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Case Studies 選ばれる病院づくりへの技術とサービス

当社では,事業計画から設計,施工,運営・管理に至る各シーンで多様な技術とサービスを提供し,感動する医療環境をめざしている。

ここでは個性豊かな病院の事例を取り上げ,「病院の思いをかたちにする空間づくり」「エビデンスに基づく病院設計」「スタッフが働きやすい環境づくり」「鹿島グループによるトータルサービス」の4つの視点から紹介していく。

Card 1 病院の思いをかたちにする空間づくり

病院の思想を表現する空間
――亀田病院

大正時代に移転開設してから地域に密着した医療の提供を続けるために「居ながら」®建替えで新棟を建設。病院のモットーである「自然治癒力を高める医療」を空間として具現化するために,屋内にいながら自然の移ろいや時の流れを感じられることを新棟の設計コンセプトとした。

建物中央のアトリウムを満たす自然光は,患者にとって時間と空間の認知をサポートし,体のリズムを整えて治癒力の向上につながる期待が込められている。計画段階で日射と空調負荷とともに自然換気のシミュレーションを行い,空間のイメージと省エネルギーを技術力で両立させた。病室エリアは「可変ホスピタル」®を採用した無柱空間かつ二重床とし,設備シャフトは外部に設けた。

自然光にあふれるアトリウム

自然光にあふれるアトリウム

可変ホスピタル

可変ホスピタル

亀田病院 新本館

場所:
横浜市西区
発注者:
明和会
設計:
当社建築設計本部
規模:
RC造 4F,PH1F 
60床 
延べ3,995m2

2011年11月竣工
(横浜支店施工)

改ページ

京の知恵を重奏した空間構成
――がくさい病院院

整形外科・リハビリテーションに特化した京都市の地域医療中核病院。古都のまちなみと調和する伝統的な要素をデザインに取り入れた。縦格子は外観にリズムを与えつつ,設備機器や配管の目隠しとして機能。屋上の設備機器の目隠しには勾配をつけ,周囲の景観と一体化させた。間口が狭く奥行の深い建物を貫く廊下と小さな待合空間は,通り庭と坪庭の関係を写したもので,地域住民に懐かしさを感じさせるのが狙い。

構造は経済的で機能変化に柔軟なロングスパンのKIP-RC構法を採用。構造体をアウトフレームとすることで室内への直射日光を抑制し,空調負荷を低減させている。多床室ではベッド回りを個別に制御できる空調システムを取り入れ,省エネルギーと患者の快適性を両立させた。

可変ホスピタルと環境制御技術

可変ホスピタルと環境制御技術

アウトフレームの柱と縦格子が外観に表情を与えている

アウトフレームの柱と縦格子が外観に表情を与えている

坪庭に見立てた小さな待合空間(左)と通り庭をイメージした外来動線

坪庭に見立てた小さな待合空間(左)と通り庭をイメージした外来動線

がくさい病院

場所:
京都市中京区
発注者:
京都地域医療学際
研究所
設計:
当社建築設計本部
規模:
RC造一部S造 5F 90床 
延べ4,854m2

2013年10月竣工
(関西支店施工)

京都市環境配慮建築物顕彰制度
奨励賞

改ページ

Card 2 エビデンスに基づく病院設計

リラックスできる透析治療空間
――あけぼの病院

透析治療で著名な総合病院の施設を統合・移転し,1フロアに142床の人工透析スペースをもつ新病院が誕生。大規模透析施設としての患者の来院時間の集中に対しては,実際の患者の動きをモニタリング調査し,入退室プログラムを構築。患者の行動シミュレーションによって,動線とスペースの適合性を検証した。

