ユニバーサルデザイン

安全・安心の技術<日常の暮らしを守る>

超高齢化社会を背景に、より安全・安心に日常生活を送れる都市・建築が求められています。鹿島は、ひとの感覚の働きに着目し、様々な身体能力に配慮しながら設計を行っています。

行動特性・身体能力への配慮


建物内での事故死は、交通事故死を上回り、中でも高齢者や子どもの事故が多く発生しています。階段からの転倒・転落が一番多く、特に階段の安全性に配慮することが必要です。また、「子どもは高いところに上がりたがる」「高齢者は足があげにくくつまずきやすい」などの行動特性や身体能力をよく理解し、計画することが重要です。さらに、建物用途にかかわらず、様々なタイプの人が利用することを想定することも大切なことです。

図版:家庭内における不慮の事故と交通事故の死者数の比較

家庭内における不慮の事故と交通事故の死者数の比較

人間は視覚から得る情報が圧倒的に多く、危険回避のための情報もほとんど視覚に頼っています。階段がどう見えるのかに注目し、計画することが必要です。

踏面と段鼻(踏み板の先端部分)とが似た色や素材の場合、健常者にはあまり問題の無い色の組合せでも、物が見えにくい方には識別しづらいことがあります。降りる際に段鼻の位置がわかりにくく、複数の踏面が連続して見え、足を踏み外すおそれがあります。重要なことは、踏面と段鼻、そして床面は互いに識別しやすい色や素材とすることです。色相で差をつけにくい場合は輝度の差をつけることも可能でしょう。さらに、階段を明るく照らすことも重要です。

また、踊場や廊下の床に、階段の段々のイメージを延⾧したようなデザインを見かけることがあります。これは見下ろした時に、平坦部にも階段が続いているように見え、大変危険です。足の踏み出し方が異なるため「空足を踏み」体勢を崩しやすくなるのです。
また基壇がある階段では、基壇があることに気がつかずに降りてしまい、転倒するケースも多く見受けられます。

図版:踏面と段鼻の色や素材が同じ階段

踏面と段鼻の色や素材が同じ階段

図版:段鼻・踏面の淵の色を変えた階段

段鼻・踏面の淵の色を変えた階段

図版:自然石の風合いを生かした階段

自然石の風合いを生かした階段

図版:段に平行なラインが強調された階段

段に平行なラインが強調された階段

色彩計画で空間をわかりやすくする


コントラスト確保によるわかりやすい空間づくり
/TOYOTA ARENA TOKYO

TOYOTA ARENA TOKYOでは、色を多用することなく、モノトーンでありながらコントラストを確保することで、わかりやすい空間づくりをしています。アリーナのメインコンコースは、床と壁のコントラストを確保して空間の形状をわかりやすくし、さらに柱は周囲とのコントラストを確保し、注意喚起を行っています。観客席へのゲートは黒い門型のフレームとし、観客をいざなう照明計画・内照式サインにより、直感的に認知できるゲートとしています。

トイレの入口には、男女のトイレを示す青・赤の色や、大型のピクトを効果的にデザインしました。また袖壁にも青・赤の色を採用し、一目でトイレの入口であることがわかります。

図版:コントラスト確保による注意喚起

コントラスト確保による注意喚起

図版:柱・壁が視認しやすいコンコース

柱・壁が視認しやすいコンコース

図版:わかりやすい観客席・トイレへの入口

わかりやすい観客席・トイレへの入口

識別しやすい色使い /柏瀬眼科

インテリアやサインの色彩計画では、色差による色の組合せ評価シミュレーションを用い、高齢者・ロービジョン者(ものが見えにくい人)でも識別しやすい計画としています。
家具や医療機器が置かれているエリアと壁際のエリアは、歩行の際の注意を促すために、床を濃紺の柔らかなタイルカーペット敷としました。歩行感でエリアがわかりやすく、また、白い家具や医療機器が目立ち発見しやすいため、衝突を防ぐことができます。一方、安心して歩行できるエリアは薄いベージュの硬い塩ビタイルとしています。
竣工後にアイ・マーク・レコーダー(視線の動きを測定する機械)を使って検証を行い、デザインの有効性を確認することができました。

図版:柏瀬眼科測定検査室

柏瀬眼科測定検査室

図版:アイ・マーク・レコーダーによる評価実験

アイ・マーク・レコーダーによる評価実験

見やすさ・見え方に配慮したサイン計画
/東京慈恵会医科大学 西部医療センター

濃い茶色と白の2色を基本カラーに、樹木をモチーフとした落ち着いたサイン計画としています。病棟階では、ワンフロアに4方向ある病棟に対し、CUD*の観点から、すべての人に見分けやすい4つのアクセントカラーを設け、直感的に病棟がわかるようにしています。彩度の高い色の採用や、大面積で色を使うことはせず、空間に馴染む落ち着いた色味ながら、茶色・白の地色や白いフチを効果的に利用し、明度差を十分に確保しています。高齢者や色覚特性のある方等を含め、多くの人に見やすい本サイン計画は、CUD認証を取得しています。
*CUD:カラーユニバーサルデザイン

図版:病棟案内サイン

病棟案内サイン

図版:落ち着いた空間に馴染むアクセントカラーデザイン

落ち着いた空間に馴染むアクセントカラーデザイン

音サインで空間をわかりやすくする


音サインでトイレの男女を識別しやすく
/西葛西・井上眼科病院

駅等でトイレを案内する音声が普及していますが、クレームも報告されています。そこで西葛西・井上眼科病院では、周囲に音が漏れにくくトイレに入る通路だけで聞こえるように超指向性スピーカーを実装しました。「トイレ」と言う言葉が耳につき不快感を助⾧するのではないかと考え、音声ではなく男女のコーラスを基調にしています。

音サインの心理実験を行った結果、その有効性が確認できました。男声サイン、女声サインを比較して聴いた場合(相対実験)はもちろん、それぞれを単独で聴いた場合(絶対実験)でも、同様に高い確率で男女の識別が可能でした。男性・女性のコーラスなど、非言語による音響案内は、今後の適用が期待される技術の一つと考えています。

動画:実装された音サインの事例(提供:西葛西・井上眼科病院)

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