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話題のプロジェクトに迫る――(仮称)新日比谷プロジェクト

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話題のプロジェクトに迫る――(仮称)新日比谷プロジェクト

各所で大規模プロジェクトが進行するなか,2018年2月に竣工を控え,
大詰めを迎えている(仮称)新日比谷プロジェクト。
当社の「建築の出発点」と言われる日比谷三井ビル跡地で行われている再開発だ。
既存ビルの解体工事を経て2015年1月28日,新築工事に着手した。
工事の最大の山場だったと現場社員が口を揃える「都心部再開発における解体と地下工事」を中心に,
これまでの軌跡を追う。

Part 1 歴史と概要

当社建築の出発点

明治維新以降,鹿鳴館や帝国ホテルなどの建設で近代化を象徴し,現在では,劇場やホテル,大企業の本社屋が連なる日比谷。ここに当社の建築の出発点とされるプロジェクトがある。1960年に竣工した日比谷三井ビルだ。今回,解体工事が行われ,惜しまれつつも歴史に幕を閉じた。

日比谷公園に隣接する敷地に建設された日比谷三井ビルは,1957年9月に着工し,丸3年をかけ完成した。SRC造,地上9階,地下5階,延床面積9万3,000m2のビルは当時,東洋一の規模を誇るマンモスビルであり,その大きさは航空写真からも一目瞭然だ。

戦後復興によるビルブームや都市人口が増加していた当時,31mの高さ制限があるなかでいかに床面積を拡大するかが目標であった。それまでは壁で区画された部屋が一般的だったのに対し,日比谷三井ビルではパーティションで仕切られた大規模フロアを実現した。今日まで続くオフィスイメージの誕生である。また,窓のアルミ枠二重サッシに象徴されるように,ステンレスとアルミを多用する“材料革命”が起こったのも日比谷三井ビルだった。基礎工法,型枠,高度の金属仕上げなどあらゆる面で当時の建築技術の粋を集めて造られたこのビルは,高度経済成長期へと突入しつつあった日本を象徴するものであった。

写真:竣工当時の日比谷三井ビル(中央)。左に隣接する三信ビル

竣工当時の日比谷三井ビル(中央)。左に隣接する三信ビル

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プロジェクト概要

(仮称)新日比谷プロジェクトは,周辺エリアを含めた“国際ビジネス・芸術文化都心「日比谷」の街づくり”の中核を担うプロジェクトとして,周辺の劇場・映画館と連携した芸術文化発信や,国内外のベンチャー企業・中小企業の事業拡大および新産業創出などを支援するビジネス拠点としての機能を持ち,「東京都都市再生特別地区」及び「国家戦略特別地区」の認定第一号物件となっている。

日比谷三井ビルとそれに隣接する1930年に建設された三信ビル跡地を統合して建て替える事業で,2つのビルの間を走る区道を付け替えて土地を一体化し,延床面積約18万9,000m2にのぼる大規模再開発を実現した。

地上35階,地下4階建ての建物には,地下1~7階の商業フロアに商業施設やTOHOシネマズによる都心最大級のシネマコンプレックス,文化交流施設,産業支援施設などが,11階からの上層階にはオフィスが入る。また,6階の屋外には「(仮称)日比谷テラス」と呼ばれる日比谷公園を眼下に見渡せる3フロアにわたりセットバックした屋外テラスが設けられ,憩いの場を提供する。地下では東京メトロ日比谷線・千代田線「日比谷駅」と直結するバリアフリー通路が整備され,利便性の高い施設となっている。

図版:(仮称)日比谷テラスの完成イメージ

(仮称)日比谷テラスの完成イメージ

外装は,「ダンシング タワー」をコンセプトに,ロンドンを拠点とする建築事務所「ホプキンスアーキテクツ」によってデザインされた。高層部は,かつて敷地南側にあった鹿鳴館の歴史を継承し,柔らかなドレスが舞うイメージの曲線を用いたタワーファサードで,プリーツ状のディテールが曲線を美しく表現している。また,当時モダン都市を象徴する建物であった三信ビルをモチーフに,日比谷通り側の低層部は美しい壁面を,地下広場の天井は美しいアーチ型天井や曲線を活用した内装を再現し,エレガントな意匠となっている。

