ユニバーサルデザイン

<計画編>ひとの感覚にうったえる空間デザイン

近頃、「見通し感の良さ」という言葉をよく耳にするようになりました。特に車いす利用者やろう者・難聴者からこのような声が上がります。車いす利用者は、その特性から移動ルートに制約があるため、自身で使えるルートを探し出す必要があり、エレベーターやスロープ、バリアフリートイレ、案内カウンターなどを常に探して行動します。またろう者・難聴者は、移動の際の情報の多くを、サイン・掲出物などの視覚情報から得ています。また、音が聞こえず気配を察知しにくいことから、背後から接近したり物陰から飛び出す人や車などに対し、より注意を払い、接触などの危険を回避しています。

彼らはどこに何があるのか一目で理解できる環境・空間を望んでいます。そのような見通しが良く、直感的にわかりやすい空間は、障害のある人だけではなく、誰にとっても利用しやすいものとなります。鹿島では、ひとの認知マップの構成に注目し、空間のわかりやすさを評価する4つのツールを独自に開発しています。ツールを実際の設計に活用し、高齢者や車いす利用者も含めた多様な人にとって、わかりやすい空間を計画しています。

直感的にわかりやすい空間の4つの評価ツール①
移動経路のわかりやすさ評価ツール


鹿島では、空間を幾何学的に分析する「スペースシンタックス理論」に基づき、出発地から目的地までの移動経路のわかりやすさを評価する独自のツールを開発しています。本ツールでは、経路上で生じる視線の曲がり回数を指標として、吹抜などを含む3次元的な空間構成の妥当性を評価することが可能です。これにより、病院や公共施設といった、多様な方々が利用する建築において、直観的に理解しやすい空間づくりに貢献します。

図版:空間の見通し感シミュレーションの結果例

空間の見通し感シミュレーションの結果例

直感的にわかりやすい空間の4つの評価ツール②
空間のシーケンスの変化量評価ツール


人の記憶に残りやすい空間体験に着目し、シーケンスの変化を軸として、鹿島独自の評価ツールとして開発しました。

視点から見える空間の体積(可視容積)などの物理的な変化量を用い、その空間から印象に残りやすい空間やランドマークの設置場所のシミュレーションが可能となりました。このツールでは歩行速度や目線の高さも考慮でき、多様な人にとって印象に残りやすい(物理的な変化量が大きい)=わかりやすい空間づくりに寄与します。

図版:可視容積の算出のためのパース

可視容積の算出のためのパース

図版:可視容積の変化をモデルから算出したグラフ

可視容積の変化をモデルから算出したグラフ

直感的にわかりやすい空間の4つの評価ツール③
目標物の見つけやすさ評価ツール


近年、デジタルサイネージや広告などの視覚情報が増え、サイン・案内所・改札口といった重要な視対象が周辺の情報に埋もれ、発見が遅れるケースが散見されます。

鹿島では、こうした課題に対応するため、目標物の「発見しやすさ」を定量的に評価できるツールを開発しました。本ツールをサインや案内所等の配置計画に活用することで、利用者の迷いを抑え、より円滑・的確に、目的地に誘導する計画が可能となります。

図版:楕円方程式フロー

楕円方程式フロー

直感的にわかりやすい空間の4つの評価ツール④
サインの視認性評価ツール


駅や空港、大型複合開発施設などの公共空間では、利用者が迷わずに目的地へ向かえるよう、適切なサイン計画が求められます。鹿島では、車いす利用者や高齢者など、見え方に個人差のある利用者にも配慮しながらサインの視認性を評価できる独自ツールを開発しています。このツールを活用することで、多様な利用者が安心して利用できる、インクルーシブなサイン計画を実現することが可能です。

図版:サインの視認性シミュレーションの結果例

サインの視認性シミュレーションの結果例

ひとの感覚にうったえる空間デザイン インデックス


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