[2019/03/25]
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自動ラック倉庫の制震構法「Container Damper System (CDS)」を開発
~積荷自体をTMDの錘として利用する新発想の制震構法~
鹿島(社長:押味至一)は、東日本大震災以降に急増した自動ラック倉庫の事業継続(BCP)ニーズに応えるため、積荷自体をTMD※の錘として利用する新発想の制震構法「Container Damper System (CDS)」を開発しました。2013年5月に開発した、屋根裏空間を利用した制震構法「Attic Damper System (ADS)」と併せ、自動ラック倉庫のBCPニーズに幅広くお応えします。
※ TMD:Tuned Mass Damper 構築物に設置した錘が揺れることによって、建物の振動を抑制する制震装置
開発の背景
東日本大震災では自動ラック倉庫の積荷が落下してスタッカークレーン(自動搬送機)が運行できなくなり、倉庫機能が長期間停止する事態が多発しました。これに対し、積荷を脱落防止金具などで固定してしまうと、地震時にラック架構本体に設計荷重を上回る過大な力が加わり、ラックの基礎や柱などが損傷して、却って復旧に多大な時間とコストを要することが懸念されます。
2013年に開発したADSは、倉庫機能に影響を与えずに、屋根裏空間に設置したオイルダンパで地震エネルギーを効率的に吸収し、震度6クラスの大地震まで対応可能な制震構法であり、特に新築物件に対しては大きなメリットがありました。一方で、屋根裏空間の余裕が十分でない既存改修への適用は制限されるという課題がありました。
構造の概要
今回開発したCDSは、積荷自体の重さに着目した新発想の制震構法です。腕木と呼ばれる積荷を支持する部材に、新たに開発した「制震スライダー」を設置することで、積荷自体をTMDの錘として機能させ、効率的に地震エネルギーを吸収します。積荷自体を制震装置の一部として利用するため錘やオイルダンパなどを別途設置するスペースも不要です。制震スライダーは全部の荷室に設置する必要はなく、上部の1/3~1/2に設置すれば十分な機能を発揮します。
制震スライダーは、2枚の鋼板を、滑り材、コイルばね、オイルダンパで連結したシンプルな構造で、2本で一対となり積荷を支えます。下部の鋼板を腕木にねじで簡単に固定すれば、上部の鋼板が積荷と一体となってスライドしTMDの効果を発揮します。万一の事態のフェイルセーフ機能として、オイルダンパの油漏れ対策や積荷の過大な変形を防止するストッパーも備えています。なお、制震スライダーの製作にあたっては、センクシア株式会社(東京都江東区、社長:笠原伸泰)の協力を得ました。
効果と特長
- 積荷自体をTMDの錘として利用するため、荷の収容率に一切影響を与えることなく、震度6クラスの大地震に対し、積荷の落下とラック架構の損傷の双方を抑制します。
- ラック架構本体に対して積荷(TMD)の重量比が格段に大きいため、スタッカークレーンの運行に影響の無いわずか数cmの積荷の動きで大きな制震効果を発揮します。
- 積荷の配置を制御する既存のプログラムと連動させ、錘として適切な位置に制御することで、積荷の多寡によらず安定した効果を実現します。
- ラックメーカーを問わず、新築物件・既存改修の双方に適用可能です。制震スライダーはスタッカークレーンで搬送でき、特別な工具等を必要とせず簡易に取付けられるため、特に既存改修に最適です。
- 倉庫全体のパレット数×3~6万円程度の費用、倉庫全体のパレット数×0.01~0.02日程度の期間で制震化が可能です。また、メンテナンスは目視点検程度と非常に容易です。
今後の展開
自動ラック倉庫は、eコマースの拡大および倉庫従事者の省人化対策などにより、今後も需要の増加が見込まれます。鹿島は、新築物件・既存改修を問わず、自動ラック倉庫のBCP対策ニーズに応えるため、CDSの積極的な展開を図って参ります。
立体自動倉庫の制震構法「Attic Damper System (ADS)」を開発
(2013年5月16日プレスリリース)
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。