SIGMA本社
不整形な敷地に馴染む「箱」の連結配置による,森とつながるオフィス
photo: エスエス 島尾 望
小田急多摩線沿線の栗木マイコンシティの一角に建つ,カメラメーカー シグマの本社施設である。
敷地が南側の接道面から奥に向かって扇形に広がる形状をしていたことと,敷地南側上空を走る高圧線直下には建築できないという条件から,敷地奥側の不整形な場所にメインボリュームが設置された。これにより手前アプローチ側に広い空地が生まれたため,ここに周囲に自生する樹種を取り込んだ植栽計画を施し,背面の既存森林と視覚的にも物理的にもつなぐ森林風景を構築することで,「森とつながるオフィス」を目指した。
建物は複数のシンプルな「箱」型ボリュームを敷地形状に馴染ませながら配置し,PC+RCラーメン造の箱(オフィス棟)・Sラーメン造の箱(来客棟)・RC壁式構造の箱(展示棟)が連結した形式とし,それぞれの機能に応じた形態・規模を与えた。執務エリアの構造体はスレンダーな架構を実現するPC構造とし,森への視界を最大限に確保しようと考えた。室内は天井に露出した梁を照らすことで,やわらかな光に包まれる空間となった。このPC構造の「箱」は垂直力のみ負担し,水平力は隣接するRC壁付ラーメン構造の「箱」に伝えることで成立している。共用作業室が配置されるこのエリアには3層吹抜けを設け,上下の空間を一体化する役割を持たせた。
各棟は渡り廊下で連結され,社員や来訪者は目的に合わせて行き来しながら過ごすことになる。季節や天候により表情を変える森や建築を楽しみながら,思い思いに過ごしやすい場所を見つけられる建築を目指した。
(岸野亮吾・中村義人)
photo: エスエス 島尾 望
photo: エスエス 島尾 望
photo: エスエス 島尾 望
photo: エスエス 島尾 望
SIGMA本社(川崎市麻生区)
- 発注者: シグマ
- 設計: 当社横浜支店建築設計部
- 用途: 事務所
- 規模: RC造一部S造 延べ7,228m2
- 工期: 2020年12月~2022年2月
(横浜支店施工)
岸野亮吾
(きしの・りょうご)
建築設計本部
チーフ
- 主な作品:
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- アズビル湘南工場 事務棟
- 丸山学園
- 東京栄養専門学校
- 京王線調布駅
- 新宿フロントタワー
中村義人
(なかむら・よしと)
横浜支店建築設計部
設計主査
- 主な作品:
-
- 横浜MIDベース
- ル ヴァン雪谷大塚