厳しい条件下でも可能な工法だからです。
原子炉建屋群への地下水の流入を抑制するために、様々な工法が検討されました。事故が発生し、多くの作業が並行して進行する発電所構内であること、高い放射線によってあらゆる作業が制限される非常に特殊な環境下にあることなども、前提条件として十分に考慮する必要がありました。
鹿島は、従来からトンネル工事などで数多くの実績がある「凍結工法」に着目し、凍土方式による遮水壁の造成を提案した結果、国の汚染水処理対策委員会から適切な工法であると認められました。
氷で壁をつくる凍結工法のしくみ
凍結工法とは地盤そのものを凍らせてしまうことで「凍土」を造成し、地下水の流入を止める既存技術です。凍結管を地中に約1m間隔で設置し、凍結管内にブラインと呼ばれる約-30℃の冷却液を循環させることで、凍土を造成します。
凍結工法が採択された理由
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凍結した土壌にはほぼ 100%の遮水性能があり、非常に信頼性の高い止水技術です。また、完成後に万一冷却設備のトラブルがあっても、数か月は融けずに、遮水性を維持することが可能です。
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万一地震などによって壁が損傷しても、「氷」であるためすぐにまた凍結し、修復されます。粘土や砕石などで壁を築造した場合、高い放射線環境下では、損傷した部分を探したり補修したりすることに、多くの困難が予測されます。
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原子炉建屋群の地下には、設備の配管など埋設物が多数存在します。工事は凍結管を設置するための細い孔を掘るもので、施工設備もコンパクトで容易に移動できるため、狭隘(きょうあい)な場所においても施工が可能です。また、施工期間の短さも大きな長所です。
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粘土や砕石による壁の築造は、既存の土と置き換えることになるため、放射能に汚染された大量の土壌(二次廃棄物)が発生してしまいます。凍結管用の細い孔を掘るだけで、土そのものを凍らせる凍結工法は、廃棄物の量も劇的に削減します。