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父の心に映った風景

愛知県 川合孝司

写真:父の心に映った風景

※投稿者の祖父・川合友重氏(後列左から3番目)は、当社社員として日月潭のダム建設のほか、戦後の賠償第1号工事であるビルマ(現ミャンマー)・バルーチャン発電所の所長として活躍し、本誌にも度々紹介されている。その後、海外工事部長などを務めた。

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父が台湾に行きたいというので、家族で訪ねることになった。

祖父は日月潭のダム建設に携わっていた。ダムを望む丘に社宅があり、吊橋を渡って現場に通った。父はそこで生まれ、明生と名付けられた。

行くのはいいが、詳細がわからない。祖父も祖母も他界した。父は生後半年で台湾を離れているし、家族が聞いていたのは思い出話だけ。考えてみれば自分も両親の若い頃について何も知らない。どこの家庭もそんなものだろう。

思い立って鹿島建設に問い合わせたところ、ありがたいことにたくさんの資料をいただいた。それを見ながら計画をたて、旅行は今年実現した。

ダムの完成から80年を経て、父は自分の名前の由来となった土地を訪ねた。社宅はみつからなかったが、目にしたダムは今もしっかりと濁水渓を受けとめていた。

静かな山奥に残る祖父の仕事。旗も印もないが、そこには鹿島の見える風景があった。

地図

写真:日月潭ダム

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