鹿島の原子力 絶え間ないあゆみ
当社が原子力の仕事に本格的に取り組むため1956年に原子力室を開設して,既に半世紀以上になります。昨今,地球環境問題への認識の高まりから欧米で原子力発電が見直され,アジアや中東諸国でも原子力発電導入に積極的になっていますが,かつてはスリーマイル島やチェルノブイリでの事故がもたらした強烈な逆風の時代もありました。
その中で当社は一貫して,国策である原子力発電所の計画・建設に電力会社,機電メーカーと共に全社を挙げて取り組んでまいりました。商業炉では,1966年東京電力殿の福島第一1号機の建設着工に始まり,以降,40年余にわたり一度も途切れることなく原子力発電所の建設を続けさせていただいております。これは世界中でも当社だけではないか,と自負しています。先輩方が築き上げてきたこのようなすばらしい実績を受け継いで,現在,私共は新たなプロジェクトに日々取り組んでいます。
原子力の100年をつくる
原子力発電所は,準備・計画段階から設計,建設,運転,廃炉に至るまでのライフサイクルがざっと100年にもわたります。このように幅広く,かつ長期間のプロジェクトだからこそ,各段階での入念な計画と徹底的な技術開発,そして十分な検証が重要なのです。
地震国であるわが国では耐震技術が特に大切です。近年,原子力サイト周辺で大きな地震が相次いで起こりました。幸いにして発電所の重要施設はびくともしませんでしたが,大きな地震動の記録が得られるなど,これまでの知見・経験を大幅に見直すきっかけとなりました。こうして得られた数々の教訓,特に地震動評価技術や構造物の地震応答解析手法といった技術開発は,各プラントの「バックチェック」や新設計画に電力会社,機電メーカーと一緒になって活用しているところです。
さらに中長期的には,新型炉の開発を進めるとともに,実践段階に入る既設プラントの廃止措置,今後の最重要課題である廃棄物処分にも注力しております。特に高レベル廃棄物処分では10万年というオーダーで人間環境への安全性をきちんと説明していく必要があり,今後さらに地道な基礎研究を積み重ねていかなければならないと考えています。
「100年をつくる会社」は当社のブランド・アイデンティティですが,こうした長期にわたる原子力の仕事はまさにこれにあたります。
原子力の仕事に携わる社員一人ひとりが「原子燃料サイクルの確立ならびに原子力の平和利用という国策の実現を担っている」という矜持を持って,それぞれの仕事に取り組んでいます。これこそが「鹿島の原子力」のDNAであり,そうした人材を育成し,技術を継承していくことが,私共の使命であると考えています。