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THE SITE

超高層ビル解体の新たなスタンダード

(仮称)ホテルモントレ沖縄タイガービーチリゾート新築工事

2013年6月27日,沖縄県の恩納村に当社設計・施工の新たなリゾートホテル
「ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート」がオープンする。
現在,現場では約1,000人の作業員が集まり,完成に向けた工事が急ピッチで行われている。
工事中の厳しい暑さ,猛威を振るった台風の数々,そして美しい海――。
沖縄の過酷な自然環境と果敢に立ち向かう,社員たちの頼もしい姿に密着した。

写真:全景写真。美しい曲線を描く(2013年4月11日現在)

全景写真。美しい曲線を描く(2013年4月11日現在)

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図版:地図

【工事概要】

(仮称)ホテルモントレ沖縄
タイガービーチリゾート新築工事

場所:
沖縄県国頭郡恩納村
発注者:
マルイト
設計:
当社建築設計本部
インテリアデザイン:
イリア
外構:
ランドスケープデザイン
監理:
当社九州支店
用途:
ホテル,レストラン,屋内・屋外プール,エステ,
チャペル,更衣室,駐車場ほか
規模:
RC造 12F,PH1F 延べ42,213m2
工期:
2011年6月~2013年5月竣工予定

(九州支店・関西支店JV施工)

図版:完成パース

完成パース

ホテルモントレシリーズ

マルイトが手掛けるホテルモントレシリーズは,1986年に開業した「ホテルモントレ山王」(東京都大田区)を機に全国で展開する大手ホテルチェーンである。西欧の様々な都市・建築様式と現代建築を融合させた空間が魅力で,当社はこれまで全国8都市に16のホテルの設計・施工を担当した

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モントレ初のリゾートホテル

那覇空港に着くと,透きとおった碧い海が目の前に眩しく広がる。現場を訪れたのは,3月の初旬。ひと足早い春を感じながら,「(仮称)ホテルモントレ沖縄タイガービーチリゾート新築工事」の現場を目指す。建設地は沖縄本島の中央部・恩納村にあり,周辺には名勝「万座毛」やダイビングスポットで有名な「真栄田岬」などが点在する人気の観光地だ。

空港から車で西海岸沿いの国道58号を北上し,1時間ほどすると建設現場が左手に見えてきた。ホテルの外壁は白くて大きく,空と海のブルーを背景に美しく浮かぶように映える。現場では内装や設備,外構工事が最盛期を迎え,作業員の数は約1,000人にのぼる。

「ホテルモントレ沖縄スパ&リゾート」は,マルイトが全国に展開するモントレシリーズ初の本格リゾートホテルとなる。テーマは,ブリティッシュコロニアルスタイル。モントレらしさを演出しながら,沖縄の自然と調和する非日常的な空間が創出される。この12階建てのホテルは,客室339室が全てオーシャンビューで,館内にはレストランや屋内プール,ジム,エステなどが完備される。屋外にも巨大な造波プールやチャペル,体験工房など,充実した施設が配されて思い出に残る楽しいひと時が過ごせる。

図版:エントランスロビー

エントランスロビー

図版:客室

客室

施主の夢を実現

当プロジェクトの設計を担当する建築設計本部の三村賢太郎グループリーダーは,数多くのモントレシリーズに携わってきたプロフェッショナルだ。「国内屈指のリゾート地である沖縄のなかでも,西海岸沿いには多数のホテルが建っています。ほかにはない沖縄の大自然と共生するホテルづくりを目指しました」という。施主の描くホテルのイメージを大切にしながら,品質やコストを加味してつくり込んでいく。「施主のホテル像を実現させるためには,施工部隊の知恵が欠かせません」と三村グループリーダー。基本設計の段階から設計・施工が一体となってフロントローディングを進めてきた。

写真:三村賢太郎グループリーダー

三村賢太郎グループリーダー

海外調達への限りなき挑戦

「施主の求める建物をどうすれば予算内で実現できるかを考えることが最も大切」と語るのは,現場のキーマン的存在の仲田雅洋副所長。新しい発想と軸のぶれない運営で現場を牽引する。モントレのコンセプトに合った手仕事の香りが残る部材を探し求めて,ベトナムを中心としてインドネシアや中国などアジア諸国を奔走した。客室のバルコニー部分の手すりや外構フェンス,チャペルの外階段の手すりなど,海外から調達した部材は多岐にわたる。

単に輸入するだけではなく,施工者が自分の眼で現物を確かめ,品質管理の指導を行うことの大切さを強調する。たとえばチャペルの外階段の手すりは,そのまま使用すると国内の強度基準を満たさない。支柱を2つに割り,中心に鉄製の下地フレームを配して補強する細工を施している。

写真:仲田雅洋副所長

仲田雅洋副所長

写真:ベトナムから調達したチャペルのカリオン

ベトナムから調達したチャペルのカリオン

写真:外階段の手すり

外階段の手すり

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沖縄の特殊な条件を克服

現場を統括する出田一彦所長は,「ホテルの完成形をイメージし,それから逆算することによって常に現状を改善していくことが重要です」と工事の秘訣を語る。出田所長は,ホテルモントレ ラ・スール福岡やホテルモントレ長崎の施工に携わり,知識と経験が豊富である。それでも沖縄の特殊な条件を克服する必要があったという。

