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KAJIMAダイジェスト

ICT information

当社は,ICT施工を核に生産性向上を図るために,積極的な研究・技術開発に取り組んでいる。
ICT施工に関わる,土木の各工種での注目技術や新たな取組みを紹介する。

CIM推進室・自動化施工推進室が始動

当社は,ICTを積極的に推進するため,「CIM推進室」および「自動化施工推進室」を新設し,4月より本格活動をスタートさせた。

【CIM推進室】

土木工事へのCIMの普及・展開,運用支援を掌る専門部署として,土木管理本部土木技術部内に設置。後閑淳司室長を中心に土木・IT等11名のメンバーが,生産性向上を目的とする新たな土木の生産システムの構築を目指し,社内におけるCIMの活用・展開に向けた環境整備を行っていく。

当面の課題としては,新規入手した主要土木工事現場へのCIM導入を目標に,現場内のLAN構築・使用機器の選定・CADなどのソフト選定など,各々の現場に最適な環境整備をサポートする。また,CIMの基盤となる3D-CADの普及を目指し,社員への教育システムの構築も推進していく。

写真:CIM推進室メンバー

CIM推進室メンバー

【自動化施工推進室】

建設機械の自動化に関する技術開発,開発成果の普及展開,施工管理に関する指導・支援などを一元的に担う専門部署として,機械部内に設置。技術研究所の三浦悟プリンシパルリサーチャーが室長を兼任し,土木・機電・IT等で構成される14名のメンバーが業務を展開していく。

現在,ダム・土工事を対象に次世代建設生産システム「A4CSEL(「Ⅱ ICT建設機械による施工」ページを参照)」の完成に向け,実工事での適用実績を積んでいる。それとともに,より一層の技術開発の高度化・加速化を目指し,新たな実験フィールドを準備中である。

写真:自動化施工推進室メンバー

自動化施工推進室メンバー

改ページ

海底シールドトンネル工事にCIM導入

当社JVが施工中の「石狩湾新港発電所1号機新設工事のうち土木本工事(第3工区)」(北海道小樽市)では,CIMを導入して海底シールド工事における品質管理の“見える化”を実現した。

北海道電力が計画するこのプロジェクトは,石狩湾新港内に北海道初のLNG(液化天然ガス)を燃焼する火力発電所を建設する。当現場では発電設備から排出される冷却水を外洋へ放出するための放水設備(放水路立坑・放水路トンネル・放水口)を施工している。放水路トンネルの施工は泥水式シールド工法により,延長1,045m,内径4.7mのトンネルを構築するもので,設置済みの放水口にシールド機を接続させる難易度の高い作業であるうえに,土被りの深さのばらつきや防波堤の上載荷重の作用など,海底地盤内の状況を詳細に把握する必要があった。

CIMを導入することで,シールド機やセグメントなどの位置情報や掘削地盤情報,海底面からの土被り情報などを3次元で視覚的に管理することが可能になった。既存のシールド掘削管理システム(Kajima Shield Control System)の各種データをCIMの属性情報とすることで,施工状況の可視化も実現。この情報をCIMに連動させてストックしていけば,今後,様々なシールド工事の施工管理にも反映することができる。

*シールド機及び周辺設備からのデータを自動収集し一元管理するシステム

図版:海底シールドCIM全体表示画面

海底シールドCIM全体表示画面

図版:石狩湾新港発電所の放水設備イメージ

石狩湾新港発電所の放水設備イメージ

改ページ

「光ファイバーを用いたPC張力計測システム」開発

当社など3社*1は,光ファイバーのひずみ特性*2に着目し,プレストレストコンクリート(PC)に使用する PCケーブルの張力を迅速かつ高精度に計測できるシステムを共同開発した。

PCとは,高強度の鋼製ケーブルであるPCケーブルを引っ張り,張力を与えた後にコンクリートに定着させることで,コンクリートのひび割れの発生を抑制・制御する手法で,主に橋の桁や床版などに使用される。PC構造物の品質・耐久性の確保には,施工中から供用開始後まで所定の張力を維持する必要があるが,PCケーブル全長にわたって正確に張力を計測する手法はこれまで確立されていなかった。

このシステムでは,光ファイバーをPCケーブル全長にわたって組み込み一体化させた特殊ケーブルを用いて,光ファイバーに生じるひずみを計測することで,ケーブル全長の張力分布を正確に把握することができる。施工時の張力管理はもちろん,光ファイバーを測定可能な場所まで延長しておくことにより,供用後も張力計測できるため,維持管理の高度化・効率化を図ることができる。2016年10月に竣工したPC6径間連続ラーメン箱桁橋の「国道115号相馬福島道路月舘高架橋」(福島県伊達市)の上部工に初適用されている。

今後は,斜面や法面の崩壊防止に用いるグラウンドアンカーへの応用も視野に,開発を進めていく。

*1 住友電工スチールワイヤー,ヒエン電工

写真:システムを初適用した国道115号相馬福島道路月舘高架橋

システムを初適用した国道115号相馬福島道路月舘高架橋(発注者:国土交通省東北地方整備局)

*2 光ファイバー内に入射した光の伝播時に生じる散乱光の波長が,ファイバーのひずみによって変化する特性

図版:計測技術のイメージ

計測技術のイメージ

図版:光ファイバー組込み式PCケーブル(2種類開発)

光ファイバー組込み式PCケーブル
(2種類開発)

改ページ

4ブームフルオートコンピュータジャンボで山岳トンネルの施工合理化

山岳トンネルの掘削は,火薬を用いた発破作業が伴う。岩盤に火薬を充填するための発破孔の位置合わせ・削孔作業を正確に行うため,近年コンピュータジャンボによる自動化が進んでいる。しかし,従来のコンピュータジャンボは,作業員がキャビン内の小型画面を見ながらブームを誘導するもので,作業員の熟練度に左右されるうえ,各ブーム1名の作業員が必要となり,施工の合理化にはつながりにくかった。

当社が「宮古盛岡横断道路新区界トンネル工事(1期)」(岩手県宮古市)の本坑掘削に適用した日本初となる「4ブームフルオートコンピュータジャンボ」(アトラス社製XE4C)は,全自動削孔機能により,あらかじめシステムに入力した削孔位置に機械が自動で位置合わせを行い,4つの削孔ブームを1名のオペレータのみで操作可能とした。これまでのジャンボと比較し削孔性能も向上し,純削孔速度は最大2倍になったため作業時間とそれにかかる人員を削減した。コンピュータの自動制御により,削孔パターン通りの角度や長さで正確な削孔を実行。地山の硬軟に応じて自動的に最適な打撃力も調整されるため,削孔中の孔閉塞も発生しない。これらによって余掘りを40%低減できた。さらに,削孔データの自動収集機能も搭載され,このデータを蓄積すればCIMの地質モデルにも反映することができる。

写真:4ブームフルオートコンピュータジャンボ

写真:「宮古盛岡横断道路新区界トンネル工事(1期)」(発注者:国土交通省東北地方整備局)に初適用した「4ブームフルオートコンピュータジャンボ」

「宮古盛岡横断道路新区界トンネル工事(1期)」(発注者:国土交通省東北地方整備局)に初適用した「4ブームフルオートコンピュータジャンボ」

図版:削孔データの自動収集機能で求めた切羽前方地山の硬軟度分布

削孔データの自動収集機能で求めた切羽前方地山の硬軟度分布

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