カラフルなルーバーが特徴の外観
(Photo: 西日本写房 河野博之)
全国有数の進学校として名高いラ・サール学園の学生寮である。生徒の多くは中学1年から高校2年までの5年間をこの場所で過ごし,巣立っていく。遠方に桜島を望む学園の広く恵まれた敷地の一角に,今まで敷地内に分散していた寮群を建て替えた。計画を進めるにあたって2つの距離の取り方をコンセプトとした。ひとつは寮と校舎との「距離」。もうひとつは中学生と高校生の「距離」である。この2つのほどよい距離感を中庭を囲む中高一体の学生寮とすることで実現した。
生徒の日常は寮と校舎の往復である。寮に帰ってきた時は気分転換を図りたい。エントランス越しに目に入る中庭はそんな転換の場所である。ここは校舎から隔てられ,囲まれた寮の中心である。南国の日差しに映えるカラフルな色彩も校舎とは違った雰囲気を作り出し,物理的な近さを超えた距離感を演出した。
各階をつなぐメイン階段
開放感のあるエントランス
中学生から高校生へ生徒は心身ともに急速に成長する。大人と子どもほどの差が生じるこの時期に寮生活のなかで互いに影響し合う。一方,中高生を分けて管理したいというニーズがあった。このニーズの延長線上に,共に過ごす場所をつくるため中学寮と高校寮をひとつの建物として収めた。また,中庭を配置することで求心性を強めることを試みた。2階から4階の寮室は縦に中高の空間が二分されて互いの行き来はできないが,ガラスで囲まれた階段を介して視線が交錯する。建物の構成が,管理側のニーズと,共に過ごす意義という相反する距離感にひとつの形を与えたのではないかと考えている。(土井原泉・小関聖仁・本多 昭)
寮室(高校)
新寮の象徴となる中庭。コンセプトである2つの距離感を実現した
ラ・サール学園学生寮
(鹿児島県鹿児島市)
- 設計:
- 当社建築設計本部,
当社九州支店建築設計部 - 規模:
- RC造 4F 延べ10,646m2
2013年12月竣工(九州支店施工)
新寮の平面図。中庭を囲み,回遊性のある動線計画とした
土井原 泉
(どいはら・いずみ)
建築設計本部
グループリーダー
主な作品:
- 戸畑サティ
- 積水九段南ビル
- 秋葉原ダイビル
- 共立女子学園 第2中学高等学校
- 名古屋学院大学 翼館
小関 聖仁
(おぜき・まさひと)
建築設計本部
チーフアーキテクト
主な作品:
- AKASAKA K-TOWER
- グラントウキョウサウスタワー
- 新宿EASTビル
本多 昭
(ほんだ・あきら)
九州支店建築設計部
設計長
主な作品:
- ゆめタウン徳島
- 西南学院大学 言語教育センター
- トステム福岡ビル
- 福岡女学院 看護大学
- 空港施設 鹿児島空港格納庫