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建設の素朴な疑問 Part2:建設工事の式典には,どんな種類や意味があるのですか?

建物や構造物が完成するまでには,工事の節目で,
安全成就と永遠堅固,社運の隆盛発展などを,
神々に祈願し,感謝を捧げるために,様々な式典が行われています。
古くから伝承されてきた,建設にまつわる式典と儀式について解説します。

※式典には,神式,仏式,キリスト教方式など,様々な形式があるが,多く行われる神式について説明した。また,地域により習慣の違いや,宗教各派による相違もあるが,一般的な基準として記載している。

式典の種類

地鎮祭
工事着手前に行い,土地の神々の霊をしずめ,敷地を清め祓って,永遠の加護と工事の安全成就を祈願します。鍬入れの儀が行われます。

※起工式や安全祈願祭との違い,鍬入れの儀はミニ知識参照。

立柱式(建築のみ)
柱を建て始める式。一般には鉄骨を建て始める時に行います。参列者の各代表がスパナでボルトを締めたり,柱の周りに神酒をまきます。近年は大掛かりなものでなく,神職を呼ばず,現場の工事関係者のみで行うケースが多くなっています。
上棟式(建築のみ)
「むねあげまつり」ともいい,木造家屋では棟木・棟札を上げる際に行われます。鉄骨造の場合,建て方を終える際に,鉄骨をクレーンで吊り上げるセレモニーが行われます。鉄筋コンクリート造では,構造体の最後のコンクリートを打つ時に行われます。

※棟木は,家の最も高い部分に水平方向に掛かっている梁。棟札は,棟木・梁などに取り付けた札。

図版:上棟式(建築のみ)
定礎式
西洋の石造建築において,土台となる石「礎石」を据える祭式に由来するといわれ,もともとは工事開始を記念するものでした。現在は,竣工式の前に,選定された柱などに定礎箱を入れ定礎石で蓋をする式が,関係者のみで行われる場合が多くなっています。ダム工事などでは,堅固な礎を築く意味を込め,鎮定(ちんてい),斎鏝(いみごて),斎槌(いみづち)の儀式により礎石を堤体に埋納する式典が行われます。
図版:定礎式
竣工式
竣工奉告祭ともいわれ,無事に工事が完成したことを,神々に奉告する儀式です。

※竣功と書くこともある。

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竣工披露
工事に協力した人たちに対して,感謝・お礼をする祝賀会です。祝辞や挨拶,感謝状の贈呈などが行われ,対外的なPRとしての意味を持ちます。完成祝賀パーティ,竣工披露パーティなどと呼ぶこともあります。竣工式と別に行う場合には,神事は伴いません。

上記以外にも,土木工事では道路の「開通式」,橋梁の「連結式」,トンネルの「貫通式」,シールドの「発進式」「到達式」,鉄道の「レール締結式」,工場では機械設備が操業する際の「火入式」,建物を使用する前に四方を祓い清める「清祓式」など様々な節目で式典が行われています。

ミニ知識:「鍬入れの儀」

地鎮祭で行われる儀式。鎌(かま),鍬(くわ),鋤(すき),盛砂,草などを用いて,次の順序で儀式を行います。

一 斎鎌(いみかま)…盛砂に設計者代表が鎌で草を刈る所作をする。
二 斎鍬(いみくわ)…事業主(施主)代表が鍬で土を掘る所作をする。
三 斎鋤(いみすき)…施工者代表が鋤で土をすくう所作をする。
※各所作とも「エイ,エイ,エイ」という掛け声とともに3度行う。
※設計施工の場合は,斎鎌は省略される。

※西日本では,斎鋤が事業者代表,斎鍬を施工者代表が行うことが多い。順序は斎鎌,斎鋤,斎鍬となる。

図版:鎌,鍬,鋤

鎌,鍬,鋤

図版:盛砂

盛砂

式典での儀式

起工式や上棟式,竣工式など様々な式典がありますが,各儀式の作法と順序は共通しています。一つひとつの儀式の行事作法は,次の儀式につながっていることを知っておくことが大切です。

