地球温暖化防止,生物多様性保全といった取組みを,
ホテルのサービスとして活用していく――。
そんなホテル創りがはじまっている。
空調・照明・給湯が24時間・365日稼働するホテルは,“エネルギー多消費型建築”といわれる。そのためホテル業界では,1970年代のオイルショック以降,継続的に省エネルギー努力を積み重ねてきた。
近年,エネルギー消費の効率化を図るシステムとして建物管理に導入されるようになったのが「BEMS:ビルエネルギーマネジメントシステム」。建物内に配した各種センサーにより温度や湿度を測定し,室内環境に合わせて機器や設備の運転を最適に制御・管理する。
その中で当社開発の「BEMS」は,エネルギー消費量のデータ蓄積,データ出力,高度な解析機能などで,“データの見える化”による定量的評価ができる。ビル管理者だけでなく,設計者がデータを共有できるのも特徴だ。建物の特徴を最もよく把握している設計者がビル管理にも加わり,省エネ対策の検討をサポートする。
当社グループが開発・設計・施工,保守・運営を手掛ける「ホテル イースト21東京」では,18年前から熱源の運転管理やエネルギー消費量の実績評価に「BEMS」を導入・活用してきた。運用開始直後と比べて電力消費量が約29%削減されたという。
国内初の47階建て超高層ホテルとして,1971年に新宿副都心に開業した京王プラザホテル。当社は本館建設以来,南館の建設,各種リニューアル工事を手掛けている。その本館低層部屋上に,庭園とプールで構成された新しい癒しの空間が誕生した。このスペースは,客室や周囲の高層ビルから眺められる,都市の共有財産を意識した坪庭的景観を創出している。
約1,000m2におよぶ緑化部分には,打ち水効果があり保水性に優れたリサイクル平板床と,薄層緑化工法(パレット工法)を採用し,ビル風に強く剪定不要の常緑種タマリュウを植栽した。一方,飲食店舗の屋外部分には枯山水の和風庭園を配し,四季折々の景色を楽しむ空間を創り出した。人々に安らぎを与えるこの空間には,ヒートアイランドの抑制効果があることも実証されている。
緑豊かな新潟県魚沼の地に広がる当間(あてま)高原。「ベルナティオ」は,東京電力を主体に当社ほかが参画する第三セクターが運営するリゾートホテルである。
ここの大きな特徴は,自然との共生をホテルのサービスに取り込んでいる点だ。510haもの敷地には,バードウォッチングや昆虫観察などを楽しむ散策路,満天の星を愛でる天文台など,自然を保全しながら,それを生かした数々のアクティビティを創り出している。当間の自然を体験学習できる東京電力自然学校「ポポラ」も家族参加型の豊富なプログラムで人気を博す。この夏には,安藤忠雄氏設計による自然体験活動の拠点「森のホール」「水辺のホール」も誕生し,さらに充実したサービスが期待される。
オープン前年の1995年からプロジェクトに携り,現在は,当社開発事業本部から当リゾート東京営業所に出向し,収益向上施策の検討,営業戦略の立案,ホテル運営支援業務を担当しています。
鹿島のハード・ソフトの総合力を結集したこのリゾートで,一人でも多くの方へ当間の里山の魅力,自然と人との共生,感動と出会いを提供したいと励んできました。中でも,開業当初,開発事業本部と環境本部が中心となって立ち上げた自然プログラムが,思い出に残る仕事です。小さな会議室を展示スペースに,地元の方々と一緒にスタートした自然体験活動は,東京電力様の協力・支援のもと進化を遂げ,当間高原リゾートの大きな魅力のひとつに成長しました。
「当間で命の洗濯をさせてもらっています」,「当間のブナ林の朝の匂いが大好き!」。自然学校で出会うお客様からの嬉しい言葉と笑顔が,いまも私の原動力となっています。