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安心できる住宅を

(仮称)うぐいす住宅建替計画新築工事

JR渋谷駅から徒歩7分,東急東横線代官山駅から徒歩8分。
渋谷と代官山の中間に位置し,なだらかな丘が広がる東京都渋谷区鶯谷町一帯は,
都心にありながらも緑深い閑静な住宅街だ。この地にとけこんで50年という「うぐいす住宅」も,
更新時期を迎え,現在,建替え工事が行われている。コンセプトは「安心の提供」。
工事は仕上げ段階に入っている。

図:なだらかな丘の上に建ち並ぶ「センチュリーフォレスト」(完成予想パース)

なだらかな丘の上に建ち並ぶ「センチュリーフォレスト」(完成予想パース)

地図

図:完成予想パース

完成予想パース

工事概要

(仮称)うぐいす住宅建替計画新築工事

場所:
東京都渋谷区
発注者:
当社開発事業本部
設計:
当社建築設計本部
監理:
当社東京建築支店品質監理部
用途:
共同住宅
規模:
RC造(免震構造)
A,C〜F棟—B2,5F/B棟—B3,5F
総住戸数244戸 総延べ32,094m2
工期:
2009年8月〜2011年7月

(東京建築支店施工)

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事例の少ない建替え工事

昭和30年代から,都心部を中心に本格的な建設がはじまった分譲マンション。現在では全国に500万戸以上が供給され,1,400万人が生活している。その中で,耐震性能不足や老朽化で更新時期を迎えているものは100万戸に上るといわれ,大規模修繕や建替えなどの対策が重要な課題になっている。

「(仮称)うぐいす住宅建替計画新築工事」は,5棟148戸の集合住宅「うぐいす住宅」を解体し,販売住戸を含む6棟244戸の低層マンション「センチュリーフォレスト」を建設する建替え事業である。

計画時,うぐいす住宅には豊かな緑が残っており,その緑が失われることを惜しむ声は社内でも少なくなかった。

「そんな中で“機能の更新と住環境の継承”が設計コンセプトになった」と話すのは,設計を担当する建築設計本部生産設計統括グループの中山徹グループリーダー。免震装置や最新の住宅設備を備えながら,敷地中央部に建物を寄せて樹木の配置スペースを確保。緑豊かな住環境の継承に努めた。

2010年4月現在の分譲マンション建替え事例は,全国でわずか149件。行政も良質な住宅ストックの維持・再生を目的に施策を打ち出しており,優遇制度が用意されていることも多い。この地域は第2種低層住居専用地域。12mの建物高さ制限が設けられているが,優遇制度の適用により,約18mまで制限が緩和された。

写真:中央に並ぶ解体前のうぐいす住宅。1958年に完成した集合住宅の先駆け

中央に並ぶ解体前のうぐいす住宅。1958年に完成した集合住宅の先駆け

写真:工事現場現況。周囲にも緑が多い

工事現場現況。周囲にも緑が多い

写真:中山徹グループリーダー

中山徹グループリーダー

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「安心」できる居住空間

「安心の提供」をモットーに掲げ,現場を統括しているのが小林克成所長。数多くのマンション建設工事に携わってきたエキスパートである。「非常に安定した地盤上に免震構造が採用されている。免震性能は申し分ない」と地震への備えに自信をもつ。

免震構造は,地面と建物の間に免震装置を設置し,“揺れを逃がす”構造。建物の損壊はもちろん,家具の転倒なども軽減できる。「毎日の生活の場だからこそ,住宅は安心できる空間でなければならない」と小林所長はいう。

「安心」はエンドユーザーだけに向けたものではない。「近隣住民の皆様に安心して工事を見守って頂きたい。我々の大きな責任です」と小林所長。閑静な住宅街というロケーションの中,近隣住民に対しても最大限の配慮を払っている。

敷地周辺道路の幅員は狭く,付近には小学校や幼稚園がある。基礎工事で掘削・搬出される土量は約8万m3で,ダンプ台数に換算するとおよそ1万3,330台分。多い日には延べ200台のダンプが搬出を行い,工事用車両の往来は激しい。登校時間帯の通学路通行禁止を徹底し,周辺道路にも最大18名の交通誘導員を配置している。

