[2026/01/30]
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既存建物の機能と耐震性を同時に向上させる増築制震技術「E3SKY」を初適用
鹿島技術研究所本館の増築制震リニューアル工事を開始
鹿島(会長兼社長:押味至一)は、既存建物の機能と耐震性を同時に向上させる増築制震技術「E3SKY®」(イースカイ)※1を開発し、2026年2月から開始する鹿島技術研究所本館(東京都調布市)の増築制震リニューアル工事に初適用します。
本技術は、2022年度の日本建築学会技術部門設計競技において、既存の鉄筋コンクリート造(RC造)の校舎の再生技術として最優秀賞を受賞した、増築部をTMD※2として利用するアイデアを発展させ実用化したものです。地震という非常時に必要な耐震性と、常時における建物機能を同時に向上させることが可能であり、時代背景や社会環境などに応じた建物への要求機能の変化に対応しつつ、耐震性を大きく高めて建物を永く使い続けることができる、サーキュラーエコノミーにも資する画期的な技術です。
鹿島は今後、既存中低層建物のリニューアルに本技術の積極的な展開を図り、より快適でより安全・安心な建物を提供してまいります。
※1 Energy dissipation×Expansion×Environment of Simple Kajima stYle: 鹿島式増築制震技術
※2 Tuned Mass Damper: 同調質量型制震装置
増築前(5階建て)
増築後(6階部分を増築)
開発の背景
近年、環境負荷低減やサーキュラーエコノミーの観点からも、既存建物を永く使い続けることの重要性、必要性が高まっており、用途変更や拡張、耐震補強といった既存建物のリニューアルは建設業界にとっても重要分野となっています。しかし、既存建物の多数を占める中低層RC造建物に対する魅力的な補強法が少ないため、耐震補強工事はあまり進んでいない状況です。鹿島は業界に先駆けて1985年から制震構造の研究を開始し、既存建物の制震改修に適した独自技術として、既存超高層建物用の大型TMD「D3SKY®」、中低層建物用のコンパクト型TMD「D3SKY-c」などを開発し、適用を進めてきました。これら非常時に対する耐震性向上のための技術が、同時に延床面積の拡大や用途変更(コンバージョン)といった常時における建物機能を高めることになれば、リニューアル技術としての魅力・価値の向上に繋がると考え、中低層RC造建物に適した増築制震リニューアル技術E3SKYを開発しました。
E3SKYの概要と特長
E3SKYは、増築部を既存建物に対する大重量TMDとして利用するものです。従来のTMD制震装置と比較すると、制震効果を決定付ける錘重量を格段に大きくとれることから、以下のメリットがあります。- 既存建物に加わる地震力を大きく低減
既存部の補強が大幅に低減もしくは不要となる。変形能力に乏しい壁式のRC造にも適用可能 - 既存建物の構造特性の変化に対して制震効果の変動が少ない
経年や地震の経験などにより構造特性が変化しやすいRC造建物に好適 - TMDとして機能する増築部の変形が小さい
増築部の変形は一般建物と同程度であるため、増築部を一般的・低コストな材料で構成可能
- 増築部は、専用開発した低コストでコンパクトなピン支承とオイルダンパを備えた鉄骨架構+RC屋根というシンプルな構成
- 増築部の鉄骨架構と既存部との接続部には、簡易なあと施工アンカーを採用
- 既存部や基礎の補強は不要(既存部の許容耐力以内の増築計画)
- 増築制震の効果により、レベル2(極めて稀に発生する)地震動に対する建物応答を半減
- 増築部の地震時層間変形角は1/100以下と通常レベルのため、二次部材等に特別な配慮不要
- 増築部の屋根には環境配慮型コンクリートを採用
E3SKYの構造概念図
増築による制震効果
(レベル2地震動に対する層間変形角)
増築部の用途
増築部は、現状で不足している来訪者に対するレセプションや打合わせスペース、開発技術の広報展示スペースとして利用する予定です。さらに、技術研究所の所員が自席を離れ、リラックスしながら様々な作業や交流ができるフレキシブルワークスペースとしても利用します。増築部室内の床や室内と連続して広がる屋外ウッドデッキには、鹿島独自開発の杉無垢材KaSOLID®を採用する予定です。また本増築部は、ウェルネスや省エネルギー、最新のモニタリング技術の検証など、ウェルビーイングな建築空間の研究に資する様々なR&Dのためのリビングラボとしても活用していく予定です。
増築部の室内
屋外ウッドデッキ
今後の展開
鹿島の制震技術のラインナップに、中低層RC造建物に好適な増築制震技術E3SKYが加わりました。本技術は、建物に要求される機能の変化に対応しつつ耐震性を大きく高め、永く使い続けることができる建物に再生させる、サーキュラーエコノミーにも資する技術であり、建物の個別条件に応じた様々な対応が可能なフレキシブルなシステムです。鹿島は今後、既存中低層RC造建物のリニューアルに本技術の積極的な展開を図り、より快適でより安全・安心な建物を提供してまいります。
工事概要
| 所在地 | : | 東京都調布市飛田給2-19-1 |
| 設計者 | : | 鹿島建設株式会社 |
| 施工者 | : | 鹿島建設株式会社 |
| 建物用途 | : | 事務所(研究所) |
| 構造 | : | 鉄筋コンクリート造(既存部)+鉄骨造(増築部) |
| 建物高さ | : | [新築時] 18.1m [リニューアル時] 24.5 m (増築部6.4m) |
| 延床面積 | : | [新築時] 8,914m2 [リニューアル時] 9,771m2 (増築部887m2) |
| 階数 | : | [新築時] 地上5階、地下1階、棟屋1階 [リニューアル時] 地上6階、地下1階 |
| 竣工 | : | [新築時] 2011年10月 [リニューアル時] 2027年10月末予定(工期20か月) |
(参考)
技術とサービス「制震技術」
「新宿三井ビルディング」で長周期地震動の揺れを半減
日本初 屋上に超大型制震装置(約1,800t) 工事完了
(2015年5月14日プレスリリース)
中低層建物用TMD「D3SKY®-c」を既存ビルの制震改修工事に初適用
(2019年4月23日プレスリリース)
恵比寿ガーデンプレイスタワーの制震工事が完了
(2022年9月26日プレスリリース)
無垢の杉材を用いた木質耐火被覆工法「Tie-KaSOLID®」を実適用
(2025年10月1日プレスリリース)
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