軟弱地盤の表層安定処理
「パレスシート工法®」
格子状補強枠を有するシートによる表層安定処理技術
軟弱地盤上にジオテキスタイルなどを敷設し覆土する従来のシート工法では、シートの剛性が小さいため、覆土厚の偏りや施工機械の重量により不同沈下が誘発されやすく、シートが破断して一瞬のうちに覆土が乱されてしまうことも少なくありません。そこでシートの剛性不足を補うために、竹材を格子状に敷設する竹枠工や、表層固化処理工が併用されてきました。
パレスシート工法は、竹枠工に着想を得たもので、軟弱地盤上にシートとホース状織物(ジャケット)を敷設した後、ジャケットに流動固化材を注入して補強枠を形成し、シートに剛性を付与する新しい表層処理工法です。現場への運搬・敷設作業が簡易であり、注入完了後1~2日で覆土が可能になります。
特許登録済
平成29年度地盤工学会 関東支部賞 技術賞
2005年 国際ジオシンセティックス学会日本支部 技術賞
- キーワード
- パレスシート、表層安定処理、支持力対策
構造・補強効果
パレスシート工法はN値0~3程度の軟弱地盤を対象とした表層安定処理工法です。
その構造は格子状に組んだホース状繊維材であるジャケットとシートで構成され、ジャケット内に早強性の流動固化材(モルタル)を注入することで補強枠を形成します。ジャケットの引張抵抗とモルタルの圧縮抵抗を兼ね備えた補強枠の高い曲げ剛性により、覆土作業に伴う局所荷重の分散化が図られ、支持力の増大効果や不同沈下の抑制効果が得られます。
最近では、セメント安定処理に比べて環境負荷や撤去処理費が低く、撤去後も植生等の早期回復が可能といった利点があることから、仮設道路や軌道における路床改良・路盤構築への適用事例が増えています。
特長・メリットココがポイント
不同沈下の抑制
実規模の試験施工を実施し、パレスシートで補強した地盤の支持力を評価しました。
- 従来シートに比較して格子ジャケットを有するパレスシートのほうが大幅に不同沈下量を抑制できることが確認されました。
- ジャケットが変形に抵抗するため荷重増加に従う沈下量の増分も少ないことが分かります。
工法選定の迅速化
実規模の試験施工結果に基づいた数値計算によって、パレスシートの設計用ノモグラム(原地盤のN値に応じた格子間隔の決定)を作成しています。他工法と比較しながら最適な工法を、迅速に選定できます。
- 原地盤のN値をパラメータとしてパレスシートで補強した地盤の支持力の指標である地盤反力係数K30を算定できます。
- ノモグラムから、要求品質に合わせて格子間隔や砕石層厚といったパレスシートの基本仕様を設定することができます。
設計照査が可能な詳細解析ツール
より軟弱な地盤で、より大きな荷重に対するジャケットの補強効果を確認するための解析手法を整備しています。特に重要な構造物や対策仕様が複雑な場合において、より精度良く設計照査することができます。
- N値が0~1の原地盤で生じるような大変形に対応する弾塑性解析技術を開発し、室内模型実験で解析手法の有効性を検証しています。
- 本手法を200t級大型クレーンのアウトリガーの安定性評価に関する詳細設計に適用し、有効性を確認しています。
適用実績
京成電鉄押上線(押上駅・八広駅間)の
立体交差仮設軌道路床改良
場所:東京都墨田区
竣工年:2012年3月
発注者:京成電鉄
規模:パレスシート施工面積960m3
石神井公園駅付近高架複々線化
200tクレーン基礎地盤改良
場所:東京都練馬区
竣工年:2013年5月
発注者:西武鉄道
規模:パレスシート施工面積1,380m3
学会論文発表実績
- 「シート工法を用いた軟弱地盤表層処理の支持力評価」,第40回地盤工学研究発表会,2005年
- 「”碁盤の目”の棋譜 ─格子状補強枠を有するシート工法の開発軌跡─」,土と基礎,Vol.56,No.2,2008年
CSドレーン工法
(Control System for Prefabricated Drain)
高精度な施工管理が可能なプラスチックドレーン工法
CSドレーン工法は、地盤改良工法として広く利用されているプラスチックドレーンの施工において、地中のドレーン材の打設位置を高精度に検知・把握できる施工管理システムです。
ドレーン材は所定の深度に残置することが重要ですが、これまで地中のドレーン材の打設位置を高精度に把握することは困難でした。CSドレーン工法では、打設管に感知器(センサ)を、ドレーン材に被感知材を取り付け、打設管の引き抜き時にセンサによってドレーン材の位置・設置状況を地上の管理装置で検知・把握することができます。なお、CSドレーン工法は、財団法人 国土開発技術研究センターの一般土木工法認定技術です。