透析治療は,患者が隔日で3~4時間ほどベッドで過ごすため,リラックスできる空間づくりを徹底。吸音織物パネルの天井は,平静で柔らかな表情をつくり,それを照らす間接照明は,サーカディアン(24時間周期)リズムで緩やかに変わり、時間経過をさりげなく知らせる。ドラフト感(不快に感じる気流)を低減した空調制御など,エビデンスに基づく環境デザインを駆使し,透析室のモデルとなるような治療空間を追求した。

外来患者用の透析室(122床)

外来患者用の透析室(122床)

入院患者用の透析室(20床)

入院患者用の透析室(20床)

サーカディアンリズム照明のプログラム

サーカディアンリズム照明の
プログラム

重症度によってさまざまに利用可能な個室

重症度によってさまざまに利用可能な個室。天井の照明は当社開発の多機能放射冷暖房ユニット

改ページ

睡眠環境を向上させる建築設計

あけぼの病院の病棟環境デザインでは,質のよい睡眠に着目。夜間の患者のベッド乗降が減ることで転倒・転落リスクを抑え,呼出し回数が減るなど,夜間勤務スタッフへの負荷も軽減される。事故のリスクの低減のほか,スタッフの離職率の低減やベッドの回転率の改善なども期待できる。当社の技術研究所と建築設計のチームが,専門家の監修のもと研究を重ねた。

睡眠の質の向上は,日中に高照度の光を浴び,生体リズムの整調からはじまる。建物内に十分な昼光を導入するために,食堂とデイルームを南北に分散し,廊下の端部に大きな開口を配置。病室の窓には,欄間とライトシェルフを設え,4床室での廊下側ベッドにも照度を確保。ベッド周囲の空調は個別に送風を調整でき,温熱環境への個人差や室内温度のムラに対応する。

ライトシェルフの効果で天井面の明るい4床室

ライトシェルフの効果で天井面の明るい4床室

病棟平面図

病棟平面図。共用部は四方採光としている

自然光であふれる病棟

自然光であふれる病棟

あけぼの病院

場所:
東京都町田市
発注者:
三友会
設計:
当社建築設計本部
規模:
S造 5F,PH1F 98床(透析 142床) 
延べ10,391m2

2015年7月竣工(横浜支店施工)

改ページ

Card 3 スタッフが働きやすい環境づくり

働きながら見守る院内保育所
――京都市立病院

24時間保育体制の院内保育所を併設。医療スタッフの産後の職場復帰の後押しなど,人材の確保を促進する。

職場からも子どもが見られるように,病院と保育所を平行に配置。病院特有の勤務体制にあっても,母子の距離を近づけている。看護師長には「文句の付けどころのない素晴らしい保育所」と喜ばれた。元気に遊ぶ子どもたちの姿は,リハビリガーデンや病棟の患者にも活力を与えている。

病院(新館)から見る院内保育所。手前はリハビリガーデン

病院(新館)から見る院内保育所。手前はリハビリガーデン

ホール(遊戯室)

ホール(遊戯室)

京都市立病院

場所:
京都市中京区
発注者:
SPC京都
設計:
当社建築設計本部,関西支店建築設計部
規模:
新館 ― RC造(免震構造) B1,7F 278床 本館 ― 内装・設備改修 270床
院内保育所 ― S造 1F 救急・災害医療支援センター ― S造 2Fほか
総延べ59,497m2

2015年3月竣工(関西支店施工)

改ページ

患者の安全と高度医療を両立させる病室計画
――恵佑会第2病院

がん医療で著名な医療法人が内科・消化器科の専門病院を新設。入院患者の転倒事故の多くは,ベッドからトイレへの移動時に発生する。そこで,ベッドの頭側にトイレユニットを配置することで,手摺りづたいの安全な行き来を計画。患者の頭回りにできた十分なスペースは,急変時などに医療機器が搬入でき,高度な医療の提供を可能にする。病室の入り口からの視認性が確保され,スタッフの見回りの負担低減にもつながる。

