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TechnoFocus ~最新技術ニュース~

[2017年1月25日発表]
現場溶接施工の合理化に向け,溶接ロボットの適用を開始
グループ会社「鹿島クレス」でオペレータの育成も

建物の骨組みとなる柱や梁の鉄骨溶接は,構造性能に関わる重要な作業であり,溶接技能工が担っている。しかし,高度な技能が要求されることから,資格条件が厳しく,資格取得の機会も限定され,技能者の人数が限られるのが現状だ。今後は首都圏の大型再開発工事が本格化し,さらに溶接技能工が不足することが懸念されている。また,技能者の高齢化による後継者確保や技術伝承も課題の一つ。そこで当社は,横河ブリッジと共同で,造船業や橋梁工事に用いられていた「汎用可搬型溶接ロボット」を,建築現場で活用するための手法を開発した。

建築現場の溶接作業は,柱・梁が設置される各場所で行う必要があるため,軽量かつ移動が容易な溶接ロボットが求められる。メーカー,ファブリケータへのヒアリングや視察,複数の汎用可搬型溶接機による基礎実験などを重ね,多層盛溶接ロボット「石松」(MHIソリューションテクノロジーズ社製)を選定した。また,現場溶接特有の作業に柔軟かつ適切に対応する必要があり,鉄骨の建方精度に伴い発生する溶接部のずれ・ねじれ・段差などへの対応や,コラム(角型鋼管)柱・BOX柱のコーナー部の処理などが求められる。そのため,簡易試験体による要素試験,実施工を考慮した実物大試験体による実証試験を通じ,その解決方法を考案した。

写真:実物大鋼管コラム柱での実証試験

実物大鋼管コラム柱での実証試験

既に「(仮称)三菱電機(株)名古屋製作所 第二FA開発センター新築工事」(名古屋市東区)と「(仮称)銀座朝日ビル建替計画新築工事」(東京都中央区)に適用し,溶接終了後の外観検査ならびに超音波探傷検査において熟練溶接技能工と同等の結果となった。外観検査については,同等以上の良好な結果を確認している。

当社では,グループ会社で施工管理を行う「鹿島クレス」に,溶接事業部を発足,溶接ロボットを操作するオペレータを育成することにより,オペレータ数を確保していく方針である。これにより,操作技量の安定化,品質の向上を図ると共に,近く予想される溶接技能工不足や将来的な高齢化に対応していく。

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写真:多層盛溶接ロボット「石松」による施工状況。オペレータがロボットを操作して施工を行う

多層盛溶接ロボット「石松」による施工状況。オペレータがロボットを操作して施工を行う

写真:溶接後の状況。熟練溶接技能工と同等の良好な結果となった

溶接後の状況。熟練溶接技能工と同等の良好な結果となった

[2017年2月2日発表]
山岳トンネルの高速施工を実現する新たな削孔誘導システムを開発
唐丹(とうに)第3トンネルの月進記録達成に貢献

当社は演算工房と共同で,山岳トンネルの効率的かつ高速な施工を目的としたドリルジャンボの新しい削孔誘導システム「MOLEs(モールス)」を開発した。当社が施工中の「国道45号 唐丹第3トンネル工事」(岩手県釜石市)に初適用され,NATMによる掘削断面積110m2以上のトンネルで月進270mの達成に大きく貢献した。

山岳トンネル工事において火薬装填用の発破孔の削孔は正確な作業が求められる。的確な位置,角度,深さで削孔を行わないと計画通りに発破できず,工程に影響を与えるからだ。従来この作業はオペレータの経験に依存するところが大きいが,将来的には熟練作業員不足が懸念されている。近年ではICTの進歩に伴い削孔作業を支援するガイダンスソフトやフルオート削孔が可能なコンピュータジャンボが開発されているが,普及には至っていない。

今回開発した「MOLEs」は,演算工房が保有する削孔ガイダンスシステム「MoGraSS」に,当社独自の3Dスキャナ技術を加えたもの。これまで読み取れなかった切羽面の凹凸をスキャニングすることで,正確な孔位置と誘導ラインを算出できることが特徴だ。これらは,実切羽の映像に重ねてモニタにリアルタイムに映し出され,オペレータは誘導ラインに従いブームを合わせるだけでよく,特別な技術を必要としない。また,電気式のモーションセンサ類の機器が不要なため,振動や粉じんなどによる故障も少なく,汎用のドリルジャンボへの後付け設置も容易。

図版:切羽の凹凸を把握して削孔位置を算出する

切羽の凹凸を把握して削孔位置を算出する

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唐丹第3トンネル工事では,発破ごとの進行長が導入前と比較して約25%向上し,発破効率の向上効果が確認されている。

今後,複数の現場で同システムによる工期短縮と余掘りの低減効果について検証を行い,山岳トンネル工事の更なる合理化に取り組んでいく。

※MOLEs(モールス):Mograss Operate with Laser scanning Engine system

写真:ドリルジャンボに後付け設置されたMOLEs

ドリルジャンボに後付け設置されたMOLEs

図版:誘導あり・なしによる発破進行長と余掘りの違い

誘導あり・なしによる発破進行長と余掘りの違い

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