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interview 押味新社長に聞く

Q 社長就任にあたり,「現場第一主義のもと,土木・建築の現場力をさらに強化していく」と決意を語られました。
その言葉に込められた思いをお聞かせください。

施工現場が,当社にとって最重要部署であり,主役だということです。まずは,このことを全社で共有していきたいと思っています。利益の源泉は現場であることを,今一度,肝に銘じてください。現場は,お客様が満足する品質を,安全な施工で,決められた工期内に納めていかなければなりません。この基本に忠実な生産活動こそ,私たちが従事する建設業の原点です。その上で,企業として利益を確保していくことが求められるのです。そこで大切になる視点は,この生産活動に携わる全ての人が「造る」ことに情熱を持ち楽しんでいるか,ということだと考えています。建設業の物づくりは,完成品に至るまでに,いくつもの手段や方法があり,それを自由な発想で考えられることが醍醐味です。私が現場を任された頃,人とは違うことを何かやってやろうと考えを巡らせることを常とし,思いついたアイデアについて,顧客や所員,協力会社と交渉や相談をしながら,積極的に現場に適用していきました。そうした中から,新たな現場マネジメント手法や生産効率を向上させる技術などが生まれていくのです。わくわく感があり,心が弾む楽しい日々だったことを今でも思い出します。現場は「造る」ためには何を考えても良いのだから,「造る」ことを純粋に楽しめる文化を根付かせていきたいと思っています。

そのためには,本社や支店など間接部門で働く役員・社員の意識を変えていくことも必要になってきます。現場に対して,管理する側の立場で仕事を強要するのではなく,現場は何をしたいのか,何に困っているのかを聞き,サポートを続けられる援軍でなければなりません。私を含め皆さんが,何よりも現場を第一に考えて業務を遂行することで,当社の現場力をさらに強化していきたいと考えています。それが私の考える「現場第一主義」です。

写真:インタビューの様子

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Q 社長就任と同時に,全国の現場に2つのスローガンが掲げられました。その意図するところは?

現場に実践してもらいたいこととして,「決心せよ!今日一日の無災害」「ひとつひとつ心を込めた物づくり」というスローガンを掲げました。当社は,創業以来,実直かつ控えめに,頑固な「物づくり」を貫き通し,お客様からの信頼,社会からの信用を得てきました。現場で働く皆さんは,今も変わらず同じ思いで,日々仕事に向き合い,鹿島ブランドを維持し,向上させることに貢献してくれています。しかし,近年,一部の現場で品質や安全に関わる重大な事故を起こし,これまで培ってきた信頼や信用を失墜しかねない事態となっています。今こそ,一人ひとりが,心の緩みや襟を正して,業務を遂行する時だと考えています。

ただ,スローガンを掲げるということは,現場所長に対するプレッシャーが3倍にも4倍にもなります。ある意味,非情なことなのです。そのことを支店長はじめ支店幹部には理解してもらわないと現場第一主義ではなくなってしまいます。もし現場で何かあれば,支店長自らがすぐに現場に駆けつけ,最前線で対応する覚悟を持っていてください。

写真:現場の様子

Q「鹿島グループ中期経営計画(2015〜2017)」が始動しています。当社が向かうべき方向性についてお聞かせください。

中村前社長(現会長)は2014年度の決算において,徹底して憂いを無くし,私に引き継いでくれました。そうした中,本計画は,中期的な市場動向に対して,当社が如何に事業を展開するかという方向性を示しています。このレールに乗って,3ヵ年計画の目標を1年ごとにきちんと達成することが重要だと考えています。特に1年目が大切です。単体建設事業の利益率を向上させ,安定的に200億円以上の営業利益を確保できる体制としていきます。そのためには現場第一主義を徹底し,マーケットに合わせ柔軟かつ大胆に人材をシフトするほか,利益重視の全社的な入手判断,生産性向上に向けた取組みを集中的に実施していきます。現場には,もうひと頑張りしてもらうことになります。そのための全社的な現場支援体制を整えると共に,私自身も現場を歩き回り,激励していきたいと思っています。

将来のマーケットに“備える”ということも重要です。震災復興,東京オリンピック・パラリンピック後は,国内の 建設市場は確実に縮小していきます。生産年齢人口の急速な減少にも拍車がかかるでしょう。将来の成長分野への積極投資,先駆的かつ付加価値の高い建設サービスの提供などを通して,縮小市場という環境下においても利益を確保できる経営基盤を整備していきます。

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Q 当社グループの持つ強みを活かして,将来に備えると考えれば良いでしょうか?

