 波浪による足場・型枠等の損傷リスクを最小化し、施工効率低下のリスクが低減
- 海上でのコンクリート打設量が減り、水質汚濁リスクが低減
- 工事中の海域占有期間を短縮できるため、周辺の船舶航行や漁業操業への影響が低減
一般的な桟橋を想定したモデルケース※5 における試算では、本工法と従来工法と比較した場合、海上工事期間を50%、全体工事期間を15%短縮できるとともに、現場作業に要する人員を20%、工事に伴うCO2 排出量も10%削減できることを確認しました。また、建設コストは従来工法と同程度であることを確認しました。
※5 幅15.8m×延長150m の横桟橋を想定
今後の展開
鹿島は今後、斜杭式の桟橋・ドルフィン工事において、本工法を積極的に提案していくとともに、港湾工事の更なる安全性および生産性向上に貢献してまいります。(参考)
一般財団法人沿岸技術研究センター 民間技術の評価
https://www.cdit.or.jp/minkan/#gsc.tab=0

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