[2020/12/10]
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躯体のわずかなひずみも見逃さない
光ファイバによる高精度なリアルタイム管理システムを開発
沈設中のケーソンの挙動を見える化し、高品質で周辺環境に優しい施工を実現
鹿島(社長:押味至一)は、ニューブレクス株式会社(本社:神戸市中央区、社長:岸田欣増)と共同で、
ケーソン構築工事において沈設時に起きるケーソンのひずみを、光ファイバで高精度かつリアルタイムにモニタリングする管理システムを開発しました。本システムの適用により、沈設中に生じるケーソン全体の微小なひずみ分布をリアルタイムでモニタリングできるため、地盤との摩擦などで生じるわずかなひずみもピンポイントかつ瞬時に捉えられるようになります。これによって沈設時のトラブルの予兆を事前に検知できるようになり、ケーソンの沈設施工において、高品質で周辺環境に優しい施工を実現します。
今般、本システムを施工中の立坑工事に適用し、その有効性を確認しました。
開発の背景
ケーソン工法は、躯体底盤の下部を掘削することで、自重や圧入力によりケーソンを沈設させて地中構造物を構築する工法です。沈設の際、周辺地盤からの圧力による締付けや、偏心による過大な摩擦が生じると、沈設できず宙吊り状態になり、ケーソンにひび割れができてしまうおそれがあります。このような場合、ケーソンの沈設を促進するため滑剤を注入しますが、注入する位置やタイミングは、熟練作業員の経験に頼らざるを得ないのが現状です。また、注入時にケーソンが急激に沈下し、ケーソン自体が破損したり、振動によって周辺環境への悪影響が発生するリスクもあります。
本システムの概要と特長
本システムは、ケーソンの側壁に、通信等で用いられている汎用性の高い、廉価な光ファイバケーブルをケーソン全体に張り巡らすように敷設し、これを新たに開発した最新式のレイリー計測式光アナライザ(測定器)で計測することにより、ケーソンの挙動をモニタリングします。このアナライザを用いることで、光ファイバケーブル全長に生じるわずかなひずみを、数cm ピッチで高精度かつリアルタイムに検知できるため、ケーソン全体のひずみの分布状況を常に見える化することができます。
本システムの特長は以下のとおりです。
- 従来は5分以上かかっていた光ファイバ1本あたりの計測時間が、約5秒へ大幅に短縮できるため、リアルタイムなモニタリングが可能です。
- ブリルアン散乱を計測する従来の光ファイバ計測では、ひずみの計測精度は100μ(マイクロ) 程度でしたが、今回、レイリー散乱を計測することで、1μ以下の微小なひずみも検知できるようになり、コンクリート構造物から岩盤・地盤まで適用先が圧倒的に拡がります。
- 数cmピッチでひずみを計測できるため、異常なひずみが生じている箇所をピンポイントに特定できます。
- アナライザ1台で複数の光ファイバケーブルの計測が可能です。
- 設定した閾値を超えるひずみを検出した際は警報を表示します。
- 計測結果は即時にグラフ化されクラウド上に送られることで、ケーソン操作室、遠隔地にある本支店の管理部門からも常に最新のデータを共有・確認できます。
適用事例および効果
本システムを適用した工事では、ケーソン(内径約17.8m)内側の鉛直方向に光ファイバを8測線敷設し、2020年2~5月の約4ヵ月間、ケーソンの挙動を常時計測しました。その結果、躯体構築に伴うケーソンの自重増加による圧縮ひずみをとらえるなど、表面のひずみの様子を高精度かつリアルタイムにモニタリングできることが確認できました。また、摩擦の発生を示唆するような引張傾向のひずみを検出した際には、滑剤を注入することで、引張ひずみの急速な低減が認められるなど、トラブルの予兆を事前に検知する本システムの有効性が確認できました。
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今後の展開
既開発の「硬質地盤の沈下掘削を可能とする水中掘削機」や「掘残し幅計測システム」との組合せにより、オープンケーソン工法およびニューマチックケーソン工法における安定したケーソン沈設の実現ならびに周辺環境に対する影響の抑制効果が期待されることから、今後、本システムの積極的な活用を図っていきます。
また、光ファイバ計測を活用した本システムは、従来方法に比べて格段に計測速度、精度が優れていることから、汎用性が極めて高く、様々な工種への展開が可能です。さらに、光ファイバは施工管理への利用だけでなく、構造物内にそのまま残置すれば維持管理のモニタリングにも利用できます。引き続き、インフラ管理の多様なフェーズでの光ファイバセンシングの活用を目指します。
鹿島は今後も、安全・安心なインフラの実現に向け、技術開発を進めていきます。
(参考)
AI技術を活用したニューマチックケーソン工法における掘残し幅計測システムを開発
(2019年7月18日プレスリリース)
硬質地盤の沈下掘削を可能とする水中掘削機を開発
(2020年6月24日プレスリリース)
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その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。