図版:式場について

式場について

  • 中央の正中(せいちゅう:神様が通る道)の奥に祭壇を祭る。南向きまたは東向きとする。
  • 参列者の席は,正中に近い前方から上位となり,向かって右側に事業主(施主)および来賓,左側が設計事務所,施工者。
  • 祭壇の右側に盛砂,式次第,左側に玉串仮案(玉串を置く台)を設ける。
  • ※西日本では盛砂,式次第が左側となることが多い。

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儀式の順序

1 手水(てみず)
式場の外で手に水をそそぎ,身を清めてから式典に臨む。

※手水を“ちょうず”と読むこともある。

2 修祓(しゅばつ)
神職が大麻(おおぬさ)により参列者を祓う。祓いを受けるときは起立し,頭を下げる。
3 降神(こうしん)
式場へ神をお迎えする儀式。神職が降神詞(お迎えの言葉)を奏し「ウォォ」と発声。
4 献饌(けんせん)
神饌(しんせん:神々の召し上がりもの)をお供えする儀式。神饌は,米,酒,塩,海の幸,山の幸など。
5 祝詞奏上(のりとそうじょう)
最も厳粛かつ最重要とされる儀式で,神を敬い,神の加護を願う。祝詞を奏上する神職とともに参列者全員が深く頭を下げ,願いを捧げる。
6 切麻散米(きりぬささんまい)
敷地の四方を祓う。神職が,供えてある神酒,米,塩,切木綿(白紙で代用することが多い)を敷地の中央,四隅にまく。近年は祭壇前の四方を切麻で祓うことが多い。

※西日本では「清祓」ということもある。

7 地鎮,立柱,上棟
などのそれぞれ儀式(地鎮祭の「鍬入れの儀」など)。
8 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
神を敬う心を表す儀式。神職,事業主(施主),設計者,施工者の順で,玉串を供える。各代表者は右手を根本の上に添え,左手で葉を下から持ち上げ玉串を神職から受け取り,玉串の根本が神前に向くように(時計回りで)供える。二礼二拍手一礼を行う。

※玉串の根本のほうを「本」,葉のほうを「末」と呼ぶ。“取り違えること”を「本末転倒」という由来とされる。

9 撤饌(てっせん)
神饌をさげる儀式。現在では,瓶子に蓋をかぶせる所作に簡略化されている。
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10 昇神(しょうしん)
お迎えした神を元の御蔵(みくら)にお帰りいただく儀式。神職が昇神詞を奏し「ウォォ」と発声。

※降神,昇神の際に発せられる声を警蹕(けいひつ)という。

11 神酒拝戴(しんしゅはいたい)
お神酒(みき)を頂戴する。その後,場所をかえて直会(なおらい)が行われる。関係者の挨拶,祝辞などのあと祝宴となり,手締めや万歳三唱でお開きとなる。

参考文献:『建築の儀式と祭典』(黒河内悠著,鹿島出版会) 『建築式典の実際』 (若林嘉津雄著,学芸出版社)

ミニ知識:地鎮祭と起工式,安全祈願祭との違いは?

起工式は工事着手時に行う式典です。地鎮祭が大地主神(おおとこぬしのかみ:大地の守護神),産土大神(うぶすなのおおかみ:土地の氏神様)を祭神とするのに対し,起工式の祭神は手置帆負命(たおきほおいのみこと:工匠の守護神),彦狭知命 (ひこさしりのみこと:工匠の守護神),産土大神(うぶすなのおおかみ:土地の氏神様)となります。安全祈願祭は,文字どおり工事の安全を祈願するもので施工者中心に行うことが多い式典です。現在は,内容はほぼ同じで,事業主(施主)の意向により呼び方を決めるケースが多くなっています。

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