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スマートデバイス2 機能を活かしたシステム

スマートデバイスには,カメラや各種センサーなどの多様な機能が搭載されている。
なかでもGPS機能は,高い操作性と相乗効果を生み,様々なアプリケーションで
利用されている。当社が開発した2つのシステムをみてみよう。

動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」

近年,環境問題に注目が集まるなか,建設工事でも周辺環境の保全対策の重要性が増している。特にダムや造成などの大型土木工事では,工事区域とその周辺の動植物や自然環境の保全対策が必要だ。しかし工事の進行に伴い,地形などの状況が刻々と変化するため,継続的に環境モニタリングを行い最適な環境保全対策を施していく必要がある。そこで開発されたのが,動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」である。

このシステムは,iPadが有するGPS機能を用いて,動植物の写真画像や位置情報,現地状況などの関連データを記録し,地理情報システム(GIS)の電子地図上へマッピングする。正確な位置情報が記録されるため,関係者が共有すべき工事場所や保全対策箇所などを確実に把握・周知できる。

越川義功上席研究員

越川義功上席研究員

システム開発の中心として携わった技術研究所の越川義功上席研究員は「“いつ,どこで,なにが”が生態系関連情報では重要。常に変化する現場の環境情報を集約するためにはGISがうってつけです」と説明する。技術研究所では,GPS機能を搭載したPDA(携帯情報端末)で位置情報を取得し,デジタルカメラで写真を撮影してモニタリングを行ってきた。しかし,データを一元化するには手間がかかり,GISは扱いに知識が必要なため専門家がモニタリングを行わざるをえなかったという。その点,iPadは操作が簡単で情報を一元化する仕組みも構築しやすかった。「専門家でなくても簡単に使えてわかりやすいものをめざしました。高性能な端末とクラウドサービスを活用して使いやすいものができたと思っています」。

使用方法はシンプルだ。調査開始から端末が一定時間ごとに現在地の認証を行い,調査した時間と場所が足跡のように記録される。その途中で発見し,撮影した動植物の写真は,足跡のデータと一緒に記録され,データは専用アプリを通じてクラウドサーバーに転送・保存される。その後,サーバー上で一元化処理が行われ,端末の地図画面上に表示されていく。サーバー上にデータが残り,関係者にもリアルタイムで情報が共有化される。ほとんどの作業が自動で行われるため,担当者は写真と必要に応じたメモを端末上に残すだけで環境パトロールが完了するのだ。

福岡県五ヶ山ダム堤体建設工事の現場では,このシステムを使って現場担当者が環境パトロールを実施している。「既にビオトープなどの整備効果を記録・検証できましたし,小型猛禽類への配慮もうまくいっています」と越川上席研究員。建設工事の自然環境保全対策支援ツールとして,他現場などにも水平展開していく予定だ。

※iPadは,米国Apple, Inc.の登録商標です。

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図:いきものNote

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車両運行管理システム「スマートG-safe」

一方,宮城県石巻市で進められている東日本大震災で発生したがれきの処理業務「石巻ブロック災害廃棄物処理業務」では,車両運行管理システム「スマートG-safe」が開発・導入されている。

このシステムは,タブレット端末のGPS機能を利用してがれき搬入車両の位置を現場事務所内の運行管理室でリアルタイムに把握し,交通状況などに応じて運搬ルートの変更を指示するシステム。石巻市では,現在も震災の影響で鉄道が運休し,通勤車両の増加により市内幹線道路は渋滞しやすい状態が続いている。また,不定期・不確定な場所で交通規制や通行止めが実施されるため,ダンプなどが指定された経路のみを走行すると渋滞をさらに悪化させ,周辺交通に悪影響を及ぼす可能性もあり,新たなシステムが開発された。

特徴は,道路・交通情報などをリアルタイムにドライバーと運行管理室で共有できること。双方向で連携できるシステムは日本初となる。ドライバーから受けた「渋滞」「落下物」「交通規制」「浸水」などの位置情報を運行管理室に集約することができ,その情報を全車両の端末地図に表示する。

進入禁止エリアへの進入や速度超過の際は,ドライバーに警告音とメッセージ画面で注意喚起することも可能だが,この車両の位置と速度もGPSから割り出しているという。システムをカスタマイズしてきた土木設計本部の野呂好幸設計長は「ダンプの位置を管理室の地図に表示するシステムは存在したが,積込場所や積荷情報など現場特有の情報も一元管理できるようにした」と語る。搬入車両を確実に管理できることで宮城県や地元警察からも評価が高いという。「開発当初に心配したのは,複雑なシステムにすると使いこなせないドライバーが出てくるのではないかということでした」。野呂設計長は,簡潔な操作性をめざして端末の電源を入れるとシステムが自動で起動するように設定した。渋滞や交通規制などの情報は,画面をワンタッチするだけで位置情報を運行管理室に送信するようにし,紛らわしい機能は省いた。

「タブレット端末は画面が大きく見やすい。タッチパネル形式だからワンタッチで操作ができる」。スマートデバイスを利用したゆえの使い勝手はよく,ドライバーからの評判も高い。

現在,約100台のダンプにシステムを搭載し,順調に稼働している。

写真:運行管理室で情報を集約し,ドライバーに運搬ルートなどを指示

運行管理室で情報を集約し,ドライバーに運搬ルートなどを指示

写真:野呂好幸設計長

野呂好幸設計長

写真:運転席に備え付けられたタブレット端末

運転席に備え付けられた
タブレット端末

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図:車両運行管理システム「スマートG-safe」

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