特許登録済
- キーワード
- プラスチックドレーン工法、ペーパードレーン工法、共上り、施工管理
CSドレーン工法の構成
CSドレーン工法は、被感知材付きドレーン材、感知器(センサ)、地上部の管理装置から構成されています。打設管の先端部にセンサを、ドレーン材には特殊金属の被感知材を内蔵させ、所定の深度まで打ち込んだ後、打設管の引き抜き時にセンサによって被感知材付きドレーン材の位置・設置状況を検知します。設置状況は管理装置に表示すると共にリアルタイムにデータが保存されます。保存されたデータは工事事務所のパソコンで迅速に日報集計することができます。
特長・メリットココがポイント
残置深度の確実な把握
打設管先端部に感知装置を内蔵し、地中におけるドレーン材の残置深度を正確に把握できます。
修正施工が可能
ドレーン材が破断や共上りを起こした場合、警報信号によってオペレータに知らせ、早期に修正施工が行えます。
共上りの検知
ドレーン材の共上り量とその発生深度を的確に検知し、管理装置のモニターで容易に確認することができます。
自動記録機能
管理装置によって、ドレーン材の地中残置深度、打設数量および打設時間が即時に記録され、打設中の施工管理が容易に行えます。
データ記憶装置
USBメモリを介してデータをパソコンに取り込み打設集計表を作成できます。
リアルタイムでわかる深度の軌跡
打設管先端及びドレーン材先端の軌跡をリアルタイムで管理画面に表示します。打設管の軌跡は赤色で表示し、材料先端の軌跡は引抜開始後から緑色で表示します。共上りが発生すると材料先端の軌跡は打設管先端の軌跡に連動して上昇します。
適用実績
東京国際空港(羽田空港)沖合展開事業
場所:東京都大田区
竣工年:1993年6月
発注者:運輸省第二港湾建設局(現国土交通省関東地方整備局)
規模:1,430.5万m
北海道新幹線函館総合車両基地
場所:北海道北斗市・亀田郡
竣工年:2012年8月
発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構
首都圏中央連絡自動車道
場所:千葉県茂原市
竣工年:2010年12月
発注者:NEXCO東日本関東支社
規模:7.3万m
学会論文発表実績
- 「プラスチックドレーン工法の新しい施工管理システム」,基礎工,1985年
- 「泥炭性軟弱地盤における試験盛土の施工事例とその評価」,地盤工学会北海道支部,技術報告集第50号,2010年
軟弱地盤の変形解析システム
軟弱地盤の沈下・変形挙動や安定性を精度よく予測し、
地盤改良工を合理的に設計
軟弱地盤での土木工事では、各種の地盤改良工がしばしば必要になります。地盤改良工を合理的に設計するためには、軟弱地盤の沈下・変形挙動や安定性を精度よく予測することが重要です。
本解析システムは羽田空港D滑走路工事で実績のある最新の地盤の構成モデルを導入した弾粘塑性変形・浸透流連成解析システムであり、地盤改良工の種類や改良範囲の違いによる地盤の変形や安定性を精度よく予測できるため、合理的な地盤改良工の設計が可能になります。また、地盤パラメータを観測データに基づいて逆解析する機能もあるので、軟弱地盤工事における観測施工(情報化施工)に活用でき、工事の安全性と合理性の向上に大きく貢献します。
- キーワード
- 軟弱地盤、地盤改良(工)、変形、沈下、変形・浸透流連成解析、弾粘塑性、関口・太田モデル、修正カムクレイモデル、逆解析
本解析システムに導入している最新・最先端の弾粘塑性構成モデル
本解析システムでは、従来から実績の多い「関口・太田モデル」や羽田D滑走路の設計で用いた「関口・太田モデル(修正カムクレイ型)」だけでなく、最新・最先端の弾粘塑性構成モデル(ECモデル等)も導入しています。本図は羽田D滑走路の桟橋-盛立接続部モデルを対象に本解析システムに導入している各種の弾粘塑性構成モデルによる地盤変形解析結果を比較した例です。特にECモデルを用いると同じ地盤沈下量に対して様々な水平変位状態を表現できるため、軟弱地盤工事における観測施工(情報化施工)による再現解析と予測解析の精度を飛躍的に高められます。
特長・メリットココがポイント
地盤改良工の合理化
本解析システムにより、地盤改良を考慮した上で軟弱地盤の変形・安定性が精度よく予測できるため、地盤改良工法の合理的な選定や設計に役立ちます。
