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file-6 夢の扉を開く研究者

図版:田中真弓さん

田中真弓

(たなか・まゆみ/静岡県出身/文学研究科地理学専攻修了)
技術研究所 岩盤・地下水グループ

1997年入社。技術研究所の事務部門に一般職・事務として配属される。勤務時間後に,学生時代から研究テーマとしていた活断層に関する論文をとりまとめ発表。2001年に一般職・土木へ職種変更し,業務として研究に専念できる環境へ。2011年に技術士(応用理学部門)を取得。2012年,総合職・土木に職務変更。現在,土壌汚染関連の技術開発を進める。趣味はハイキング,釣り,手芸と幅広い。高校生と小学生の母の顔ももつ。

大学院時代,活断層の研究をしていた時,阪神・淡路大震災が起こった。2週間後には,活断層の調査のため現地へと向かう。橋脚が倒れた高速道路,押し潰された家屋──その光景が田中真弓さんの胸を突き刺す。「将来は建設会社に就職して,活断層の研究で得た知見を活かし,インフラ構築を通して,社会に貢献できる研究者になりたい」という思いが生まれた。しかし,地理学を専攻した田中さんに研究者として入社する門戸は開かれていなかった。技術研究所に一般職・事務で入社し,最初に担当した業務は,コピー用紙の管理や電話の取り次ぎだった。24時間,土日も関係ない学生時代の研究生活とは,180度違う社会人生活のスタートとなったが,入社動機を忘れることはなかった。「与えられた場所で,今できることを実行すれば必ず道は拓ける」と,仕事を終えてから終電近くまで活断層に関する論文を執筆して2000年に発表。その努力が実り,土木系の研究室に活躍の場を得て,2001年には一般職・土木に職種変更が認められた。「研究に専念できることが本当に嬉しかったです」。任されたのは,高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究だった。「建設業界には,地理学の専門家はほとんどいません。地下水の流動状況を測定する技術開発では,地理学の知見が活かせました」。

図版:米国カリフォルニア州のサンアンドレアス断層にて

米国カリフォルニア州のサンアンドレアス断層にて。ライフワークともいえる活断層の研究では,自費で米国に1年間留学して活断層調査を行った

2010年頃からは土壌汚染関連業務を担当。土壌と重金属の吸着・脱着性を研究する。専門分野とは少し畑が違うが「自分が成長できるチャンス,ベストを尽くそう」と積極的に取り組み,土壌浄化技術の確立を担う。東日本大震災後は,その技術を放射性物質に応用し,福島県富岡町の除染業務へ適用を急ぐ。その間,2012年4月に総合職・土木へ。実験室での研究業務に加え,福島に出張し現場ニーズに直接触れる機会も増えた。「責任も重くなり,研究の方向性に関する悩みも複雑になりました。そんな時は一人で考えず,色々な視点から意見をもらい,課題を分析しています。鹿島には,多様なバックグラウンドをもち,魅力的な人格をもつエキスパートが沢山います。解決できないことはありません」。

改ページ

「鹿島を親が子供を就職させたい会社“No.1”にしたいんです」と当社の将来像を描く。この会社なら大丈夫,任せて安心と,信頼される企業になるには,まずは社員同士の信頼関係の構築,そして社員一人ひとりが夢をもち続けることが大切だという。どんなに忙しくても,つま先だけは夢の方向へ──田中さんのモットーだ。社会に貢献できる研究者を目指し,これからも夢の扉を開いていく。

Voice 純粋に課題に取り組む姿勢 技術研究所 岩盤・地下水グループ 川端淳一 グループ長

彼女と一緒に仕事を始めた7年前,最初にキャリアを見て驚きました。一般職・事務からステップアップして,研究員として活躍していたからです。目標を明確にして突き進む大切さに,私自身も改めて気づかされました。また,日本企業に潜在的にある旧来のルールみたいなものに振り回されることなく,純粋に課題に取り組む姿勢が印象的でした。専門分野が違うといった言い訳をせずに,すぐに開発に着手する柔軟性も持ち合わせています。

今後は,開発した技術の現場適用という高いハードルが待っていますが,これまでのスタンスを崩すことなく,頑張って欲しいですね。

図版:技術研究所 岩盤・地下水グループ 川端淳一 グループ長と田中真弓さん

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