ともにつくる プロセス
建築の使い手には、事業者・発注者や設計者の想像を超えるような多様なユーザーがいます。その様々なニーズを計画に活かし、誰にとってもより優れた建築にする手法として、当事者参画によるユニバーサルデザイン・ワークショップ(UD/WS)が注目されています。公共建築や空港を中心にUD/WSの事例が増えており、また、建築設備のハード面だけではなく、運営運用といったソフト面も重視されるようになってきました。
鹿島は20年以上にわたり、庁舎や病院、文化施設を中心にUD/WSを行い、ハード・ソフト両輪について積極的な議論・検討を行ってきました。そのノウハウを活かし、近年では大型公共的施設の計画においても取組みを展開しています。
鹿島は今後も、さまざまな用途・規模の建築においてUD/WSを推進・展開していきます。ひとつひとつ建築を「ともにつくる」ことを通じ、だれひとりとのこさない、ともに歩む都市・未来へと貢献します。それはとりもなおさず、鹿島の理念である「科学的合理主義と人道主義に基づく、創造的な進歩と発展」であると考えています。
誰もが感動を共有するアリーナへ
<TOYOTA ARENA TOKYO>
TOYOTA ARENA TOKYOでは、「誰しもが使いやすい」施設を追求するため、障がい当事者が参画するユニバーサルデザイン・ワークショップを当社設計から事業者に提案し、実施しました。民間企業で実施した先進的なUD/WSの事例です。
発注者、施設運営者、設計者に加え、第三者性を担保するため、この分野の知見が豊富な東京大学の松田雄二准教授をファシリテーターとして招きました。UD/WSには、事業者所属のパラアスリートと、特例子会社の当事者が参加し、全9回のUD/WS等に、延べ194名が参加しました。
UD/WSでは、設計、施工のフェーズに合わせた多様な検討項目を設定し、カウンター席やサインはモックアップを作成して検証しました。活発な議論の結果、寄せられた意見は400以上に上り、その半数以上が人的支援や運営運用、事前情報提供といったソフトに関わることでした。そこで、ソフト面についての勉強会も開催し、ハード・ソフト一体で、事業者・設計者がともに、誰にとっても使いやすい施設の在り方を検討しました。
竣工後には、UD/WSの参加者が実際にバスケットボールの試合を観戦(※)し、評価をしました。振り返りの会では、高い評価と今後へのさらなる期待の声をいただきました。
※アリーナ運営事業者トヨタアルバルク東京による主催イベント
カウンターのモックアップ検証
竣工後の試合観戦・検証の様子
さらなる感動共有の発信へ
<新秩父宮ラグビー場(仮称)>
現在鹿島はSPCの代表企業として、新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営等事業においても、当事者参画のUD/WSに取り組んでいます。2025年までに設計段階のUD/WSを終え、2026年2月に無事着工を迎えました。竣工までさらに意見交換や検証を重ねる予定です。さまざまな利用者の生の声を反映し、誰もが感動を共有できる、新時代のラグビー場を具現化していきます。
新秩父宮ラグビー場 外観
心が明るくなる病院づくり
<千葉市立幕張海浜病院>
地域の総合病院の移転・新築にあたり、鹿島は施工を担当しました。通常、病院の設計では、医療スタッフによるモデルルーム検証が丹念に行われますが、患者目線での検証がなされることはきわめて稀です。そんな中、鹿島はより安全性と満足度の高い病院を目指し、プロジェクトの初期段階からUD/WSを提案。鹿島の施工部門、医療設計チーム、UDグループが協働し、発注者(千葉市)と設計者(日建設計)の協力のもと、様々な障害を持つ市民5名がサイン計画のUD/WSに参加しました。病院の受付から診療室・病室への道順を想定しながら、8種のサインモックアップを確認し、被験者ひとりひとりの意見を丹念にうかがいました。視認性、内容のわかりやすさ、スタッフのサポート等について活発な議論がなされ、それらをふまえてサイン計画の改善がなされました。さらに、その改善点を報告する「報告会」を実施。被験者には新病院への期待感が生まれ「心が癒されるような病院になりそうだ」「ぜひ行きたい」といった感想をいただきました。発注者・設計者・施工者も、真に愛される病院への手ごたえを得て、竣工に向けてラストスパートを切ることができました。
モックアップを使ったサイン検証
グループに分かれマンツーマンでヒアリング
鹿島のこれまでの取り組みとこれから
現在鹿島が力を入れている「ともにつくる」建築・都市。その背景には過去20年以上におよぶ、さまざまなUD/WSの実績があります。おおぶ文化交流の杜「allobu」(2014年竣工)では、大府市役所の協力を得て、地元の障害を持つを方5名がUD/WSに参加しました。設計への意見を伺い、地元の多様な皆さんが使いやすく、いつまでも愛される文化・交流施設を計画しました。横浜市戸塚区総合庁舎(区役所及び区民文化センター 2013年竣工)、浦安市庁舎(2016年竣工)といった庁舎建築においても、鹿島からUD/WSの開催を提案し、様々な市民が利用しやすい建築を目指しました。また、西葛西・井上眼科病院(2015年竣工)では、従前より本院(お茶の水・井上眼科クリニック、井上眼科病院)で検証してきた患者や病院スタッフの協力を得て、眼科患者ならではの意見を設計に反映できました。他にも、中部国際空港、羽田空港・新千歳空港、成田空港のユニバーサルデザイン検討会に参加し、様々なUD/WSを通して多くの知見とノウハウを育んできました。
これからの知見と現在の取り組みを糧に、鹿島は今後も、さまざまな用途・規模の建築においてUD/WSを展開していきます。ひとつひとつ、建築を「ともにつくる」ことを通じ、だれひとりとりのこさない都市・未来へと貢献します。
西葛西・井上眼科病院 エントランスホール
西葛西・井上眼科病院 2階診察待合
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