そのひとつがコンクリートだ。一般的にホテルには,ロビーや宴会場のような空間が存在するため,コンクリートの強度が高いほど設計がしやすくなる。高強度コンクリートを使用した構造が当初検討されていた。出田所長は,「調査した結果,現場で調達可能な範囲には高強度コンクリートを扱うプラントが存在しないのです。段取りできる40N/mm2以下の強度で構造設計をしてもらいました」と語る。階高を調整し,要所に吹抜けを設けることで来訪者に印象深い大空間が実現した。

写真:出田一彦所長

出田一彦所長

第Ⅰ期工事の進捗

写真:第1期工事の進捗

自然の猛威

沖縄の自然といえば,“美ら海”。チャペルや屋外プール,タッチプールなどの外構を担当する伊佐野建工事課長は,「現場の屋上から見る澄んだ海の色は,一瞬忙しさを忘れてしまうほどの美しさです」という。しかし,ときに自然は猛威を振るう。

沖縄には台風とスコールの時期がある。豪雨や暴風に遭い,現場の作業が止まってしまう。また,サンゴ礁の美しい海や河川の汚濁を防止するため,沖縄特有の赤土の流出を防がなければならない。建設工事など事業行為に伴い発生する赤土などの流出を規制する「沖縄県赤土等流出防止条例」があるのもそのためだ。

現場は海が目の前に広がり,敷地内からの赤土流出が海の汚濁に直結する。「こまめに天気予報を確かめて雨が降り出すと,社員と職長さんが総出で周囲の点検を行うのが習慣でした。台風は上陸すると,豪雨と暴風が同時に到来します。台風の進路と暴風域の範囲によっては,数日前から型枠工事や足場の組立をストップさせることもありました。暴風域に入ると,外にいるのも危険な状態になります」と伊佐野工事課長。一度過ぎ去った台風が戻って来ることもあり,一週間工事が進まないこともあったという。台風の予想進路に一喜一憂しながらの作業が続いた。

写真:現在行われている屋外プールや造波プール,チャペルや体験工房の第II期工事全景

現在行われている屋外プールや造波プール,チャペルや体験工房の第II期工事全景

写真:伊佐野建工事課長

伊佐野建工事課長

写真:雨が降ると社員や職長が総出で周囲の点検を行う

雨が降ると社員や職長が総出で周囲の点検を行う

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離島での合理化施工

「初めてこれほど大規模な純RC造を手掛けました」と話すのは,躯体工事を担当した中村康孝工事課長。使用したコンクリート量は全体で約4万2,000m3,鉄筋は約7,800tにおよぶ。最初に思案したことは,いかに効率良く鉄筋・型枠・コンクリートの物量をコントロールするかだった。効率的な躯体工事には,“スムーズな資材の供給と揚重機の配置”と“躯体のユニット化による施工歩掛(ぶがかり)の向上”が重要なポイントとなる。可能な限り配筋・型枠のユニット化を行い,沖縄県内のPC工場でバルコニーなどはプレキャスト化して資材供給がスムーズになる総合仮設計画を策定した。中村工事課長は「敷地は鰻の寝床のように細長く大変苦労しましたが,計画通り完成できたときには達成感がありましたね」と胸を張る。

写真:中村康孝工事課長

中村康孝工事課長

写真:梁配筋のユニット化

梁配筋のユニット化

写真:PC化したバルコニーを揚重

PC化したバルコニーを揚重

受け継がれる信頼のバトン

「このプロジェクトの営業・設計・施工の責任者は,皆“モントレ建築のプロフェッショナル”です。30年以上前から施主とともに歩んできた諸先輩が築き上げてきたものを受け継ぎ,“ほかのホテルにない,より良いホテルを”という施主の思いを常に感じながら一心同体となって工事を進めています」(仲田副所長)。

そして,出田所長は最後に「私達はものづくりを通じて,施主や地域の“信頼”を築いていけるように努力しています。『また鹿島に設計・施工でお願いしたい』といっていただけるように,次の現場へのバトンをつなげたい」と話してくれた。

写真:集合写真

集合写真

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+THE SITE タイガービーチに住まう生き物

西海岸でも珍しい天然の美しい砂浜とリーフが広がるタイガービーチには,心地よい波音が響き渡りサンゴや貝殻が穏やかな波に打ち寄せられている。「現場周辺と砂浜のクリーン活動は欠かすことのない日課です。清掃中に珍しい生き物と出会うこともしばしば」と渉外などを一手に引き受ける古川事務課長。7月から9月にかけて,砂浜では海ガメの産卵が10回程ある。仮囲い際に産み落とされた卵を,保護資格を持った施主担当者と一緒に安全な所に移動させるのも仕事のひとつだ。「産まれたばかりの子ガメは手のひらに納まる愛らしさです。殻を破り手足をバタつかせ海へ向かう姿は感動的で強い生命力を感じます」。地域の子供達を中心に声をかけ,多い時には現場職員を含めた30人以上が集まり,大海原へ約120匹の小さな命が飛び出していくのを見守った。

写真:タイガービーチに住まう生き物

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