マツダにとって,タイ国初の単独出資プロジェクトとなった自動車変速機工場である。施主からの要望は「従業員が誇りをもって働ける場の創出」「マツダブランドの発信」のふたつ。南国の熱帯性の気候風土に配慮しながら,生産・居住環境の向上と,同社の本拠地・広島とタイを繋ぐブランドイメージの形象化を図った。
全体は,前面道路に開かれたフェンスの無い芝生広場とオフィス棟,その背後に工場棟および将来エリアが配置されている。約200m四方の生産エリアでは,設備機械室を中2階のメカニカルチューブに浮遊させ,生産フロアのフレキシビリティを確保した。また,生産過程で発するオイルミストを効果的に排出する換気システムや自然採光,自然換気など,環境に配慮した多くの取組みにより,省エネと居住性向上を両立させている。
オフィス棟は広島の厳島神社の構えを参照し,前面道路より100mセットバックして配置された。外周部は250mm× 1,000mmのPC扁平柱が2.4mピッチで鳥籠状に配置され,タイの寺院や伝統建築にみられる“深い庇”と“列柱”に包まれた半外部の回廊空間により,多様な機能が統合されている。同時にそれは,南国の強烈な陽射とスコールを遮り,視線をコントロールしながら室内外に風をよびこみ,心地よい場を提供している。静的でありながらスピード感のある,その端正な表情は,働く人々から親しまれ,工業団地のなかで一際存在感を放っている。(東郷裕幸)
場所:タイ チョンブリ県イースタンシーボード工業団地
発注者:マツダ パワートレイン マニュファクチャリング(タイランド)
設計:カジマ・デザイン・アジア
規模:RC(柱)・S(梁)造 2F 延べ59,747 m2
(タイ・カジマ施工)
東郷 裕幸
(とうごう・ひろゆき)
KDA 建築設計部
チーフコーディネーター
主な作品:
- 三井ハウスバンコク
- フォード インド 第2工場
- 鹿島技術研究所 研究本館
Peerapon Jamsirirojrat
(ピーラポン・
ジャムシリローラット)
KDA 建築設計部
アーキテクト
主な作品:
- 三井ハウスバンコク
- ミルボンタイランド本社工場
- フォード インド 第2工場
Chattapat Tiprucha
(チャッタパット・
ティップルチャー)
KDA 建築設計部
アーキテクト
主な作品:
- クボタ R&D アジア
- セイコー インスツルメント タイ
- フォード インド 第2工場