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函館総合車両基地

北海道新幹線の車両には,JR 東日本の「E5系」とJR 北海道の「H5系」が使用されている。H5系は,緑の車体にラベンダーをイメージした紫色のラインが入ったもので,北海道新幹線の開業で新たに運行を開始した。車両名は「はやぶさ」と「はやて」。臨時便を除き1日13往復が運行されている。

この新幹線の安全で快適な運行をサポートするのが,函館総合車両基地である。総合管理棟や各検査庫,信通機器室,変電所,車両洗浄などの施設のほか,台車検査,全般検査を行う工場設備を有し,新幹線の留置や日常的なメンテナンスから車両を分解・修理して新車状態にする大規模な検査・修繕・解体までを行うことができる。東京ドーム7.5個分にあたる約35万m2の敷地に大小31棟の建物が整備され,全国5番目,北海道唯一の新幹線総合車両基地となった。当社はこのうち土木・建築工事を担当した。

写真:函館総合車両基地

広大な敷地は,もともと農地が広がる軟弱地盤である。工事は地盤沈下対策を施して造成を行い,基地の“土台”をつくることからはじまった。土木JV工事を率いた宮嶋澄夫所長が現場に乗り込んだのは,8年ほど前のことだ。「工事着手前に住民説明会を行いましたが,反対の声が上がることもなく,地元は歓迎ムード一色。住民の方々に協力頂きながら工事を進めることができました」。

工事は試験盛土を行って沈下の特性や地盤変位を観測するところからはじまり,ドレーンを打ち込んで地盤改良を行いながら敷地全体に50万m3の造成をしていく。北海道特有の“泥炭”の処理に悩まされながら,現場は約4年かけて地盤改良と造成を終えた。土木工事では,その後さらに4年をかけて軌道施設の基礎杭打設や工作物の構築なども行っている。

写真:宮嶋澄夫所長

宮嶋澄夫所長

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一方,建築工事を当社JVが受注したのは2012年3月だった。しかし本格着工にこぎつけられたのは2012年7月。2012年6月に北海道新幹線の札幌延伸が決定し,基地全体の計画が大幅に変わったからだ。建築工事を指揮してきた難波勝所長はいう。「設計が概ね固まったのが着工から10ヵ月後。できるところから進めていきましたが,通常の工事とはすべてにおいて規模が異なる。苦労しました」。大規模な工事のなかでも驚くべきは杭だ。「建築の杭だけでも2,800本以上。延べ長さが約83kmで山手線2.5周分にもなる。この仕事を40年やっているが考えられない規模だ」(難波所長)。土木工事を含めると,その数は7,600本におよぶ。

写真:難波勝所長

難波勝所長

31棟の建屋があるため工事が途切れることはない。杭打ちをしている傍ら塗装仕上げをしている建屋もある。35万m2という敷地の広さも現場管理の忙しさに拍車をかけ,毎日のパトロールも現場を一回りするだけで2時間を要した。そうしたなか,工期途中で開業日が決定し,現場にはさらなる工期短縮が求められた。鉄道関連施設では軌道・電気・機械などの作業が混在するため,建物周辺も含めた施工順序の調整が全体工期に影響する。各種工事間で垣根のない協力体制を構築し,作業間調整に取り組んだ。特に作業の中心となる土木・建築を当社JVが担当していたことは作業調整に大きな効果があった。毎日,土建の職員が膝を突き合わせて打合せを行うことで,全体を見据えて工程をコントロールできたからだ。もちろん,お互いにバックアップしあえる安心感もあった。

写真:杭打ち全景

杭打ち全景

写真:工事は様々な作業が錯綜しながら行われた

工事は様々な作業が錯綜しながら行われた

写真:仕業交番検査庫。基地では最大4編成の検査を行うことができる

仕業交番検査庫。基地では最大4編成の検査を行うことができる

写真:台車検修場

台車検修場

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写真:函館総合車両基地

工事は進み,作業員不足や豪雪の影響などの苦難を乗り越え,開業を迎えることができた。「8年は長いようであっという間だった」という宮嶋所長。工事を終えて転勤が決まり,函館市内に家族を残して東京に単身赴任する。週末は自らが携わった北海道新幹線で函館に帰宅することになるという。「新幹線という国家プロジェクトに携わることができたことは,自分にとって大きな財産になりました」。

一方で難波所長は,道民の一人として将来に期待を込めた。「開業を果たして,新幹線が津軽海峡を渡った。それだけでも素晴らしいこと。早く札幌まで延伸してほしい」。

【工事概要】
北海道新幹線 函館総合車両基地(土木)

場所:
北海道七飯町,北斗市
発注者:
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
設計:
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
規模:
造成面積約35万m2,造成土量約50万m3
プレロード工407,000m3
路盤工一式,仕業交番検査坑一式 他
工期:
2008年2月~2016年3月

(北海道支店JV施工)

 
北海道新幹線 函館総合車両基地(建築)

場所:
北海道七飯町,北斗市
発注者:
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
設計:
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
規模:
S・RC造 1F一部2F,
4F 仕業交番検査庫,
車体検修場,車体塗装場等31棟
総延べ約80,000m2
工期:
2012年3月~2016年6月

(北海道支店JV施工)

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