これからスマートデバイス展開期に突入する。
その方向性や当社の今後のIT戦略について,
導入の陣頭指揮を執ってきた2人に話を聞いた。
スマートデバイス展開期へ
近年の情報通信技術の進歩は目覚ましく,情報が広く速く行き渡る時代になりました。現在当社では,生産性を向上させながら品質を確保していくために様々な業務改善を試みています。そのなかでもスマートデバイスの活用は,取組みを強化すべき重点的な課題です。昨年度を導入期と位置づけ,現場で使いこなすための必要最低限のルール整備やシステム開発,ツールの準備などを進めてきました。今年度からは展開期。試行から実践へとステージの移行を図っていきます。
土壌はできている
今でこそ,当然のようにパソコンやCADが使いこなされていますが,普及しだした当時はベテラン社員を中心にコンピュータに対する相当なアレルギー反応がありました。見慣れぬIT機器は管理部門が現場に「与える」もので,「与えられる」側が使いこなせるまでには相当な訓練が必要になる。IT機器の能力も足りない。結局使いこなすまでに断念してしまう例が多かったように思います。新しいソフトを開発しても,使い手の能力もデバイスの能力も追いついていなかったというわけです。現在は,業務の大部分をパソコンで行っており,若手社員は日常生活のなかで当たり前のようにスマートフォンを使いこなしています。スマートデバイスをはじめとする新たなIT機器を導入する土壌が既にできているのです。社員が当たり前のように悠々と使いこなす日は,そう遠くないかもしれません。
挑戦に期待
こうした土壌ができていますから,ここからは導入が自然に広がっていくと思っています。コスト負担などの問題はありますが,各現場所長には施工合理化の一環として是非導入してほしい。スマートデバイスの話に限らず,現場の運営全般にいえることですが,業務が繁忙だからこそ新たなことに挑戦していかなければならないと思うのです。現場を合理的に運営するための種は現場に落ちています。これを上手に拾い改善につなげていってください。本社・支店の指示を待つのではなく,自らの工夫と挑戦で現場を盛り立てていってもらいたいと願っています。
ものづくりの基本精神を大切に
現在,当社では組織の構造改革を進めており,多重構造を排除したフラットでシンプルな組織を形づくっていきます。KSSなど現場と支店管理部門の情報を即時に結びつける情報通信技術を上手に活用しながら,スマートデバイスもそこにつなげていきます。「こういうことはできないか」「こういうことをやってみよう」。柔軟な発想を秘めた若手の活躍にも大いに期待するところです。
ここで忘れてはならないのが,思想の根底に「いいものをつくる」というものづくりに対する断固たる基本精神をもつということ。ものづくりが元来どういったものか,所長の考え方を若手に伝えてもらいたいと思っています。しっかりとした精神で裏打ちをしつつ,日々進化するツールを有効に活用して業務に励んでいきましょう。
人と人とをつなぐ
一人一台のパソコンと現場を結ぶ高速ネットワークが整備され,ITは業務に必須な道具となっています。しかし,工事事務所にパソコンはあっても,現場に持ち出すにはノートパソコンといえども重く,電子手帳は機能不足と「ものづくり」の最前線では手書きの野帳にかないませんでした。スマートデバイスの登場により,ようやくこの状況が改善され,「いつでもどこでも」ITが利用できる素地ができました。
ITは道具ですから,何に利用するかが大切です。スマートデバイスは設計図・施工図の確認や配筋検査から現場と工事事務所間のテレビ電話など幅広く活用できるようになってきました。個々の作業の効率化から「人と人とをつなぐ」道具となって,現場の一人ひとりの社員の力となるようにしたいと思います。
使いたい人が使える状況に
試行を経て展開へと進むスマートデバイスですが未だ進化の途中です。新たな製品が次々と市場に投入されてきます。また,現行のタブレットでは当社の業務システムが動作しないなどの制限もありますので,より活用の幅を広めるために新たなタブレットの選定を進めています。
スマートフォンは多くの人が日常的に利用しています。人それぞれの好みにあうように多くの機種がありますが,それぞれがスマートデバイスとして十分な性能を備えています。こういった状況のなかでこれらを業務に利用する動きが,「BYOD(Bring Your Own Device)」という言葉と共に浸透しつつあります。普段から使い慣れた機種を利用したいという人々の発想です。今後は十分な情報セキュリティ対策の下に「使いたい人が使える状況に」したいと考えています。
センサーの活用
スマートデバイスの付加機能にGPSや加速度センサーなど高機能なセンサーがあります。位置情報と同時に動き方が記録され,これをダンプの運行管理に利用するなど意外な応用を生んでいます。情報化施工の領域としても,いろいろな活用があるのではないでしょうか。
巷ではこれらのセンサー情報を大量に収集して人々の行動パターンを分析するサービスもあります。多種・多様・多量なデータを収集して解析することは「ビッグデータ」というITの注目のキーワードです。生産性の把握から向上へとつなげられないかなど今後の応用に期待したいところです。
適切な情報管理を
いろいろ便利なスマートデバイスですが,多量の情報を蓄積でき,持出しも容易ですから,紛失・盗難のリスクもあります。いざという時は遠隔操作で使えないようにするなど,強固な情報セキュリティ対策を施してもいますが,やはり,利用する一人ひとりが「お客様の情報をお預かりしている」という気持ちをもつことが大切だと思います。最近は,サイバー攻撃に係わる記事をよく目にします。ITを安全な形で安心して使えるように,情報セキュリティ対策の強化を継続的に実施しますので,適切な情報管理など日常の情報漏えい防止対策をしっかりとお願いします。