限りある最終処分場の再生、施設閉鎖や
跡地の有効利用で循環型社会に貢献します
限りある資源を大切にする循環型社会に移行しても、資源に還せない残渣物や災害発生に伴い緊急処分せざるを得ないがれき類は、大地などに埋立処分しなければなりません。この最終的に埋立処分する“場所”を「最終処分場」と言います。
「最終処分場」は、いずれは埋立が終了する限りある施設です。しかし、様々な残渣物などを長期にわたり埋立処分するため、周辺の生活環境に影響を与えないように適切・安全に貯留できる施設である必要があります。
そこで、貴重な施設を持続的に使用できるように埋立 “場所” の容量を確保、または貯留施設などの構造・耐力を向上する ─再生─ や、埋立処分が終了した最終処分場や周辺環境に支障をきたしている最終処分場(不適正処分場)を安全な状態に保持する ─閉鎖─ をする必要があります。
また、最終処分場を地域住民や周辺の自然環境と調和させ、次の世代が循環活用していく ─跡地利用─ も大切です。
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キーワード
- 最終処分場、リニューアル、再生、延命化、閉鎖、不適正処分場、不法投棄、原状回復、
地域共生、現地発生材利用、ビオトープ、跡地利用、メガソーラー、生態系配慮、親水護岸、
環境アセスメント、再生可能エネルギー、スポーツ施設、バイオ燃料
再生(リニューアル)と閉鎖
周辺環境への影響を抑えます
鹿島は、新規立地が困難な場合の既存施設での容量確保や、現行基準適合のためのリニューアル対策として、安全性・資源化を考慮した埋立廃棄物の選別・減容化、遮水工の整備など、状況に応じた最適工法を提案します。
■埋立容量の回復を図る ─再生─
最終処分場は広大な用地が必要になるなどの理由で新規立地が困難な場合があります。貴重な限りある既存施設を持続的に使用できるよう、安全性・資源化を考慮した埋立廃棄物の掘起し選別による減容化など、埋立容量の回復を図る対策工法があります。
■埋立機能の改善を図る ─閉鎖─
埋立処分が終了した最終処分場や延命化対策工が困難な最終処分場は、周辺環境に影響を及ぼさないよう適正に閉鎖します。一方、技術基準に適合しない最終処分場や周辺環境に支障をきたしている最終処分場を安全に閉鎖できるように、機能性・環境保全を考慮した遮水工の構築など、施設機能の改善を図る整備工法があります。
再生・埋立容量の回復
既存施設の埋立廃棄物を減容化し、埋立容量の回復を図ります。
具体的な方法として、埋立廃棄物を掘起して選別することによって減容化をはかる「掘起し選別」と、埋立廃棄物を圧密して減容化をはかる「圧密工法」があります。
閉鎖・不適正処分場の適正化
技術基準に適合しない最終処分場、周辺環境に支障をきたしている不適正処分場や不法投棄場所について、浸出水処理、汚染拡散防止、モニタリング、廃棄物の撤去、封じ込めなどによって、周辺への負荷を軽減し、安全に閉鎖あるいは原状回復できる対策を講じます。
「負の遺産」として周辺環境に影響を及ぼさないよう、埋立地外周に鉛直の遮水壁を新たに構築したり、埋立が終わったところをシートなどで覆う(キャッピング)といった、浸出水処理施設の機能増強などの対策を図ります。
再生・閉鎖関連技術
状況や目的に最適な技術をご提案
既存の最終処分場に対して埋立容量の回復を図る再生対策技術として「掘起し選別工法」と「TLT工法(無排土孔壁圧密工法)」を、不適切な最終処分場に対して施設機能の改善を図る閉鎖整備技術として「ACTMウォール工法(低排土粘土遮水壁工法)」と「キャッピング技術」を紹介します。
掘起し選別工法
品目が混在したまま埋設されている廃棄物を掘起し、品目別に選別を行います。
リサイクル可能なものも多く含まれており、結果として最終処分量が低減します。
掘起し選別フロー例
- ①粗選別:バックホウなどにより、掘削した廃棄物から「粗大ごみ、大塊、危険物」を撤去します。
- ②機械選別:トロンメルや振動スクリーンにて設定粒径以上と以下に分別・分級します。
- ③手選別:人力にて「岩石・コンクリート塊、可燃物、金属類(磁選別)」を分別します。
- ④破砕:「岩石・コンクリート塊」は、破砕など粒度調整により有効利用を図ります。
その他の廃棄物については、必要に応じて破砕などにより減容化を図ります。 - ⑤圧縮梱包:可燃物を圧縮梱包し、安全に保管・移送して焼却します。
学会発表他実績
- 2017年
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廃棄物資源循環学会 平成29年度研究発表会
「不適正な最終処分場」における廃棄物の掘削・選別に関する事例
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- 2009年
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月刊廃棄物
最終処分場の再生と延命化
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- 2006年
