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調査

余震が続くなか,二次災害を防ぐためにも建造物の耐震性・安全性の確認は急務である。
設計・施工・営業の各担当者がチームを組み,調査を急いだ。

発災した3月11日から東北支店管内で被災調査が開始された。土木,建築,設計技術者が中心になって調査を行った。施工中の物件や当社が手がけた竣工物件のほか,調査の要請を受けたもの全て被災調査を実施。わずか2週間で約1,190件の調査を完了している。被災調査は目視を中心に行われ,この段階で耐震性能不足が疑われる場合には退避の助言を行った。必要に応じて二次調査も行っている。

土木構造物では約260件の調査を行い,ダム・トンネル・橋梁などの健全性を確認した。特に,道路などの交通インフラでは被害が出ているものも多い。建築物では,約930件の調査が完了。竣工したものも含め,耐震性能に大きな問題があるものが約20件。外部足場の架設など大規模改修が必要なものが約60件確認された。順次復旧工事を行っている。

写真:被災調査に向かう社員

被災調査に向かう社員

写真:津波の水位を計測する

津波の水位を計測する

写真:クラックの様子を確認

クラックの様子を確認

改ページ

復旧

調査の結果に基づき,被災度・緊急度などを考慮しながら復旧工事に着手する。
発災直後には行政などから要請を受け,交通インフラの応急復旧工事も行われた。
ここでは,発災から6日で着手した道路復旧の様子を紹介する。

地図

宮城県石巻市牡鹿町には山間に漁村集落が点在している。各集落は壊滅状態。道路は津波で寸断され,避難した住民に物資が届かない状況に陥った。乗用車は辛うじて迂回しながら通行できたが,大型車両は通行することができなかった。県の要請で物資運搬ルートを確保するために行われたのが,県道2号石巻鮎川線の応急復旧工事だった。

3月16日に現地入りした社員らが調査を行った結果,損壊箇所は20ヵ所程度。工事総延長は約14kmにのぼった。道路を塞いだがれきの撤去や橋の復旧を行い,物資を運搬する大型車両が通行できるように砕石敷きで整える。翌日から21日までの工程で,そのまま工事を開始した。

乗り込んだのは4名の社員と仙台,山形の作業員8名に,現地の作業員が10名ほど加わった。この人員を土木復旧班とがれき撤去班の2班に編成し,工事が進められた。土木復旧班を率いたのが東北支店土木部生産計画グループの水島宣勝課長。担当を強く志願した。8年前に万石浦トンネル工事(宮城県牡鹿郡女川町)に従事し,この地域をよく知っている。被害状況の情報がほとんどないなか,必要最低限の資機材と物資を携えて工事に臨んだ。

改ページ

写真:雪が降るなかで行われるがれきの撤去。車両が通行できるように,道路上のがれきを重機で道路脇に撤去していく

雪が降るなかで行われるがれきの撤去。車両が通行できるように,道路上のがれきを重機で道路脇に撤去していく

写真:水島課長が工事の様子を振り返ってくれた

水島課長が工事の様子を振り返ってくれた

現地では,電気・水道・通信など一切のインフラが断絶していた。工事に必要な砕石工場も被災し,製品の半分は流失していた。残った砕石から使用できるものを工場で選定してもらい,ダンプで往復2時間半かけて運び込む。砕石工場との連絡手段は伝書方式。運転手にメモを渡し,砕石の種類や数量,資材在庫の確認などを伝えた。「違う資材が入ってくることもあった」と水島課長。通信インフラの重要性を思い返したという。

工事自体も容易ではない。橋がかかっていた部分の復旧では海水が入りこんで波が打ち寄せるため,粒度の小さな通常の砕石は波で流されてしまう。数十cmの大きなものを下段に入れて水を通すようにし,次第に粒度を小さくしていった。頼る人も資料もない。情報が遮断された状況下で,水島課長は土木技術者の知恵と経験で施工にあたった。

現地作業員は被災していた。家族の捜索を行うものや炊き出しに並ぶものもいる。現場では,作業を早めに切り上げる配慮を行っていた。現地に乗り込んだ一行の6日間の食事は,持参した少量の水と非常食。重機,資機材が不足しているため,人力作業が多くなる。食糧事情が悪いなか皆が体力を消耗させていく。雪が舞った日もあった。厳しい条件だったが,全員が作業に没頭していたと水島課長は振り返る。「自分の街を自分の手で復旧したい。現地作業員さんたちの思いが現場にあふれていた」。

工事は,予定通り21日に完了した。事業者に完了報告を行い,道路が開放されたのは22日の朝9時だった。

写真:津波でさらわれた箇所を復旧。一刻も早い水道復旧のために, 使えそうな水道管を防護しながら作業を進める

津波でさらわれた箇所を復旧。一刻も早い水道復旧のために, 使えそうな水道管を防護しながら作業を進める

写真:応急復旧が完了した道路

応急復旧が完了した道路

写真:作業にあたったがれき撤去班のメンバー

作業にあたったがれき撤去班のメンバー

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