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ICT施工最前線 Ⅱ ICT建設機械による施工

衛星情報+(プラス)3D-CADでマシンをガイド

堤体盛立工事が進む大分川ダムのサイト。堤体を見渡すと,様々な種類の重機が混在しながら各々の作業を黙々と行う。この現場では,合わせて20台近い油圧ショベルとブルドーザに「マシンガイダンス(MG)」・「マシンコントロール(MC)」システムが搭載されている。これは,全地球衛星測位システム(GNSS)と3D-CADデータを利用し,目標物の位置や形を運転席のモニタで確認できるシステムだ。重機オペレータは,あらかじめシステムに入力された目標物データに基づきモニタに表示されるガイドに従うことにより,目標とする形状に掘削や整形を行うことができる。

従来のガイダンスなしでの堤体盛立工事では,設計通りの形状(出来形)になっているかを測量による丁張(ちょうはり)作業で繰り返し確認していた。このシステムがあれば,オペレータの技量差に関わらず均一な出来形を確保できる。重機の稼働効率も向上し,現場の丁張作業の約9割を削減。測量で人間が作業エリアに近づく頻度も激減することで,安全性も向上した。

MG・MCシステム

重機にGNSSと3D-CADシステムを搭載し,あらかじめシステムに入力された目標物データに基づき,MGはその目標物の位置や形を運転席モニタでガイダンスし,機械操作の一部を自動化したMCが操作を支援する。均一な出来形確保,測量作業の省略による機械稼働率の向上,測量時の作業エリアの侵入頻度激減による安全性の向上を実現。

写真:MG・MCシステム

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安全・生産性向上に有効なMG・MCシステム

写真:東 昭彦  工事部長(重機JV所長)

冨島建設
東 昭彦 工事部長(重機JV所長)

現在,重機JVの作業員約130人が工事に従事しています。当初,MG・MCシステム搭載のマシン導入には,オペレータから不安の声もありましたが,1日程度,現場で実技訓練を行うだけで操作可能なので好評です。今は熟練オペレータが担当していますが,今後は後輩への操作指導に期待しています。

私も実技訓練を受けましたが,操作性もよく作業効率が格段に上がります。オペレータの高齢化も進んでおり,急勾配な場所で命綱をつけての測量や,重機の乗降を繰り返し丁張との誤差を確認するといった作業が一切なくなり,安全性も向上しました。これに慣れると,MG・MCなしでは作業できませんね。

ダンプの運行・運搬情報をリアルタイム管理

大量な土砂の搬出入が行われるダム現場。工事最盛期には,1日延べ450台の大型ダンプをはじめとする工事車両がサイト内を走行する。当現場では,工事車両の運行・運搬情報を「GPS車両運行管理システム:スマートG-Safe®」で管理している。このシステムは,車両の運転席横にスマートフォンやタブレット端末を設置するだけで,GNSSによる工事車両のリアルタイムな位置情報を把握し,運行管理者がドライバーの運転状況を管理できる。走行中の速度監視・注意喚起をはじめ,山間部の狭隘な道路における大型工事車両同士のすれ違い管理も可能だ。また,当現場ではダンプの積載・運搬情報をクラウド上に蓄積し,「何を」「いつ」「どこへ」「どのくらい」運んだのかというトレーサビリティ管理も行っている。

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GPS車両運行管理システム:スマートG-Safe®

GNSSにより工事車両の運行管理を行うシステム。スマートフォンやタブレット端末を設置するだけで,運転中の速度監視・注意喚起はもとより,工事車両の位置情報の把握や運行管理者とドライバーの双方向通信が行える。クラウドにデータを蓄積すれば,積載物のトレーサビリティ管理も可能。

図版:CIM-設計照査・施工計画シミュレーション

図版:CIM-設計照査・施工計画シミュレーション

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次世代建設生産システム「A4CSEL®

写真:三浦 悟 プリンシパルリサーチャー

技術研究所
三浦 悟 プリンシパルリサーチャー

「土木現場の生産体系を大きく見直さなければ,劇的な生産性向上は図れません」。当社のICTに関わる研究開発を牽引する技術研究所の三浦悟プリンシパルリサーチャーはこう話す。「今後は自動化機械を核とした施工システムが生産性革命の鍵になる」。

三浦プリンシパルリサーチャーが率いる開発チームは,建設機械の自動化技術を核とした次世代の建設生産システム「A4CSEL:クワッドアクセル」を開発した。このシステムでは,人間がタブレット端末から作業指示を送ると機械が無人で自動運転して作業を行う。並行して複数台の機械を稼働させることも可能である。土木施工を担う“建設ロボットシステム”の誕生というわけだ。

2015年に「五ケ山ダム堤体建設工事」(福岡県筑紫郡那珂川町)のRCDコンクリート施工で,振動ローラとブルドーザ(コマツとの共同開発)の自動施工を実現している。大分川ダムの堤体盛立工事では,新たに自動ダンプトラックの導入試験を実施し,「運搬」と「荷下ろし」の自動化に成功。開発済みの自動ブルドーザのまき出しと整形,自動振動ローラによる転圧作業と併せた堤体盛立作業の一連の流れも確認した。

このシステムは,汎用の建設機械にGNSSやジャイロスコープ,レーザスキャナなどの計測機器および制御用PCを搭載することで自動運転を可能にしている。制御プログラムには,熟練オペレータの操作データを収集・分析し制御アルゴリズムに取り入れた。「機械が得意とする“繰返し作業”を自動化することに注目しました。このシステムの開発は自動建設機械を作ることだけではありません。機械が上手に作業する制御技術と,それとともに自動機械と施工・作業をつなぐ技術,すなわち自動化する作業を探し出す,自動化できる作業を増やすことが重要です。そのため,施工方法,作業手順などの生産体系を抜本的に見直すことが土木現場の工場化につながると考えています」。

A4CSELは今後,油圧ショベルなど適用機種を増やすとともに,「小石原川ダム本体建設工事」(福岡県朝倉市)では,各自動建設機械の本格運用を行い,自動化システムの完成を目指す。

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A4CSEL®クワッドアクセル

建設機械の自動化技術を核とした次世代建設生産システム。人間1人で複数の建設機械をコントロールし,機械が得意とする繰返し作業を自動化することを目指す。現在,自動ダンプトラックの運搬・荷下ろし,自動ブルドーザのまき出し・整形,自動振動ローラによる転圧(締固め)作業の自動化に成功。生産性向上への貢献が期待される。
※Automated/Autonomous/Advanced/Accelerated Construction system for Safety, Efficiency, and Liability

写真:無人で作業する重機たち。自動ダンプトラック(右)と自動ブルドーザ

無人で作業する重機たち。自動ダンプトラック(右)と自動ブルドーザ

写真:自動振動ローラとタブレット端末から指示出しをする人

自動振動ローラとタブレット端末から指示出しをする人

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