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環境技術会誌
第123号「埋立地の掘り起し、再整備技術」
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TLT工法(無排土孔壁圧密工法)
TLT工法は、土砂を排出せずに穴を削孔する「無排土孔壁工法」を応用し、埋立廃棄物を押し固め圧縮して減容化するものです。従来、ブルドーザーなどを使用し鉛直方向の転圧締固めを行って廃棄物を埋立てますが、十分な締固めを行ったとしても埋立廃棄物層地盤には40%程度の空隙が残ります。
この工法では、従来の方法で締固めた埋立廃棄物層地盤に圧縮翼をもつ特殊スクリューで水平方向から締固め、残存する空隙中に廃棄物を圧縮することで容積を減らすことができます。また、埋立廃棄物が地上に排出されることもありません。
施工手順(一例)
- ①TLT機で埋立廃棄物を水平方向に締固めながら削孔を行います。
- ②削孔が完了した自立孔に、周辺部の廃棄物をバックホウを使用して投入します。
- ③特殊スクリューを反転することで、投入した廃棄物の締固めを行います。
学会発表他実績
- 2011年
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廃棄物資源循環学会 第22回研究発表会
一般廃棄物最終処分場における水平締固め試験について
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ACTMウォール工法(低排土粘土遮水壁工法)
表面遮水工がない最終処分場は、浸出水による地下水汚染の恐れがあるため、不透水層まで鉛直遮水を設けることで埋立廃棄物と地下水の縁を切ります。
ACTMウォール工法では、特殊角度翼装着水平多軸回転カッターを用いて地中に連続的なベントナイト混合土の遮水壁体を構築し、対象の埋立廃棄物を囲い込みます。遮水壁を不透水層に到達させることで、浸出水をシャットアウトします。
施工手順
- ①油圧ショベルにてガイド溝を掘削します。
- ②定規をガイド溝に設置し、掘削機の位置出しをします。
- ③掘削機を貫入しながら掘削液と圧縮空気を噴射して掘削します。
- ④掘削完了後、ACTM材を噴射し混合・攪拌しながら引き上げ造成させます。
- ⑤掘削造成を繰り返し、片側より造成施工を行います。ラップ長は、土質・深度により変更することがあります。
キャッピング技術
最終処分場に廃棄物を埋立てる場合、埋立廃棄物の種類・性状により悪臭の防止、廃棄物の飛散・流出防止、衛生害虫類の発生防止などから、埋立廃棄物を土で覆う「覆土」を行います。
覆土には1日の作業終了時に行う「即日覆土」や、一定の埋立深さ・層に達した時に行う「中間覆土」、最終的に埋立処分が終了した場合に行う「最終覆土」があります。
この覆土に替えて覆土の機能を持たせたり、覆土と同時に使用して降雨の浸透を抑制したり埋立廃棄物の生物分解を促進させるキャッピング技術を紹介します。
学会発表他実績
- 2007年
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地盤工学会 第42回地盤工学研究発表会
新しい覆土工法の提案
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地盤工学会 第7回環境地盤工学シンポジウム
キャピラリーバリア機能を利用した覆土構造の提案
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- 2004年
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地盤工学会 第39回地盤工学研究発表会
処分場トップカバーにおけるキャピラリーバリアシステムの実験的検討
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ADKシート(通気・防水シート)
最終覆土をする場合、浸出水を抑制するための対策として、遮水シートを敷設するケースがあります。
ADKシートはポリエチレンとポリプロピレンの複合素材からなり、トップカバーとして求められる機能の防水性、通気性、強度および施工性、安全性、低コストなどの必要条件を兼ね備えた画期的なシートです。雨水が埋立地内へ浸透するのを防止し、かつ埋立廃棄物中より発生するガスを排除(大気放散)することができます。
特長
- 雨水などの下層への浸透を最小限に抑えます。
- 下層部からのガスを自然排出します。
- 埋立廃棄物層と表土に挟まれても破れることはありません。
- シートが軽量のため、運搬・敷設が容易です。
- 不織布なので有害物質の流出もなく、生化学分解もしません。
微生物(好気性)による高機能型覆土
何層にも埋立てられた廃棄物に有機物が多く含まれる場合、空気の通り難い埋立廃棄物は酸素を嫌う微生物(嫌気性微生物)によって分解されるため、メタン(可燃性ガス)や硫化水素(有害ガス)が長期的に発生します。
