[2025/10/07]
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施工延長が短い床版取替工事に適した「シングルSDR」を実工事に初導入
~施工機械1台で行うSDRシステムにより床版取替期間を半減~
鹿島(社長:天野裕正)は、道路橋の床版取替工事において、専用の施工機械を用いて、工事に伴う交通規制を大幅に短縮できる「スマート床版更新(SDR※1)システム®」(以下、SDRシステム)を2019年に開発しました。これまで、施工延長が比較的長い工事において、2台の施工機械を用いるSDRシステム「フルSDR」で実績を重ね、その効果を実証してきました。
このたび、主に施工延長が短い工事における交通規制の期間短縮と経済性のバランスを考慮した、1台の施工機械で行う「シングルSDR」を、広島自動車道(特定更新等)伴高架橋(上り線)他1橋床版取替工事の2期工事に初導入しました。
鹿島は今後も、工事期間や規模に応じて、発注者のニーズに合わせた床版取替工事を行い、ソーシャルロスの最小化を目指してまいります。
※1 Smart Deck Renewal
開発の背景・経緯
高度経済成長期に整備された道路橋の多くは、車両の大型化や通行量の増加、路面凍結防止剤の散布などにより急速に劣化が進んでいます。そうした中、2015年には、高速道路の大規模更新・修繕事業の実施について、国土交通大臣から道路整備特別措置法に基づく許可がなされ、「高速道路リニューアルプロジェクト」として床版取替工事他の更新事業が開始されました。道路橋の床版取替工事にあたっては、工事に伴うソーシャルロスを低減するため、交通規制の期間や範囲を最小限にする技術に加え、近接する交通や周辺施設への安全確保、さらに経済性に配慮した施工が求められます。そこで当社は、床版取替期間を大幅に短縮できるSDRシステムを2019年に開発しました。本システムには、工事案件毎の発注者のニーズに応じた最適な施工を行えるように2種類のラインナップがあります。施工延長が長い工事には、床版撤去機と床版架設機の2台を使用して、規制期間短縮の効果を最大化する「フルSDR」を、施工延長が短い工事には、施工機械1台が床版の撤去と架設の2役をこなし、規制期間短縮と経済性のバランスを考慮した「シングルSDR」を用意しています。これまで実工事で「フルSDR」の実績を重ねてきましたが、「シングルSDR」の実工事での導入は初めてです。
「フルSDR」と「シングルSDR」の概要
SDRシステムは、施工機械を移動させながら床版取替に係る一連の工程(①既存床版の撤去、②主桁ケレン※2、③高さ調整※3、④新設床版の架設)を連続して行う「移動式工場」を実現した施工システムです。このうち、「フルSDR」は、床版撤去機と床版架設機の2台を用いて施工を行うもので、①~④の4工程を、それぞれの専門班が各作業エリアにおいて同時並行で行う施工システムです。
一方、「シングルSDR」は、1台の施工機械が床版の撤去と架設の2役を担うため、①~④の4工程を順番に同一作業エリアで行う施工システムで、床版を1枚ずつ取り替えていきます。
フルSDR(①~④を同時並行で行う)
シングルSDR(①~④を同一作業エリアで行う)
※3 新設床版の高さを調整するための硬質ゴムと、床版下の無収縮モルタルの漏れ止めとなるソールスポンジの設置作業
「シングルSDR」 の実工事での実証
広島自動車道(特定更新等)伴高架橋(上り線)他1橋床版取替工事の2期工事において、走行車線側122.1mの床版取替工事に「シングルSDR」を導入しました。その結果、既設床版の撤去から新設床版の架設までの一連作業(①~④)に要する期間は、標準的な工法では21日間(1日あたり3枚)を要するところ、11日間(1日あたり平均6枚、最大では7枚)となり、約48%短縮しました。さらに、フルSDRと比べ、施工機械を1台減らせるため、経済的なメリットもあります。
広島自動車道(特定更新等)伴高架橋(上り線)他1橋床版取替工事(2期工事)の施工状況
工事名 | 広島自動車道(特定更新等)伴高架橋(上り線)他1橋床版取替工事 |
発注者 | 西日本高速道路株式会社 中国支社 |
床版取替範囲 | 122.1m |
橋梁形式 | 鋼3径間連続非合成鈑桁橋 |
工事タイプ | 幅員方向分割施工 1期工事:追越車線 2024年5~6月 2期工事:走行車線 2024年9~10月 |
床版取替に要する 期間の短縮効果 | 21日間(標準)→11日間(▲48%) (1日あたり3枚→平均6枚) |
今後の展開
鹿島は、SDRシステムのさらなる改良を進めるとともに、発注者のニーズに応じたメニューを提案し、より効果的かつ経済的な道路橋床版更新工事を行うことでソーシャルロスの最小化を目指してまいります。(参考)
動画でみる鹿島の土木技術「リニューアル」
安価で、高速施工を可能にする「スマート床版更新(SDR)システム」を開発
(2019年12月17日プレスリリース)
1車線規制で床版取替が可能な「スマート床版更新(SDR)システム」を開発
(2022年6月7日プレスリリース)
超高速施工が可能な「スマート床版更新(SDR)システム」を他社に広く展開
(2022年12月12日プレスリリース)
床版架設の工期を85%短縮!超高速施工が可能な「スマート床版更新(SDR)システム®」を実証
(2024年1月10日プレスリリース)
床版取替の期間を70%短縮!「スマート床版更新(SDR)システム®」を1車線規制での実工事に初導入
(2024年9月26日プレスリリース)
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