ホーム > KAJIMAダイジェスト > November 2017:TechnoFocus ~最新技術ニュース~

KAJIMAダイジェスト

TechnoFocus ~最新技術ニュース~

[2017年8月30日発表]
環境配慮型コンクリート「エコクリート®BLS」の適用拡大
~建物地上部分全てに適用,CO2排出量を削減しながら高い品質を確保~

地球温暖化防止対策の一環としてCO2削減を積極的に推進するためには,建築物本体でも低炭素化を図る必要がある。建築物に大量に用いられるコンクリートは,セメント,骨材,および水で構成される。このうち,CO2排出量が最も多いのがセメントで,1tを製造する際のCO2排出量が約750kgと,コンクリート全体の99%を占めている。このため,昨今CO2排出量が少ない低炭素型セメントを用いたコンクリートが求められている。

そこで当社は2016年,低炭素型セメントの一種である高炉セメントA種※1を改良し,コンクリート製造時のCO2排出量を一般的なコンクリートに比べ約25%削減する環境配慮型コンクリート「エコクリートBLS※2」を開発した。ひび割れ抵抗性が高く,中性化しにくいため建物地上部に使用でき,普通コンクリートと同レベルの材料コストを実現する。

今回,この「エコクリートBLS」を「山櫻 東京支店」の地上部分全て(約600m3)に適用した。試算によると,コンクリート製造時のCO2排出量を約34t※3削減するとともに,打設後10ヵ月以上を経た現在も,ひび割れのない良好な状態を維持し,高い品質を確保している。

当社は,これまで開発した環境配慮型コンクリートを「エコクリート」シリーズとして位置づけ,建築物への幅広い普及・展開を図っている。今回適用した「エコクリートBLS」のほか,CFT充填用の「KKC®コンクリート」,NEDOプロジェクトにおいて1大学7社で共同開発した地下構造物用の「ECMコンクリート®」,現場から生コン工場に戻されたコンクリートを再利用した「エコクリートR3(アールスリー)」,解体したコンクリートから取り出した骨材を,構造用のコンクリートに再利用する「構造用再生骨材コンクリート」など,打設場所や用途に応じて,種類も様々に取り揃える。今後も環境配慮型コンクリートのさらなる技術開発と,建築物への普及拡大に努め,低炭素社会の実現に貢献していく。

※1 高炉セメントA種: 高炉スラグ含有率が5~30%のセメント
※2 BLS:Blast-furnace slag(高炉スラグ)Low Shrinkage(低収縮)
※3 34t:樹齢40年の人工スギの森3.86ha(1haあたり1,000本の立木があると仮定)で,1年間に吸収される量に相当
   (林野庁HPより)

改ページ

図版:コンクリートのCO2排出量、ひび割れ抵抗性の比率(高炉B種コンクリートを基準とする場合)

写真:エコクリートBLSを地上部全てに採用した「山櫻 東京支店」の外観

エコクリートBLSを地上部全てに採用した「山櫻 東京支店」の外観

【工事概要】
山櫻 東京支店
場所:東京都文京区
発注者:山櫻
設計・監理:当社建築設計本部
規模:RC造 4F 延べ1,065m2
工期:2016年6月~2017年5月
(東京建築支店施工)

改ページ

[2017年9月6日発表]
切羽前方の湧水圧を連続的にモニタリングする「中尺スイリモ」を開発
山岳トンネルにおける中尺ボーリングを活用して100m先の湧水圧を正確に把握

山岳トンネル工事では,切羽前方の湧水に対して適切な対策工を事前に検討・実施することが,安全に工事を進める上で非常に重要となる。特に大深度トンネル工事では,地表から観測井戸を設置することが困難なため,トンネル坑内からの水平ボーリングにより,事前に湧水の状況を把握する必要がある。そこで当社は2015年に超長尺ボーリングを活用して,切羽から500m以上先の湧水区間の位置や流量・水圧を把握するシステム「超長尺スイリモ(超長尺ボーリング版 水リサーチ・モニター)」を開発し,精度よく把握できることを確認している。しかし,施工状況に応じたより適切な湧水対策工を選定・実施するためには,100m程度の中尺ボーリングを活用し,連続的なモニタリングによる湧水圧を把握することが効果的だ。

そこで,切羽から100m程度先までの地質などを調査する中尺ボーリングを活用して,切羽前方の湧水区間の水圧を連続的にモニタリングするシステム「中尺スイリモ(中尺ボーリング版 水リサーチ・モニター)」(特許出願中)を,鉱研工業と共同で開発。削孔鋼管内へ先端にパッカがついた鋼管を通し,ビット(先端の刃)を押し出す機構によりパッカを確実に挿入することを可能にした。これにより,削孔鋼管を一旦引き抜く作業が不要となり,技術的な課題だった孔崩れなどの懸念を解消した。

今回,本システムを神奈川県秦野市で施工中の「新東名高速道路 羽根トンネル工事」において約3ヵ月間試験的に適用した結果,100m先にある湧水区間の水圧を精度よくモニタリングできることを確認した。湧水圧の変動を正確に把握することで適切な対策工を事前に検討できるため,トンネル掘削における安全性の向上と,工程遅延リスクの低減が期待できる。

現在,当社は超長尺・中尺など長さの異なる水平ボーリングを活用し,トンネルの掘削段階に合わせた湧水データ計測システム「スイリモ®」の開発を進めている。今後も,高い湧水圧が予想される山岳トンネルにおいて,「スイリモ」を積極的に活用して,水圧を事前に正確に把握し,適切な湧水対策工を選定・実施することにより,トンネル工事における安全性のさらなる向上を目指す。

※パッカ:孔内でゴムや布等を拡張させ測定区間を周囲と分離する装置

写真:新東名高速道路

新東名高速道路 羽根トンネル工事で実施した試験施工

写真:中尺スイリモの概要

中尺スイリモの概要

改ページ

中尺スイリモの実施手順

図版:中尺スイリモの実施手順

中尺ボーリング孔の先端が湧水区間に到達するまでボーリング孔を削孔する

図版:中尺スイリモの実施手順

削孔鋼管を湧水区間手前まで引き抜き,削孔鋼管の中にパッカ用鋼管を挿入

図版:中尺スイリモの実施手順

ビットをパッカ用鋼管で押し出した後,パッカを拡張させることにより,湧水区間を周囲と分離。手元に水圧計を接続し,先端の湧水区間の水圧をモニタリングする

ホーム > KAJIMAダイジェスト > November 2017:TechnoFocus ~最新技術ニュース~

ページのトップへ戻る

ページの先頭へ