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新たな事業と人のつながり

財部 価値の創造という観点では,エンジニアリング本部への期待は高いと思いますが,いかがでしょうか。
度会 私たちがめざすのは,付加価値を生み出し過当競争から脱却することです。今,医薬品や食品,化学,植物工場など様々な施設を手掛けていますが,重要なのは,技術がパラダイムシフトする瞬間を逃さずに捕えること。そして当社のオリジナリティにしていくことです。それがめざす姿です。
永江 経営企画の立場からも,興味深いですね。具体的には,どういった例がありますか。
度会 例えば,医薬品の効能は日進月歩で向上していますが,効き目が高まるほど工場作業者の健康を害するリスクが高まる。つまり,製薬過程で作業者が医薬品に被ばくして,不必要に医薬品を摂取してしまうケースがあるのです。欧米を中心に「作業者の健康を守ろう」という機運が高まった時期がありました。そのタイミングで我々は,国内ではじめての作業者保護と自動化を両立させた工場を提案して完成させたのです。
財部 時代の流れをいち早くキャッチしていたのですね。
度会 そうです。この瞬間に,業界内での立ち位置が完全に変わりました。鹿島のつくる医薬品工場に大きな付加価値がつきました。ほかにも,次世代を見据えて植物から医薬品原料等を製造する施設も世界ではじめて建設しました。得意先の本質的なニーズをつかみ,時代が求める技術が何なのかを正確に見極める必要があります。後発で乗り込んでは建物をつくるだけになってしまう。早期に乗り込み,オリジナリティを確立することが重要です。
高村 パラダイムシフトという話ですが,私の場合,まさに東日本大震災がそれでした。もともと私どもが手掛けていたのは,原子力の中の核燃料廃棄物,その処分という狭い範囲です。それが一瞬で変わった。原子力に関わる全ての分野に対応しなければならなくなったのです。もちろん,簡単ではありません。これまでに経験したことがありませんから。例えば,除染。今でいうと除染は,水で洗って拭くのがコストパフォーマンス的にも優れているといわれています。ところがあの時点では,誰ひとりとして,そのことを知っている人はいなかった。
財部 震災直後の話ですね。
高村 そのときに頼りにされたのがゼネコンでした。原子力,土木,環境と幅広い分野で技術者が揃っていますから。普段はみんな自分の業務を続けていますが,そうしたパラダイムが来たときに,あの人ならいいアイデアを持っているかもしれない,あの人も,あの人も,と次々に名前が挙がってくる。自然にタスクフォースが組織されるといいますか。現在,除染の公的なガイドラインにも鹿島のアイデアが多分に含まれていますが,対応できる人材が,鹿島にいたということです。
松井 新しいアイデアが欲しいときに,現場だけでなく建築設計本部や技術研究所などに力を借りるのも同じですね。
高村 その意味ではグループ会社も大切です。経験豊かな社員がたくさんいて,そのアイデアがプロジェクトの成功に密接に関わってくる。

改ページ

永江 グループ会社といえば,当社との関係性を再定義する必要があると考えています。これからは施工の上流・下流との一体感がより重要になる。各社の役割と立ち位置を明確にし,グループ全社員で共有する。特に当社が意識改革できれば,グループ内の連携が一気に進む可能性もあります。蓄積された情報・ノウハウを環流させるために人材交流も大切です。
新里 開発でも企画提案する段階では,グループ会社との連携を意識しています。例えば鹿島建物総合管理はビルメンテナンスで得意先からの評価が非常に高い。企画段階から同社に入ってもらって,将来のメンテナンスを見据えた提案をしています。メンテナンス管理を進めるなかでリニューアル工事が出るかもしれないし,建替えや売却につながっていく可能性もある。
財部 グループ会社も含めた“知”を最大限発揮するためには,そのネットワークが重要だと思うのですが。
度会 まさに人脈という話ですね。紹介して頂いた方に,さらに紹介して頂くという人的ネットワークに頼ることが多いですかね。
松井 建築は,建築管理本部に情報が集まってきます。人的交流も活発ですし,仕組みはできていると思いますよ。
吉川 以前,インドネシア・カレベダムでマスコンクリートの温度応力に関して,土木管理本部から人を紹介してもらい技術支援して頂きました。
 そういう大きな相談ができる素地はあるので,あとは現場の細かいノウハウをいかに共有化するかが課題だと思います。現場業務をこなしている人間にとっては,マラソンランナーの給水ボトルではないですが,走りながら手に取れる情報が欲しい。大きな情報は手に余るわけです。私は数年前から,情報の水平展開を目的に,自分が経験した工種について現場管理の勘どころやコスト感をA3用紙1枚にまとめています。現場の人間にとってはそれぐらいの情報がありがたい。
吉田 インドネシアで仕事をしていた頃に感じましたが,本社というのは海外の現場からするとだいぶ遠い。今回,私が所属する海外工務部ができましたから,当時のことを忘れずに,その垣根を取り払いたいと思っています。国内と海外,現地法人間が自由に交流できるようにする。これも私たちの重要な仕事だと思っています。

エンジニアリング本部

図版:エンジニアリング本部

エンジニアリング本部は,トータルエンジニアリングサービスを提供するために1996年に設立された。建築の設計・施工だけでなく,調査・企画からプロジェクトに携わり,生産システムなども含めた設計,調達,施工,メンテナンスまでをコーディネートしていく。建築・化学・機械・電気・情報・経営工学など幅広い技術者を集約し,医薬品や食品,植物工場などの生産施設に応用・展開できるエンジニアリングのノウハウを追求することで顧客の多様なニーズに対応していく。
写真は世界で初めて建設された植物から医薬品原料等を製造する工場(閉鎖型の遺伝子組換え植物工場)。

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