また,近隣住戸が隣接する敷地境界付近では,騒音・振動の一層の軽減を図った。中庭の施工を先延ばしにし,仮設ヤードとして利用。ポンプ車を配置してコンクリート打設を行うなど,境界付近で重機を極力使用しない工夫を凝らしている。

写真:免震装置

免震装置

写真:免震階。免震装置で建物が支えられている

免震階。
免震装置で建物が支えられている

写真:免震構造のイメージモデル

免震構造のイメージモデル

写真:小林克成所長

小林克成所長

写真:中庭部分からブームを伸ばしコンクリートを打設。周囲の躯体により, 敷地外への騒音・振動が低減する効果も

中庭部分からブームを伸ばしコンクリートを打設。周囲の躯体により, 敷地外への騒音・振動が低減する効果も

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設計施工で綿密な施工計画

この工事は当社が設計と施工を担当している。中庭に重機を配置できたのは,これによるところが大きい。設計期間と並行して綿密な施工計画を立てることができたのだ。「中庭に重機が載ることを見越し,補強前提で計画を立てた」と土工事・躯体工事の責任者である中澤政紀工事課長代理は振り返る。

工事の大きな特徴が,敷地内9mの高低差と,各棟で異なる掘削深度だ。「計画当初から山留工事が一番難しいと感じていた」と中澤工事課長代理。施工計画を立てる中で,大胆な計画変更を行った。

当初の山留計画では,三段の水平切梁を構築する予定であったが,切梁を受けるために一部地山を保持しておかなければならない。支保工足場の設置が必要になり,危険な高所作業も発生する。打開策として採用したのが,先行床工法だった。

写真:中澤政紀工事課長代理

中澤政紀工事課長代理

写真:先行床の施工状況。コンクリート打設後に,地下の掘削を行っていく

先行床の施工状況。
コンクリート打設後に,地下の掘削を行っていく

図:先行床を採用すると

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先行床工法と構真柱

先行床工法は,本掘削の前に床を構築する工法。床自体が切梁の役目を果たし,作業床としても利用できる。水平切梁が不要になることで,地山を仮設として残す必要がなく,掘削効率も上がった。高所作業を減らすことにも成功している。

先行床工法を行うためには,床を支える柱が必要になる。構真柱と呼ばれるこの柱は,現場造成杭であれば杭に埋め込んで構築するのが一般的だ。しかし,現場では搬入車両数の削減を図るためコンクリート既製杭を採用しており,埋め込むことができない。「杭と構真柱の接続が課題だった」と中澤工事課長代理。杭上端部に金物を溶接し,H鋼をボルト接続する工法を検討したが,既存の金物には適当な形状のものがない。建築設計本部構造設計統括グループと協議を重ね,現場独自の「キの字型」プレートを特注製作して乗り切った。

写真:先行床の下を掘削。構真柱が床を支えている

先行床の下を掘削。構真柱が床を支えている

写真:杭と構真柱をつなぐ「キの字型プレート」

杭と構真柱をつなぐ「キの字型プレート」

ずっと住みたい住宅

現在,内装などの仕上げ工事が進められ,既に販売住戸のモデルルームもオープンしている。内装のコンセプトは“デザインとしても寿命が長い”飽きのこないシンプルなデザイン。モデルルームでの注目度・評価は高い。「うなって帰る同業者もいます」と仕上げ工事を指揮する巻口雄工事課長はいう。

244戸の住戸に対し,部屋のタイプは基本で約60タイプ。色などの違いを含めると100タイプ以上にもなる。多様化した家族構成とライフスタイルに応じて,プラン選択の幅が増えているのである。

時代を経るごとに新しい技術や素材が開発され,人々の価値観が変化してニーズは多様化していく。それでも,居住者が住宅に対し「安心」を求めることに変わりはない。巻口工事課長はいう。「確かにニーズの変化は感じる。それでも,いいものは評価される。愛されてきた住宅の建替えだからこそ,同様に安心して末永く住める住宅,ずっと住みたいと思える住宅をつくりたい」。

工事は2011年7月に完成。10月末に「センチュリーフォレスト」がオープンする予定である。

写真:巻口雄工事課長

巻口雄工事課長

写真:モデルルーム・リビングダイニング

モデルルーム・リビングダイニング

写真:モデルルーム・キッチン

モデルルーム・キッチン

写真:現場職員の集合写真

現場職員の集合写真

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