軟弱地盤の変形解析システム
軟弱地盤の沈下・変形挙動や安定性を精度よく予測し、
地盤改良工を合理的に設計
軟弱地盤での土木工事では、各種の地盤改良工がしばしば必要になります。地盤改良工を合理的に設計するためには、軟弱地盤の沈下・変形挙動や安定性を精度よく予測することが重要です。
本解析システムは羽田空港D滑走路工事で実績のある最新の地盤の構成モデルを導入した弾粘塑性変形・浸透流連成解析システムであり、地盤改良工の種類や改良範囲の違いによる地盤の変形や安定性を精度よく予測できるため、合理的な地盤改良工の設計が可能になります。また、地盤パラメータを観測データに基づいて逆解析する機能もあるので、軟弱地盤工事における観測施工(情報化施工)に活用でき、工事の安全性と合理性の向上に大きく貢献します。
- キーワード
- 軟弱地盤、地盤改良(工)、変形、沈下、変形・浸透流連成解析、弾粘塑性、関口・太田モデル、修正カムクレイモデル、逆解析
本解析システムに導入している最新・最先端の弾粘塑性構成モデル
本解析システムでは、従来から実績の多い「関口・太田モデル」や羽田D滑走路の設計で用いた「関口・太田モデル(修正カムクレイ型)」だけでなく、最新・最先端の弾粘塑性構成モデル(ECモデル等)も導入しています。本図は羽田D滑走路の桟橋-盛立接続部モデルを対象に本解析システムに導入している各種の弾粘塑性構成モデルによる地盤変形解析結果を比較した例です。特にECモデルを用いると同じ地盤沈下量に対して様々な水平変位状態を表現できるため、軟弱地盤工事における観測施工(情報化施工)による再現解析と予測解析の精度を飛躍的に高められます。
特長・メリットココがポイント
地盤改良工の合理化
本解析システムにより、地盤改良を考慮した上で軟弱地盤の変形・安定性が精度よく予測できるため、地盤改良工法の合理的な選定や設計に役立ちます。
軟弱地盤工事の安全性向上
本解析システムと施工中の観測データにより、現状と将来の地盤の変形・安定性挙動を精度よく予測評価できるため、軟弱地盤での観測施工(情報化施工)の重要なツールとなり、軟弱地盤工事の安全性向上に大いに役立ちます。
適用実績
羽田空港D滑走路
場所:東京都大田区
竣工年:2010年10月
発注者:国土交通省関東地方整備局
目的:接続部の設計解析、並びに施工時シミュレーション
北海道新幹線函館総合車両基地路盤
場所:北海道亀田郡
竣工年:2012年8月
発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構
目的:プレロード仕様決定のためのプレロード試験盛土シミュレーション
学会論文発表実績
- 「地盤変形の影響を考慮した鋼管矢板井筒護岸の設計(その3) ─弾・粘塑性解析による鋼管矢板井筒護岸の挙動─」,第42回地盤工学研究発表会,2007年7月
- 「羽田空港D滑走路埋立/桟橋接続部の鋼管矢板井筒護岸の挙動予測 ─その3 弾粘塑性FEM解析による護岸挙動の予測と施工への反映」,第45回地盤工学研究発表会,2010年8月
- 「弾粘塑性FEM解析による大規模護岸構造物の変形予測」,土木学会論文集C,2012年
凍結・凍上解析システム
凍結膨張圧・凍上・解凍沈下を三次元で高精度に予測し、
凍結工法の安全性向上や合理的な設計・施工に役立つ
立坑からのシールド機発進時やシールドトンネルの地中切拡げ時にしばしば採用される地盤凍結工法では、粘土層の凍結膨張圧や凍上現象・解凍沈下現象による周辺構造物への影響を避けるため、必要に応じて対策工を併用します。また、砂層では地下水流速が凍結時間や凍結範囲に影響するため、凍結工法の設計に際しては、地下水の考慮も必要になります。
本解析システムは、三次元熱・浸透流連成解析と三次元変形・浸透流連成解析を組み合わせるとともに、地盤の凍上解凍沈下が考慮できる最新の構成モデルを導入することによって凍結工法施工時の三次元地盤挙動が高精度に予測・評価できるため、凍結工法の安全かつ合理的な設計・施工に役立ちます。
- キーワード
- 凍結工法、凍結膨張、凍上、解凍沈下、三次元、FEM解析、地下水
本解析システムの検証
地盤の凍上・解凍沈下に関する室内実験結果と本システムによる解析結果の比較を行い、高い精度で地盤の凍上量・解凍沈下量を予測できることが確認できました。
特長・メリットココがポイント
凍結工法の施工計画策定
地下水流速を考慮した凍結領域の予測・評価が三次元的に行えるため、適切な凍結管の配置や凍結運転の計画策定が可能となり、凍結工法がより安全かつ合理的に施工できます。
凍結膨張・解凍沈下の対策工の設計、凍結工法の安全性向上
粘土地盤では凍結膨張圧や凍上、解凍沈下に伴い、周辺構造物や地表面に変状を与えないように、変位吸収孔等の対策工を施工することがありますが、本解析システムでの高精度な予測・評価により、これらの対策工がより安全かつ合理的に設計できます。
学会論文発表実績
- 「凍結工法に適用する凍上・解凍沈下予測手法の検討 ─熱・力学・浸透流連成FEM解析─」,土木学会,第66回年次学術講演会,2011年9月
