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東北支店の1日

発災から4日目の3月15日,広報室員が取材のため現地に向かう。
夜8時,本社から支援物資輸送トラックの助手席に乗り込んだ。
仙台市にある支店までは約370km。雪の東北道を抜け,
支店前に到着した頃には,翌日午前3時を過ぎていた。
まだ,支店ビルには明かりが灯っていた。

支店ビルのソファで仮眠をとって起きると,前日の雪は止んでいた。8時頃,「物資搬入を行います」と館内放送が流れ,支店ビルの入口に各部署から 30名ほどの社員が集まってくる。東北支店の朝は物資搬入からはじまった。

社員らは自然と列をつくり,バケツリレーの要領で段ボール箱を搬入していく。「次は水です」。トラックから荷を降ろす社員から声がかかると,リレーの列は水の保管場所に向けて並びかわる。「それは2階に!」。指示を受けた社員が段ボール箱を抱えて階段を駆け上がっていく。発災から5日,支店ビルでは既に電気復旧していた。3台のうち2台のエレベータは稼働していたが,階段のほうが早い。上下階への移動には主に階段が使われていた。

物資の搬入を脇目に,慌ただしく人が出入りしていく。復旧工事の現場に出かける社員がヘルメットをかぶりながら小走りで階段を下りてくる。「カンパンと水をくれ!発電機は持っていってもいいのか!」。すぐに担当者が駆けつけ,カンパンと水を段ボール箱に詰めて渡す。同時に,発電機の中に入っていたガソリンの必要分だけを残し,余分なガソリンを携行缶に移し替えてから,発電機を車に積んだ。この日,支店全体で調達できたガソリンは100リットルあまり。調査・復旧に向かう社用車に数リットルずつ補給することでガソリン不足を凌いでいた。現場に向かうための貴重な燃料を少しでも節約する,誰にいわれるわけでもなく社員一人ひとりが考えながら業務にあたっていた。

「毎日が綱渡りだ」と物資管理を行う管理部購買・広報グループの貝沼光治課長はいう。燃料や資機材が不足し,大きな規模の余震も毎日のように起きていた。いつ支店の業務全体が止まってもおかしくない状態に,担当者はできることを精いっぱいやっているのだという。日中は被災調査・復旧工事を行っているため,営業部,土木部,建築部,建築設計部と各フロアを覗いても,あまり人がいない。工事を一時中断している現場も多く,現場社員も調査や復旧の作業に勤しんでいた。女性社員は通常業務に加えて食事の用意も行い,割り箸や紙皿など数少ない物資を無駄にしないよう工夫を凝らしている。まさに支店の総力を挙げ,非常事態に対応していた。

写真:午前3時, 支店ビルには明かりが灯っていた

午前3時, 支店ビルには明かりが灯っていた

写真:ガソリンを節約

ガソリンを節約

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写真:社員が手渡しで物資を搬入していく

社員が手渡しで物資を搬入していく

写真:現場に向かう社員

現場に向かう社員

写真:割り箸や紙コップは洗って再利用

割り箸や紙コップは洗って再利用

写真:仙台市内中心部でも片付け作業が遅れていた

仙台市内中心部でも片付け作業が遅れていた

写真:日用品購入に並ぶ人たち。スーパーマーケットはまだ先

日用品購入に並ぶ人たち。スーパーマーケットはまだ先

仙台市中心部の状況を確認するため,支店を出て周辺を歩いた。一見したところ震災の影響を受けていないようにも見える。だが,ところどころ道路が陥没し,地震で壁が歩道に崩れ落ちたところではコンクリート片が放置され,カラーコーンで立入り禁止措置がとられているだけだった。ほとんどの店舗は営業しておらず,開店しているスーパーマーケットには,1kmほどの行列ができていた。燃料不足のため,通行車両は少ない。頻繁に通り過ぎていくのは,自衛隊や消防,インフラ復旧支援の車両。他県からの支援車両が多く,被災地だということを思い出させる。

支店では,夕方になると各部署でその日の業務報告が行われ,18時から支店震災対策会議がはじまる。会議には役職に関わらず誰もが自由に参加できる。幹部が座るテーブルを囲むように社員が詰めかけていた。進行役は赤沼支店長。燃料や資材調達状況の説明があり,現地調査結果や復旧工事の様子が報告されていく。会議の途中,「できない理由を探すな!どうすればできるか考えてやるんだ!頑張れ!」「1人で無理なら何人でもサポートをつける!」と赤沼支店長から叱咤激励が飛ぶ。一方で,家族の世話などで出勤できない社員には,「家族のことが最優先。仕事はみんなでカバーしよう」と気遣いを見せる。各地の被災状況や物資の市況など,活発な報告が行われ,自由に意見が交わされていた。

会議が終わると社員は残務を整理し,帰宅していく。1日が終わろうとしていた。

「あっという間だった」と発災からの5日間を振り返る貝沼課長。地震発生から停電や通信網断絶,物資不足などに見舞われた。経験したことのない事態のなか,社員たちは無我夢中で業務を進めてきた。その活動を全国からの支援が支える。貝沼課長はいう。「本当にありがたい。この思いを,仕事にぶつけていきたい」。

写真:震災対策会議の様子。幹部を囲むように社員が陣取る

震災対策会議の様子。幹部を囲むように社員が陣取る

写真:物資管理を担当する貝沼課長

物資管理を担当する貝沼課長

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