ベッドの頭回りが特徴の病室平面

ベッドの頭回りが特徴の病室平面

ゆとりのある病室

ゆとりのある病室

恵佑会第2病院

場所:
札幌市白石区
発注者:
恵佑会
設計:
当社建築設計本部
規模:
RC造 5F 135床 
延べ8,061m2

2012年1月竣工
(北海道支店施工)

改ページ

効率的なスタッフ専用動線
――眼科 三宅病院

院内を忙しく動き回るスタッフと,視機能の低下によって歩行に支障がある患者さん。多様な人が異なるスピードで行き交う眼科病院の特性を考慮し,スタッフ専用の通路を設け,両者のストレスを低減するとともに安全性を高めている。

専用通路は動線としての機能のほかに,スタッフ同士のコミュニケーションや備品のストックなどにも活用されている。

収納が設えられたスタッフ専用通路

収納が設えられたスタッフ専用通路

2階平面図

2階平面図

眼科 三宅病院

場所:
名古屋市北区
発注者:
湘山会
設計:
当社中部支店
建築設計部
規模:
S造一部SRC造 
B1,7F 
48床 
延べ5,447m2

2015年3月竣工
(中部支店施工)

改ページ

Card 4 鹿島グループによるトータルサービス

エビデンスに基づくインテリア選定と調達
――イリア

地域に根差した医療を重視し,総合診療科やリハビリ機能を充実させた座間総合病院。待合室は,外来患者数が多いときにも全ての人が椅子に座れるように,当社技術研究所が保有する行動可視化技術で,最適な座席数と配置を導き出した。デザイン性と機能性を兼ね備えた家具備品の選定・調達・レイアウトを,当社グループのインテリアデザイン会社「イリア」が行い,空間の快適性を高めている。

1階総合待合

1階総合待合

JMA座間総合病院

場所:
神奈川県座間市
発注者:
ジャパンメディカルアライアンス
基本設計:
入江三宅設計事務所
実施設計:
当社建築設計本部
規模:
S・RC造 6F 
352床 
延べ21,017m2

2016年3月竣工
(横浜支店施工)

改ページ

憩いと治療のためのイングリッシュガーデン
――ランドスケープデザイン

外構の景観設計によって療養環境づくりをサポートするのは当社グループの「ランドスケープデザイン」。精神科の専門治療で知られる群馬病院では,四季折々の花が咲く,憩いのイングリッシュガーデンを創出した。

草木に触れることで五感を刺激し,運動能力や認知の力を高める園芸療法の場としても機能する。患者の生活の質を向上させるリハビリとなり,建物内部と外部が一体的な治療空間となっている。

季節ごとの花に彩られたイングリッシュガーデン

季節ごとの花に彩られたイングリッシュガーデン

群馬病院

場所:
群馬県高崎市
発注者:
群馬会
設計:
当社建築設計本部
規模:
RC造一部S造 5F 465床 
延べ16,290m2

2011年12月竣工
(関東支店施工)

ぐんま花と緑の活用事例
コンテスト最優秀賞

改ページ

維持管理25年の信頼関係
――鹿島建物総合管理

鹿島建物総合管理では,病院建築の設備管理,清掃,警備をはじめ,医療施設に合わせたサービスを提供し,国内約8,700床の病院をサポートしている。新潟市の地域医療を支える亀田第一病院は,25年前に当社の設計・施工で増改築工事を行って以来,鹿島建物総合管理が設備管理などを継続してきた。現在,4,388m2の増築工事及び916m2の改修工事が当社の設計・施工で進んでおり,当社グループのさらなる連携が発揮される。

現在の建物での維持管理作業の様子

現在の建物での維持管理作業の様子

増築部のパース

増築部のパース

亀田第一病院増築及び改修工事

場所:
新潟市江南区
発注者:
愛仁会
基本設計:
当社建築設計本部
実施設計:
当社北陸支店建築計画グループ
規模:
RC造 7F 197床 
延べ13,436m2(増築後)

2017年10月竣工予定(北陸支店施工)

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