[2025/06/11]
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「水災害トータルエンジニアリングサービス」による対策工事を
自社技術研究所にて完了
予測、予防から対応まで合理的なBCPサービスをワンストップで提供
鹿島(社長:天野裕正)は、リスク評価から対策立案・対策工事、運用支援までをワンストップで行う当社グループの「水災害トータルエンジニアリングサービス」による合理的な水害対策工事を、多摩川に近接する技術研究所西調布実験場(東京都調布市)において完了しました。
本対策工事では、将来の気候変動を考慮した洪水予測結果を踏まえて、敷地外周約600mを1.5mの止水壁で取り囲みました。これにより、大雨時に敷地全体を浸水被害から守ることができ、大型で高額な実験機器がある複数の実験棟の機能を維持できます。止水壁の一部には、圧迫感を和らげるガラススクリーンや当社らが開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM®」を採用。さらに、敷地の出入口には、浸水が発生した場合に自動的に立ち上がる浮上起伏式止水板を設置しました。そのほか、止水板立ち上がり後も敷地内外の往来が可能な浸水時避難口や、排水管からの逆流を防ぐ二重逆流防止弁を設けました。
鹿島は今後、本対策工事および運用フェーズで得られる知見を活かし、「水災害トータルエンジニアリングサービス」の拡充とさらなる普及展開を図ることで、お客さまの水害に備える合理的なBCPをサポートし、災害に強く回復力がある社会の実現に貢献してまいります。
浸水発生時に自動的に立ち上がる浮上起伏式止水板
水害対策実施の背景
外周約600m(面積約21,800m2)の敷地に8棟の建物を有し、各棟に大型振動台などの重要実験機器がある鹿島技術研究所の西調布実験場は、近くを流れる多摩川の洪水時浸水想定区域に位置しています。東日本に甚大な水害をもたらした2019年の台風19号が襲来した際には、同実験場から最も近い石原水位観測所の水位が氾濫危険水位を大幅に超え、越水が懸念されました。加えて、今後、気候変動等で降雨量がさらに増大するリスクもあるため、同実験場が浸水した場合の実損被害額や実験停止に伴うリスクを勘案し、施設機能を維持する必要がありました。そこで、「水災害トータルエンジニアリングサービス」による合理的な水害対策を2023年7月に検討・着手し、このほど工事が完了しました。本サービスの概要
「水災害トータルエンジニアリングサービス」は、「リスク評価」「対策立案」「対策工事」「運用支援」の4つのステップで構成されており、鹿島グループが有する技術力を結集し合理的な対策をワンストップで提供することで、水害に備えるお客さまの最適なBCPをサポートするものです。
水災害トータルエンジニアリングサービスのフロー
本対策工事の概要・特長
また、本施設は敷地内に複数棟が存在し、何れの棟にも大型の実験機器があるため、敷地全体を守る敷地外周を止水ラインとし、敷地外部からの水の侵入を防ぐ計画としました。
洪水氾濫解析結果
※1 多摩川においては、200年に1回程度の割合で発生する降雨量を想定したもの。
近年頻発する集中豪雨や大型台風などによる激甚化した降雨は想定されていない
本対策工事の概要・特長は以下の通りです。
敷地外周約600mを高さ1.5m の止水壁で取り囲みました。止水壁は鉄筋コンクリート造のほか、一部に、執務環境改善および周囲への圧迫感を和らげるガラススクリーン、CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM」を採用。さらに、敷地の出入口には、浸水発生時に自動的に立ち上がる浮上起伏式止水板を設置することで、敷地内への水の侵入を物理的に完全阻止します。
ガラススクリーン止水壁
コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下にするカーボンネガティブ型「CO2-SUICOM(P)」を用いた埋設型枠※2 、車止め、犬走※3の飛び石を設置。さらに、CO2吸収量と生産コストのバランスに優れたカーボン低減型「CO2-SUICOM(E)」を用いたPCa(プレキャスト)止水壁を設置し、環境負荷低減に貢献しました。なお、CO2-SUICOM(E)を用いた大型PCa製品を実工事に導入したのは、今回が初めてです。
CO2-SUICOM(E)PCa止水壁
※3 建物の周囲に設けられる幅1m前後の通路
止水壁や止水板で施設が隔離された後でも、救助隊や社員などが出入りできる浸水時避難口を設置しました。浸水時に自動解錠されるフェンスに加え、止水壁内外部に階段を備えることで、浸水を防ぎながら敷地の内部と外部をつなぐことが可能です。
浸水時避難口
敷地外周を止水壁等で取り囲んでも、浸水時は下水管から水が逆流する恐れがあります。そこで、台風の接近等に伴う進行型の水災害のみならず、ゲリラ豪雨などによる急な浸水リスクにも対応するため、浸水時に自動で閉まるフラップ型の逆流防止弁を敷地側に設置しました。さらに、浮遊物を含んだ下水の逆流を防止するナイフゲートバルブを設け、二重の措置としました。
二重逆流防止弁
今後の展開
今後、同実験場の水害対策は運用のフェーズに移行します。BCP訓練などで適宜、行動タイムラインを見直しスパイラルアップさせながら、より柔軟で確実な対策を実行できるように備えてまいります。鹿島は、リスク評価から対策立案、対策工事、運用支援にわたる「水災害トータルエンジニアリングサービス」を通じ、お客様の要望に応じた適切な浸水防止設備の選定や防災行動を加味した対策の検討・実施、および総合的に費用対効果の高い提案を行ってまいります。
また、長年にわたり培ってきた地震、風、火災などに対するBCP支援に水害対策を加えて、複数の専門性にまたがる当社グループの経験を結集し、各種災害に備えた合理的なサービスをワンストップで提供し、お客様のBCPをサポートしてまいります。
(参考)
YouTube 鹿島公式チャンネル
水災害トータルエンジニアリングサービス ~西調布実験場水害対策工事完了~

水災害に対するトータルエンジニアリングサービスを提供開始

(2022年10月24日プレスリリース)
「水災害トータルエンジニアリングサービス」により自社施設の水害対策に着手

(2023年7月6日プレスリリース)
CO2吸収コンクリートに新たなグレードを設定し、大型PCa製品を開発

(2024年5月9日プレスリリース)
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