軟弱地盤工事の安全性向上
本解析システムと施工中の観測データにより、現状と将来の地盤の変形・安定性挙動を精度よく予測評価できるため、軟弱地盤での観測施工(情報化施工)の重要なツールとなり、軟弱地盤工事の安全性向上に大いに役立ちます。
適用実績
羽田空港D滑走路
場所:東京都大田区
竣工年:2010年10月
発注者:国土交通省関東地方整備局
目的:接続部の設計解析、並びに施工時シミュレーション
北海道新幹線函館総合車両基地路盤
場所:北海道亀田郡
竣工年:2012年8月
発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構
目的:プレロード仕様決定のためのプレロード試験盛土シミュレーション
学会論文発表実績
- 「地盤変形の影響を考慮した鋼管矢板井筒護岸の設計(その3) ─弾・粘塑性解析による鋼管矢板井筒護岸の挙動─」,第42回地盤工学研究発表会,2007年7月
- 「羽田空港D滑走路埋立/桟橋接続部の鋼管矢板井筒護岸の挙動予測 ─その3 弾粘塑性FEM解析による護岸挙動の予測と施工への反映」,第45回地盤工学研究発表会,2010年8月
- 「弾粘塑性FEM解析による大規模護岸構造物の変形予測」,土木学会論文集C,2012年
軟弱地盤を重機走行可能な土壌に改質
「泥CURE®」
生態系に配慮した環境にやさしい改良材
軟弱地盤の改良には、これまで石灰やセメントなどの改良材が用いられてきました。これらは、固化性能が高い反面、改良材自体に重金属が含まれる場合があり、改質土が強アルカリを示す場合があります。改良土が強アルカリ性になると、有機物の分解によるアンモニアガスの発生や地盤中の自然由来重金属等の溶出、さらに水域に接する場所では、水生生物に悪影響を及ぼす恐れがあります。そこで、鹿島では固化性能と環境低負荷を両立した改良材「泥CURE(デイキュア)」を開発しました。泥CUREは重金属等を含有せず、改良土が水中に浸漬しても再泥化しません。また、改良土のpHは中性から弱アルカリ性となるため、石灰やセメントなどで起こるアンモニアガスの発生などのリスクを抑制できます。
特許登録済
- キーワード
- 固化、軟弱地盤、安定処理、低環境負荷
施工事例
岩手県宮古市で施工中の閉伊川災害復旧水門工事では、河床に軟弱な有機質粘土(コーン指数200kN/m2以下)が堆積しており、建設重機の走行が困難な状況でした。河床堆積物を場外搬出するためには多大なコストを要すること、また、トラフィカビリティ確保のためにセメント系固化材により地盤改良を行った場合、pHの上昇により閉伊川に生息するサケ、サクラマスなどの水生生物に悪影響を及ぼす可能性があることが課題でした。そこで、環境負荷の小さい泥CUREを用いて、河床の表層部(深さ約50cm)の改良を行い、車両や重機のトラフィカビリティの向上を図りました。事前の試験施工により泥CUREの添加量と改良強度を確認し、その結果をもとに本施工を実施しました。
本施工では①「泥CURE」を計量後に散布し、②ミキシングバケット仕様のバックホウで混合・撹拌し、24時間養生します。③養生後、改良土のコーン指数を測定し、建設重機が走行できる強度を確認しました。
閉伊川の河床堆積物の施工では泥CUREを100kg/m3添加して改良しました。その結果、改良前のコーン指数は115kN/m2でしたが改良直後には368 kN/m2、改良24時間後では646kN/m2になりました。これは、15t級の普通ブルドーザが走行できる強度に相当します。
特長・メリットココがポイント
強度・重金属不溶化・安全性
泥CUREは複数の無機材料を組み合わせた弱アルカリ性の材料で、有害な重金属等を含有していません。また、改良土は中性から弱アルカリ性になります。
- 24時間養生で建設重機が走行可能。
- 土壌中に含有する重金属類の不溶化。
- アンモニアガスなどの有害ガスの発生抑制。
水生生物への安全性も担保
河川に生息する水生生物の安全性を、ヤマメ(淡水魚)とマダイ(海水魚)を用いた魚類毒性試験で確認しました。
- 行動観察中の稚魚生存率は100%。
- 水域での生態系の影響は極めて低い。
再泥化しない
泥CUREで改良した土壌をダンプで運搬するなど、振動を与えても再泥化は起こりませんでした。
- 泥土区分(<200kN/m2)の原土を改良した後、ダンプで改良土を運搬した前後のコーン指数を測定した。その結果、運搬前後で再泥化することなく、223kN/m2(運搬前)→259kN/m2(運搬後)と、コーン指数に大きな変化はなかった。
