根本絢子
（ねもと・あやこ／横浜市出身／工学系研究科建築学専攻修了）
営業本部 医療福祉推進部
2006年入社。開発事業本部PFI推進部に新入社員として初めて配属される。4年間，医療施設などのPFIの入札案件に携わり，2010年に営業本部開発推進部へ。コンペだけでなくコンサルティングも含めて様々な案件に関わる。2012年，営業本部医療福祉推進部。2013年，つくばネクストパートナーズへ出向し，筑波大学附属病院のPFI事業に従事する。2014年4月から現職。趣味の乗馬は競馬場のプロジェクトを担当した縁から。筑波赴任中は大学の職員乗馬クラブで週末の余暇を楽しんだ。
「小学生の頃，父が施工を担当した幕張ワールドビジネスガーデンに連れていってもらったのを覚えています。巨大な建物に驚き，たくさんの人垣が誇らしくて」。2006年に入社した根本絢子さんは，高校時に鹿島に勤めていた父親を亡くしている。その影響もあり，根本さんは自然と建築の道を目指した。大学院では「父を亡くした時の病院の雰囲気が忘れられない」と医療福祉建築計画の大家である長澤泰氏に師事した。企画から運用まで建物の一生に関わりたいと門を叩いたのが，鹿島の開発部門だった。
入社から4年間，根本さんはPFIの入札案件に携わる。PFIとは，公共事業に民間の資金やノウハウを活用する整備手法である。「寝る間を惜しんで提案書を作成しました。様々な業種の方と接する機会が多く，視野が広がりました」。2010年，営業本部開発推進部に異動。民間プロジェクトも含めて数多くの案件に関わった。化粧品会社にふさわしい建物や女性も惹かれる競馬場など，女性の視点で意見を求められる場面も多かった。
2012年，筑波大学附属病院のPFI事業が竣工を迎え，根本さんは病院の運営・維持管理業務などを行う「つくばネクストパートナーズ（TNP）」に出向が決まった。運営開始直後の難しい業務だが，病院PFI入札案件に携わった実績と学生時代に学んだ医療福祉建築への造詣を買われての抜擢だった。根本さんは，事業者の業務実施状況のモニタリングを担当。運営・維持管理全般の業務について客観的視点から評価を行う。TNPメンバーや協力企業と協働して現場の問題点を把握，改善を図った。「病院では，様々な職種の方が男女の別なく働いています。個性や専門性を活かすことがより重要だと気づきました」。根本さんの活躍は高く評価され，1年間の任期を終えると，現地から出向期間延長の打診も受けた。「医療業界に比べて建設業界は，まだ女性が特別視されている。女性が当たり前に働けるよう，自分が当たり前に働くことで道をつくりたい」。
出向から戻り，在籍している営業本部は父親が最後に所属していた部署でもある。「皆さんから伺う父の生前のエピソードは，昨日のことのようにいきいきとして温かく，家庭とは別のもう一つの人生が会社にあったのだといつも新鮮な気持ちで聞いています」。採用から異動，出向――鹿島には自分の思いに耳を傾け，導いてくれた人々がいたと根本さんは話す。「運が良いといえばそれまでですが，望まなければ何も叶わなかったと思う。育ててくれた方々のためにも，掴んだ道をまっすぐに歩んでいきたい」。
筑波赴任が決まる前，趣味の乗馬で偶然に筑波大学附属病院に勤める看護師と知り合い，大学の職員乗馬クラブを紹介してもらう。約1年間，馬術部の学生から本格指導を受けてきた。写真は顧問の中谷敬教授（生命環境系）と。これからも様々な人との縁を大切にしていきたいと話す
医療機関では，患者さんの最適な治療のために様々な立場の医療スタッフがチームを組んでいます。根本さんがＴＮＰで担当したモニタリング業務は，PFI事業に含まれる業務の一つひとつを対象に，要求水準を満たしているかを客観的に評価することが求められます。彼女のもつ実直さと柔らかい物腰，目標を高く掲げてやり遂げる力で関係者の信頼を得て，期待通りの役割を果たし，現地の皆様から高い評価を頂きました。医療福祉の世界は大勢の女性が活躍しています。女性目線を大切に，この分野を開拓していってほしいと思っています。
