スマート床版更新(SDR)システム®
高速施工を可能に、ソーシャルロスを大幅に低減
道路橋の床版取替は供用中に工事を行うため、交通規制等によるソーシャルロスを最小限にすることが重要です。具体的には、規制期間を最小限とする「工程短縮」技術や、規制範囲を最小限とする「安全施工」技術が求められています。
そこで鹿島は、専用の施工機械を用いて、連続作業による「工程短縮」や旋回を伴う揚重作業を無くすことで「安全施工」を実現し、ソーシャルロスの大幅な低減を可能とする「スマート床版更新(SDR※)システム」を開発しました。
本システムは、移動式の施工機械を用いて、床版取替に係る一連の工程を連続して行う「移動式工場」を具現化した施工システムです。具体的には、➊既設床版の縁切り・撤去、➋主桁ケレン、➌高さ調整、➍新設床版の搬入・架設の一連の工程を連続して行うことにより、床版取替期間の大幅な短縮を実現します。
本システムには、主に施工延長が長い工事に適する「フルSDR」と、主に施工延長が短い工事に適する「シングルSDR」のラインナップがあります。
※Smart Deck Renewal
2023年度エンジニアリング奨励特別賞
令和6年度土木学会 技術開発賞
特許登録済

フルSDRによる幅員方向分割床版取替の施工状況

フルSDRによる幅員方向分割床版取替の概要図
4つの工程
➊既設床版の縁切り・撤去

施工機械から吊り下げた剥離装置をセットし、既設床版を引きはがして場外に搬出
➋主桁ケレン

銅桁上フランジのケレン作業を行い、防錆材を塗布
➌高さ調整

床版の高さを調整するための硬質ゴムとモルタルを充填するためのソールスポンジを設置
➍新設床版の搬入・架設

施工機械で新設床版を架設位置まで移動、90度回転して床版を降下・設置
関連情報
- キーワード
- 床版取替、ソーシャルロス低減、高速施工、安全性向上
「フルSDR」と「シングルSDR」
「フルSDR」は、床版撤去機と床版架設機の2台を用いて施工を行うもので、➊~➍の4工程を、それぞれの専門班が各作業エリアにおいて同時並行で行います。一方、「シングルSDR」は、1台の施工機械で床版の撤去と架設の2役を担い、➊~➍の4工程を順番に同一作業エリアで行い、床版を1枚ずつ取り替えたあとに次の施工エリアに移動し、この工程を順次繰り返します。
「フルSDR」は床版取替期間の最小化を、「シングルSDR」は施工機械を1台とすることで経済性に配慮しつつ床版取替期間の短縮も志向したものです。幅員方向分割床版取替工事において、標準的な施工方法が1日(7時間)当たりの床版取替枚数が3枚であるのに対し、「フルSDR」は実物大施工実験の施工実績で30枚の取替が可能なこと、また、「シングルSDR」は施工シミュレーションにより9枚の取替が可能なことを確認しています。これにより、床版取替の期間をそれぞれ1/10、1/3に大幅に短縮が可能となります。
フルSDR
- 対象 主に施工延長が長い工事向け
- 施工システムの概要

床版撤去機と床版架設機の2台の施工機械を用いて、➊~➍の工程をそれぞれの専門班が各作業エリアにおいて移動しながら同時並行で施工を行う - ねらい 床版取替期間の最小化
- 1日当たりの床版取替枚数と期間短縮効果
標準的な施工方法3枚 → 本システム30枚
床版取替期間(1/10)
シングルSDR
- 対象 主に施工延長が短い工事向け
- 施工システムの概要

1台の施工機械が床版の撤去と架設の2役を担い、➊~➍の4工程を順番に同一作業エリアで施工、完了後に次の施工エリアに移動して同じ作業を繰り返す - ねらい 床版取替期間の短縮と施工費のバランスを考慮
- 1日当たりの床版取替枚数と期間短縮効果
標準的な施工方法3枚 → 本システム9枚
床版取替期間(1/3)
幅員方向分割床版取替の実施例
幅員方向床版取替で工事を行った広島自動車道伴高架橋(上り線)において、1期施工で「フルSDR」を、2期施工で「シングルSDR」を導入しました。
1期施工の追越車線において、標準的な施工方法(1日あたり3枚)では21日間かかるところを、フルSDRを用いたことにより6日間(1日あたり平均10枚、最大では20枚)で完了し、床版取替に要する期間を約70%短縮しました。
2期施工の走行車線において、同じく標準的な施工方法(1日あたり3枚)では21日間かかるところを、シングルSDRを用いたことにより11日間(1日あたり平均6枚、最大では7枚)で完了し、床版取替に要する期間を約48%短縮しました。さらに、フルタイプと比べ、施工機械を1 台減らせるため、施工費のメリットがあることも確認しました。
フルSDR(1期施工)
- 施工状況

- 期間短縮効果と1日当たりの床版取替枚数
21日間(標準)→ 6日間(▲70%)
1日あたり3枚 → 平均10枚、最大20枚
シングルSDR(2期施工)
- 施工状況

- 期間短縮効果と1日当たりの床版取替枚数
21日間(標準)→ 11日間(▲48%)
1日あたり3枚 → 平均6枚、最大7枚
全断面床版取替の実施例
関越自動車道阿能川橋(上り線)と広島自動車道奥畑川橋(上り線)において、全断面床版取替工事を行いました。
阿能川橋の3期工事において、標準的な工法(1日あたり3枚)では39日間かかるところを、フルSDRを用いたことにより13日間(1日あたり平均9枚、最大では18枚)で完了し、床版取替に要する期間を約67%短縮しました。

全断面床版取替工事の状況
適用実績

広島自動車道 伴高架橋(上り線)
場所:広島県広島市
床版取替期間:2024年4月~2024年12月
発注者:西日本高速道路
規模:橋長122.1m 幅員10.19~10.339m
幅員方向分割床版取替
新設床版の架設枚数:走行車線61枚+追越車線61枚

広島自動車道 奥畑川橋(上り線)
場所:広島県広島市
床版取替期間:2023年7月~2023年12月
発注者:西日本高速道路
規模:橋長214.8m 全幅員10.19m
全断面床版取替 新設床版の架設枚数109枚

関越自動車道 阿能川橋(上り線)
場所:群馬県利根郡みなかみ町
床版取替期間:2023年7月~2024年11月
発注者:東日本高速道路
規模:橋長628m 全幅員10.65m
全断面床版取替 新設床版の架設枚数279枚
学会論文発表実績
- 「スマート床版更新(SDR)システム® 全断面施工で床版架設の工期を最大85%短縮できることを実証」,土木施工,Vol.65,No.8,2024年8月
- 「スマート床版更新(SDR)システム® 幅員方向分割取替工事における床版取替工程を1/10に短縮」,土木施工,Vol.63,No.7,2022年7月
- 「スマート床版更新(SDR)システム 安価で高速施工を可能に、ソーシャルロスを大幅に低減」,土木施工,Vol.61,2020年7月
- 「安価にして高速施工を可能にする床版更新工法」,建設機械施工,Vol.72,No.6,2020年6月