適用実績
閉伊川災害復旧水門工事
場所:岩手県宮古市
適用工事期間:2016年7月
発注者:岩手県
規模:工事対象面積6,840m2
学会論文発表実績
- 「生態系に配慮した河床堆積物(軟弱地盤)の安定処理に関する検討」,第12回環境地盤工学シンポジウム,2017年
- 「生態系に配慮した改良材による河床堆積物(軟弱地盤)の安定処理」,土木学会,第72回年次学術講演会,2017年
草木類除去のための選別補助材
「泥DRY®」
高含水・高粘性土壌を低粘性・細粒状に改質し、草木類を除去
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故後の除染作業で発生した除去土壌等は、中間貯蔵施設内に保管されることから、有機物の分解に伴う盛土の不安定化を防止し、有機物の分解によるガスの発生を抑制することが重要です。そのためには、除去土壌から草木類を選別する必要がありますが、除去土壌の半分は農地などの高含水・高粘性土であり、土壌と草木類の選別は非常に困難です。そこで鹿島は、高含水・高粘性土壌を低粘性・細粒状に迅速に改質し、さらにpH中性の環境低負荷の選別補助材「泥DRY(デイドライ)」を開発しました。
また、本材料は、中間貯蔵施設に限らず一般工事における盛土や掘削土などからの草木類の選別にも活用できます。
特許登録済
平成29年度土木学会 環境賞
平成29年度地盤工学会 地盤環境賞
- キーワード
- 選別補助材、高含水・高粘性土、改質、低粘性、細粒状、中性
泥DRYの特性
材料:材料の90%以上が吸水性を有する天然鉱物であり、その他高分子材料などを配合。
改質原理:複数の材料の複合的な働きにより、土粒子周囲の自由水が急速に捕捉され、土粒子間の付着力が低下し、土粒子の小団粒化が促進される。
施工事例
【施工例1】中間貯蔵施設受入・分別施設での除去土壌の改質
①除去土壌の入った大型土のうを破袋します。
②重機により容器残渣を分別・除去します。
③土壌の含水比に応じてコンベア上で改質材(泥DRY)を自動で添加します。
④添加された土壌を改質機に投入し改質します。
⑤分別機により、改質されサラサラとなった土壌から、草木や石を取り除きます。
【施工例2】建設発生土の改質施工
①バックホウで高含水土を掘削します。
②泥DRYを20〜40kg/m3添加します。
③バックホウで数分間撹拌します。
④改質後の土壌はダンプトラックでの運搬が可能となりました。
特長・メリットココがポイント
環境に配慮した材料、かつ迅速に施工が可能
- 水和反応等がなく、養生時間はほぼ不要です。
- 改質後の土壌のpHは中性域に保持されるため、重金属等の溶出が促進されず、有害ガスが発生しません。
埋立盛土として活用可能
泥DRYを添加した土壌(畑、水田)の盛土としての施工性や安定性を確認するため、建設重機の走行性能(トラフィカビリティ)の評価を行いました。
- 原土の状態では重機走行は不可能でしたが、泥DRYの改質により締固め性能が向上し、転圧後、ブルドーザ(32t級)の走行が可能となりました。
適用実績
大熊1工区中間貯蔵施設受入・分別施設
場所:福島県双葉郡大熊町
適用工事期間:2018年7月~
発注者:環境省
横浜環状南線公田笠間トンネル
調整池造成
場所:神奈川県横浜市
適用工事期間:2017年6月~7月
発注者:東日本高速道路
規模:対象土壌690m3
学会論文発表実績
- 「無機改質材を用いた除去土壌の改質 その1 ─改質効果と草木選別─」,土木学会,第70回年次学術講演会,2016年
- 「無機系改質材を用いた除去土壌の改質 その2 ─土壌の性状と改質効果の関係─」,土木学会,第70回年次学術講演会,2016年
- 「無機改質材を用いた除去土壌の改質 その3 ─盛土材料としての性能評価─」,土木学会,第70回年次学術講演会,2016年
- 「草木類選別補助材の適用性検討 ─細粒分含有率と含水率が選別能力に与える影響─」,第22回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会,2016年
- 「無機及び高分子系材料で構成される中性の改質材を用いた、高含水・高粘性除去土壌の改質、草木選別に関する実証」,第22回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会,2016年