そのとおりです。当社は,進取の精神をもって時代に先駆け,新たな技術開発やプロジェクトに挑み,成長を続けてきました。その結果が今,設計・施工と一体となった開発事業,エンジニアリング,環境など建設周辺分野での高い技術力やノウハウ,バリエーション豊かなグループ会社の保有といった強みにつながっています。この精神は,これからも変わりません。研究開発を例にとれば,実現性を重視しながらも,メタンハイドレードやロボット技術など近未来的で夢のあるテーマに取り組んでいきたいと思っています。「他ではやってないことを自分の現場で実現させてやる」という現場所長時代の思いと似た感覚でいます。

Q 国内市場が縮小傾向の中,海外事業の方針や展開についてお聞かせください。

マーケットのあるところに,私たちの仕事があります。この原則は,国内でも海外でも同じです。成長市場がある海外へ積極進出することは,当社が今後も発展していくためには必然となります。今の企業規模を維持するなら,将来的には海外比率は4~5割になるでしょう。誰もが海外で働く可能性があり,働く場という観点から言えば,国内・海外という境界を意識することのない世界となります。一方で,海外マーケットへの対応は,国や地域特性を見極め,成功要因だけでなく失敗要因をしっかりと分析していくことが肝要です。当面は,現地資本との提携やM&Aなどの方法を用いて,現地に根差した経営を進めていきます。これまで事業展開してきた国に加え,ベトナム,ミャンマーなど成長が期待できる国もターゲットとなります。当社グループの強みである開発事業やエンジニアリング力などを最大限活用していくことは,海外でも同様です。

Q 女性の活躍に対する期待が高まっています。建設業における女性活躍推進についてどのようにお考えですか?

一人ひとりのライフスタイルが多様化していることを考えると,女性の活躍推進をとおして,誰もが充実した仕事と生活ができる環境を如何につくっていくかが企業として大切になります。そして,建設業に従事しているのだから,職種や職制に関係なく「造る」という仕事の醍醐味や楽しみを知って欲しいと思っています。例えば,現場の検査業務などは良い経験になりますし,女性ならではの繊細さ精緻さが活きる仕事です。各支店から様々な女性活躍推進の好事例が挙がってきていますので,全社に水平展開し,女性が活躍できる場を積極的に増やしていく考えです。

Q 鹿島グループの舵取りをするにあたり,社員へのメッセージをお願いします。

「船中八策」という有名なエピソードをご存知かと思います。坂本龍馬が長崎から京都に向かう船中で,幕府亡き後の日本の青写真を語ったとされるものです。内容もさることながら,道中に国の未来像を描いた姿が,私は好きです。是非,皆さんも時や場所に縛られず,自由な発想で,会社や職場のあるべき姿について考えてみてください。良きアイデアであれば,実現に向け全力で応援していきます。先人たちが築いてきた礎のうえに,一人ひとりのこうした志を重ね合せてこそ,時代の荒波を乗り越えることができるのです。そして共に,鹿島グループの未来を切り拓いていきましょう。

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押味至一
(おしみ・よしかず)

1949年 2月21日生まれ 66歳
神奈川県出身

1974年3月
東京工業大学工学部建築学科卒業
1974年4月
鹿島建設入社
2003年12月
横浜支店次長
2005年6月
執行役員横浜支店長
2008年4月
常務執行役員横浜支店長
2009年4月
常務執行役員建築管理本部長
2010年4月
専務執行役員建築管理本部長
2013年4月
専務執行役員関西支店長
2015年4月
副社長執行役員
2015年6月
代表取締役社長兼社長執行役員

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