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建設業の使命を担って

財部 吉田さんは2011年のタイの洪水で復旧支援の対応をされたと聞いています。
吉田 さきほど高村さんから,東日本大震災の話がありましたが,私は発災当時インドネシアにいて,もともと10日後に帰任予定だったのです。そのタイミングで震災が起きたものですから,自分の中で東北の復興にあたるぞと使命感をもって帰国しました。ところが半年も経つとタイの洪水が起きて,急遽,以前に駐在経験があったタイに着任しました。災害復旧に違いはありませんが。
鬼頭 当時私もタイで対応にあたりましたが,吉田さんたちには本当にお世話になりました。洪水被害は甚大で,7つの工業団地が2mから3m浸水しました。1ヵ月もの間ずっと浸かっていたのです。タイ・カジマが施工した得意先が30社あって,建屋の数にすると100棟ぐらい。水が引いた瞬間に一気に復旧作業ですから,とても対応できない。本社・国内支店・KOAにお願いして30名くらいの応援要員に来て頂きました。当時,震災で人員が逼迫していたでしょうから,貴重な社員に着任してもらい助かりました。
吉田 私はいくつかの工場の復旧を担当しました。凄惨な状況からの復旧でしたが,タイの経験者が一堂に会した側面もあって,緊張感と懐かしさが混ざった複雑な気持ちでしたね。
鬼頭 100棟を同時に復旧するという経験は,これまでないわけです。現有勢力でできる範囲でやるしかないのかなと思っていましたが,当時のタイ・カジマの高橋正剛社長が「溺れた子供をすぐに飛び込んで助けに行かない親はいないだろう」と,全世界から人をかき集めて一斉に復旧工事を進めた。お客さんの要望以上の早さで復旧工事を終えることができたのです。1日も早く復旧して生産再開したいというのがお客さんの本音ですから,非常に感謝されました。
財部 高橋社長の言葉に,建設業の使命を感じますね。
鬼頭 まさに使命ですね。関係者が一体となって,懸命に取り組みました。1年弱の間,新規受注を一切行わずに復旧工事に専念しましたから。
高村 災害からの復旧・復興は建設業の使命だと思います。東日本大震災の復旧・復興工事にも,当社社員が発災直後から携わっています。応急復旧から本格復旧,復興の段階に進んできましたが,各地のがれき処理やまちづくりに活躍している。台風など自然災害からの復旧にも従事しています。
 私はこれまでにつくられた社会資本の維持・更新も21世紀を生きる土木屋の使命と感じています。ただし,これは現状の新設工事のマーケットの延長線上にはない。トンネル補修工事を経験したことがありますが,資機材が特殊なのです。特殊な資機材,つまりハードの部分をいかに押さえるかがポイントになります。技術研究所やグループ会社に優れた保有技術が多くありますが,これまで以上にマーケットを意識した技術開発に資源を投入していくことが重要ではないでしょうか。
財部 補修工事は大規模なものがなく,ゼネコンが担当するイメージがないのですが,鹿島の役割はどういうところになるのでしょう。

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 補修工事については,材料を押さえることなくマネジメントだけでビジネスにしようとすると,大ロットで一括受注という形でない限り,当社が関わる格好にはなりにくい。一方,更新工事については,仮設設計が事業のポイントになりますから,素晴らしい設計部隊を持つ当社の長所が大いに発揮される。そこに特殊な機械なり設備も併せてひとつの工法として確立できると,さらに確固たる差別化になると思います。
永江 アセットマネジメントのように,個別の維持管理は地域の会社に任せるけれども,鹿島が大きなエリアでマネジメントを担当するような参入の仕方もあるということですね。
高村 僕も嵩さんのいうとおりだと思っています。ヨーロッパでは100年,200年の構造物が当たり前です。見た目はそのままで,1車線がいつのまにか2車線になっていた橋がありました。構造的に問題がないか尋ねると,中身を超高強度コンクリートにしてあると。そういうところで技術は使われていく。日本でも同様だと思います。材料や工法を前面に押し出して提案していく。我々が活躍しなければならない分野はますます増えていくと思います。

タイ洪水

図版:タイ洪水

2011年6月から10月にかけてチャオプラヤ川で大洪水が発生し,アユタヤなどの7工業団地が水没して数百の工場が被災した。もともとこの地域では,流域の氾濫を許容することで首都バンコクを洪水から守ってきた。しかし,工業団地の成長で氾濫地域の経済発展は著しく,甚大な洪水被害を受けてタイ政府は大型治水事業を国際入札で行う方針を打ち出した。
この発表は官民一体型のインフラ輸出のモデルケースになると注目を集め,コンサルタントやゼネコンなどで構成された日本勢も応札を検討したが,用地買収などの住民交渉を事業者責任で行う厳しい要件を考慮して辞退している。
写真は,洪水時,現地に向かうタイ・カジマ社員。

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