スラブと柱によるフレームで構成されたファサード
(photo: エスエス東京 島尾 望)
京王線飛田給駅前の再開発を視野に,施設の再編・統合が進められてきた当社技術研究所のコアとなる施設である。最先端の技術開発の成果を社会や顧客に還元する拠点として,様々な分野の研究者が研究開発に専念でき,相互のコミュニケーションが活性化するようなワークプレイスを,施工性にも配慮しつつローコスト・ハイパフォーマンスの建築としてつくりあげることを目標とした。また,ZEBの実現に向けたリーディングプロジェクトに位置づけられ,環境負荷の徹底した低減により,結果としてCASBEEのBEE値8.3と竣工時点で国内最高値となった。竣工後1年間の実測データでは,CO2削減62%の達成が確認されている。
東西面のRC耐震壁と5層のスラブからなる立体の上に鉄骨フレームのペントハウスが載る極めてシンプルな構成で,梁のまったくないフルフラットスラブ構法を採用し,空調ダクトもOAフロアも設けないことで階高3.5mながら天井高3mの空間を実現した。それ自体が天井となっている床スラブはそのまま外に張り出し,庇として日射制御機能などを担っている。オフィスはワークスタイルの分析を基に,居住性能を確保しながら徹底的に贅肉をそぎ落とし,開放的な空間と省エネの両立を試みている。
鹿島の建築デザインの水脈を遡ると,合理性・機能性を芯とするモダニズムに行き着くのではないか。アント二ン・レーモンドは1919年に来日して多くの作品を残した建築家だが,彼は古来の日本建築の中にその精神が守られ,具体化されてきたとし,近代建築の五原則を唱えている。削除する余地も付加する必要もない「単純さ/simple」,直截でこじつけのない「率直さ/direct」,内部の仕組み・構造をそのまま外に表現する「正直さ/honest」,無駄を省きかつ長持ちさせる「経済性/economical」,気候・風土に沿う「自然さ/nature」。この五原則を私なりに咀嚼しつつ,鹿島ブランドを継承する建築の姿を追い求めた。
(米田浩二)
居住性能を確保しながら,徹底的に贅肉をそぎ落としたオフィス空間
(photo: 新建築社)
鹿島技術研究所 本館 研究棟(東京都調布市)
オフィス断面パース
フルフラットスラブ構法の採用,ダクトレス空調,多機能本棚を利用したOAフロアレスの配線システムにより階高3.5mながら天井高3mの空間を実現している。
設計:当社建築設計本部
規模:RC造 B1,5F 延べ8,914m2
2011年10月竣工(東京建築支店施工)
米田浩二(よねだ・こうじ)
建築設計本部
プリンシパル・アーキテクト
主な作品:
- オムロンヘルスケア新本社
- GC Corporate Center
- 北日本新聞創造の森越中座
- 新藤両国本社ビル
杉岡正敏(すぎおか・まさとし)
建築設計本部
チーフ
主な作品:
- GC Corporate Center
- パイオニア川崎事業所
- イッセイミヤケ本社ビル
- グリーンワイズ・センタービル
東郷裕幸(とうごう・ひろゆき)
KAJIMA DESIGN ASIA BANGKOK
チーフ
主な作品:
- 新藤両国本社ビル
- 住友大阪セメント
ナノ・テラ研究センター - 読売新聞大曲工場