- 「凍結工法に適用する凍上・解凍沈下予測手法の検討 ─遠心模型凍上試験─」,土木学会,第66回年次学術講演会,2011年9月
部分固化による液状化対策
3次元液状化解析で最適な対策形状を検討し対策コストを低減
従来、機械撹拌工法や高圧噴射撹拌工法による液状化対策は、対象地盤の全面的な改良を前提としていましたが、近年、既設構造物の対策をはじめ高度で多様な液状化対策が求められており、合理的かつ経済的な改良形式が重要となっています。
改良形式にはブロック状、壁状、格子状、杭状などがあり、水平固化盤と鉛直固化壁を組み合わせたJAMPS工法、アーチ状に改良するグラウナーチ工法など複雑な形式を開発・適用してきました。部分的な改良による液状化対策は、改良のレベル、規模、形状に応じて、各改良形式の有する安定性、施工性、経済性などを十分評価した上で、適切な形式を選定する必要があります。
特許出願中
- キーワード
- 液状化対策、機械撹拌工法、高圧噴射撹拌工法、全面改良、部分固化、接円、千鳥、格子状、沈下抑制、水圧抑制、コスト低減
3次元液状化解析システムによる部分固化地盤の液状化評価
部分固化改良工法による液状化対策の効果を評価するには、液状化地盤や液状化対策範囲をモデル化して地震時の動的挙動を確認する模型実験や数値解析が有効です。また設計では、模型実験で得られた地盤の挙動を再現できる解析手法・解析ノウハウをベースにした数値解析による評価が欠かせません。例えば、液状化対策として固化改良体を杭状で千鳥配置した場合、3次元または2次元で対象改良地盤をモデル化し、改良地盤全体の液状化抵抗性を定量的に評価することができます。
3次元液状化解析システムは、港湾空港技術研究所が開発した液状化解析プログラムFLIPの液状化構成モデルを3次元に拡張して、鹿島開発の汎用非線形動的解析プログラムに導入したものです。当社では、部分固化で改良した地盤の液状化実験を通じ、モデル化手法並びに数値解析手法の妥当性を確認しています。本解析システムにより、構造物・地盤・改良体の3次元形状を考慮した液状化解析による改良地盤の過剰間隙水圧、変形、応答加速度等の評価が可能となるため、より安全で合理的な液状化対策工の評価・提案が可能になります。
特長・メリットココがポイント
模型実験/数値解析による液状化対策効果の検証
部分固化改良形式の違い(杭状、格子状)による未改良地盤の沈下性状を、動的遠心模型実験で確認しました。杭状形式では、改良率の増加に伴い、改良体によるせん断変形の抑制や摩擦抵抗の増大に起因して沈下が抑制され、同じ改良率の格子状形式に比べても沈下の低下する傾向がみられました。この挙動は数値解析でも再現できることを確認しました。一方、杭状形式に比べ、未改良部を閉合されている格子状形式の方が、過剰間隙水圧の上昇はやや抑制され、消散速度も速い傾向がみられました。
対策工のコストダウン
2次元解析では効果を十分に評価できない液状化対策工も、3次元解析を行うことで、効果を適切に評価できます。3次元解析技術に基づく評価により、より合理的な液状化対策工を選定し、かつ設計できるようになります。その結果、液状化対策工のコストダウンを実現できます。
構造物の地震時安全性向上
3次元液状化解析システムは地盤だけでなく、それに支持される構造物の動的非線形特性も詳細にモデル化することができます。これにより液状化時における構造物の地震時安定性を高精度に解析・評価できるため、構造物の安全性向上にもつながります。
適用実績
震災液状化対策路盤改良(格子状配置)
(衣浦ヤード)
場所:愛知県碧南市
竣工年:2007年9月
発注者:トヨタ自動車
規模:地盤改良工
タイプⅠ Φ2.5m 1,055本 造成延長6,712m
タイプⅡ Φ3.5m 32本 造成延長271m
タイプⅢ Φ4.5m 46本 造成延長527m
名港LPG基地護岸流動化対策
(格子状配置)
場所:愛知県名古屋市
竣工年:2009年2月
発注者:東邦液化ガス
規模: 地盤改良工
Φ2.5m L=16.5m 135本
Φ2.5m L= 1.6m 2本
Φ3.0m L=16.5m 10本
Φ3.5m L=16.5m 7本
大阪港北港南地区岸壁改良(接円配置)
場所:大阪府大阪市
竣工年:2011年3月
発注者:国土交通省近畿地方整備局
規模:タイプⅡ,Ⅲ 34,700m3
地盤改良工
Φ3.2m 135本 造成延長2,397.9m
Φ4.5m 45本 造成延長686.4m
岸壁の液状化対策(接円配置)
場所:愛媛県
竣工年:2012年6月
規模:施工対象土量8,579m3
地盤改良工
Φ3.0m L=8.0m 17本
学会論文発表実績
- 「遠心力載荷試験装置による杭式改良地盤の液状化実験─その1 実験概要・水圧挙動─」,第46回地盤工学研究発表会,2011年
- 「遠心力載荷試験装置による杭状改良地盤の液状化実験─その2 地表面沈下─」,第46回地盤工学研究発表会,2011年