高機能型覆土の特徴は、酸素を好む微生物(好気性微生物)によりメタン、硫化水素を分解・無害化することです。覆土の主材は建設廃材や伐採材などを破砕した木チップであるためコストを低く抑えることができます。このメタン除去を発揮するために必要な最低層厚は40cm程度であることがわかっています。また地盤中に元々存在している好気性微生物を利用するので、ほぼメンテナンスフリーで機能を発揮します。
学会発表他実績
- 2010年
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地盤工学会 第45回地盤工学研究発表会
廃棄物処分場の最終覆土内における透気性・拡散性の評価
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地盤工学会 第45回地盤工学研究発表会
バイオフィルターを用いた覆土のメタン除去性能の検討
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土木学会 第65回年次学術講演会
覆土を用いた処分場ガスの分解・除去技術の性能評価
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環境配慮・跡地利用
環境に配慮した地域との共生
最終処分場は、建設時から周辺地域に環境負荷を与えます。このため、環境アセスメントを事前に行い、十分な調査に基づいて周辺の動植物や自然環境、地域景観の保全を計画的に進めることが重要です。ここでは、いろいろな自然環境保護対策を紹介します。
最終処分場は、埋立完了後2年以上の観測期間をおいて、浸出水水質、ガスの発生、埋立内部温度、沈下などの廃止基準がクリア出来れば廃止することができ、多面的な跡地利用が可能になります。一方で、人の健康や周辺環境に影響を与えなければ、基本的には廃止前から利用することが可能です。最終処分場の跡地利用は、自然公園、グラウンド、ゴルフ場、スポーツ施設などに利用されています。最近では、太陽光発電所などの再生可能エネルギー事業にも利用されています。これらの跡地利用に対して、鹿島の確かな技術と豊富な実績にて対応します。
周辺環境との調和
最終処分場の建設および埋立から廃止後の期間について、環境アセスメントの結果を踏まえて、近隣住民の方々や生物可能性、防災や景観について可能な限りの配慮をします。
施工時に発生した岩石をせせらぎスペースに利用したり、伐採材を木柵や炭化して土壌改良材として使用するなど、自然を活かした工夫をしています。また、最終処分場に必要な施設である調整池をビオトープとして、自然にやさしい親水護岸や浮島などの設置をしています。
学会発表他実績
- 2015年
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土木学会 平成27年度全国大会
現地試験水路でのカワニナ成長比較
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最終処分場の先行利用
最終処分場の建設、埋立、廃止までは相当の年数が必要です。最終処分場を地域へ早く還元する方法として、最終処分場の先行利用があります。これは処分場埋立地の一部を工事発生土(のちの最終覆土材)で埋立て、屋内をインドアスポーツ施設などとして利用します。
また、環境教育を行うスペースとして青空教室を設けるなど、地域への還元を早期に実現した事業計画もあります。
最終処分場の跡地利用
埋立終了後の最終処分場に、トウキョウサンショウウオの産卵地を確保したり、外周水路に小動物系の脱出斜路を設置したりするなど、さまざまな取組みによって生態系に配慮しています。また、森林観察路やバードウォッチング用の施設、緑地公園、多目的グラウンドなど、最終処分場跡地を通じて、地域とともに自然と触れ合う空間を提供しています。
最終処分場跡地の事業化利用
持続可能型社会を実現するため、また、地球温暖化対策として、再生可能エネルギーである太陽光発電やバイオマスエネルギーなどの導入が図られています。埋立終了後の最終処分場に、これらの再生可能エネルギー事業用地として利用することは非常に有効です。また、太陽光発電については、クローズドシステム処分場の大屋根に建設時より設置することも可能です。
鹿島では、再生可能エネルギーに関する技術や実績を多数保有しており、太陽光発電、バイオマス発電、風力発電などの計画立案から売電・運用・維持管理までのすべての対応が可能です。
メガソーラー
埋立が終了した最終処分場の跡地を、メガソーラー施設として再生することができます。
汚染土壌浄化技術や地盤改良などの造成技術、環境保全技術といった鹿島の豊富な土地再生ノウハウを活かし、土地の再整備からメガソーラーの設置まで、設計、パネルを含めた調達、施工の最適ソリューションを提供します。
バイオ燃料
鹿島はバイオエタノールやBDFなどのバイオ燃料について、大学や他社と共同で植物栽培技術・製造技術を開発しています。最終処分場跡地は、こうしたバイオ燃料の栽培地として再生することが可能です。