図版:外観イメージ

外観イメージ

図版:建物断面図

建物断面図

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建物には,当社が世界に先駆けて開発した新世代制震オイルダンパー「HiDAX-R (Revolution)®」を採用した。 HiDAX-Rは,自動車のブレーキ制御などで用いられているエネルギー回生システムの原理を応用したもので,地震エネルギーを揺れを抑えることに利用することで世界最高の制震効率を実現。震度7の大地震だけでなく,頻度の高い震度4~5クラスの地震や長周期地震動に特に高い効果を発揮し,最高水準の安全・安心を提供する。

写真:32階からの夕景

32階からの夕景

図版:区画整理イメージ

区画整理イメージ

(仮称)新日比谷プロジェクト

場所:
東京都千代田区
発注者:
三井不動産
マスターデザインアーキテクト:
ホプキンスアーキテクツ
都市計画・基本設計・デザイン監修:
日建設計
実施設計:
当社建築設計本部
用途:
事務所,店舗,文化交流施設,産業支援施設,駐車場ほか
規模:
S造 B4,35F,PH1F 延べ約189,000m2
工期:
2015年1月~2018年2月

(東京建築支店施工)

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Part 2 10年におよぶプロジェクト

難易度の高い都市部の解体工事

現在の都心部における大規模プロジェクトはほとんどが建替え事業であり,既存建築物の解体工事を伴うことが多くなっている。周辺に建物が密集する都心では,解体工事による騒音,振動の影響は深刻な問題とされる。「敷地周辺には劇場や映画館,ホテルがあります。日中は演劇や映画の上映があり,夜間はホテルに宿泊客がいるので常に音,振動が伝わってはいけない。しかし,解体工事が進まなければプロジェクト全体の工期に影響を与えかねない。解決策に悩みました」。そう話すのは,新築工事の監理技術者を務める廣田裕介統括副所長。当現場に着任する以前,東京建築支店建築工事管理部施工計画センター(当時)で,三信ビル解体工事の現場サポートをした時からこのプロジェクトに関わってきた。

解体工事を行うにあたり騒音・振動の影響実験を行った。近隣施設に赴き,現場で実験的に解体作業を行って数値を測定するとともに,実際の体感としてどのような聞こえ方,揺れ方になるか確かめた。「音や振動の伝わり方は敷地内のどこを壊すかでも変わります。ここの解体では劇場には音は伝わらない,でも少し違う場所を施工したら伝わる。そうして実験を重ねることで“この時間帯のこの場所なら解体できる”と限られた作業時間のなかでいかに効率的に作業を進めるかを検討しました」(廣田副所長)。

写真:既存外壁を残置したオープンな解体工事の様子

既存外壁を残置したオープンな解体工事の様子(2015年4月)

写真:廣田裕介統括副所長

廣田裕介統括副所長

施工では,ワイヤーソーによる構造物の切断やコアボーリングで既存躯体を穿孔したうえで解体するなど極力周辺に影響を与えない工法を選択した。「実験を重ねたとはいえ,周辺の皆さまにはご迷惑をおかけすることもありました。当プロジェクトへの期待や工事への理解があったからこそ進められたと思います」と廣田副所長は当時を振り返る。

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軟弱地盤に挑んだ地下工事

日比谷は元々,日比谷入江と呼ばれる海だった場所を江戸時代初期に埋め立ててできた土地だ。そのため地盤は,地下20m付近までが地盤の硬軟を示すN値がゼロと,極めて軟弱であるとされている。日比谷三井ビル建設中の本誌1959年11月号でも「所謂“有楽町層”と称される東京でも最も軟弱な沖積層であって多量の水分を含有し,且つ圧縮強度,粘着力共に極めて小さく,たとえて言えば“土の形をした水”のようなものである。この極めて軟弱な地層が地表面から20~23mの深さに,極めて厚い層をなし,その下に所謂“東京礫層”と呼ばれる砂利層があって,日比谷三井ビルの全荷重をこの砂利層によって支えている」と記録されている。

当現場を率いる桐生雅文所長は,2011年1月の日比谷三井ビル地上部解体工事着手後の3月に着任した。「当社建築の出発点とされるこの地に臨むにあたり,諸先輩から多くの激励をいただいた。鹿島の現場マンとしてこのプロジェクトに携われる喜び,やりがいはこれ以上ないと思った。その反面,同じくらいの責任と重圧を感じていたのも事実だ」と語る。

桐生所長がこの工事を成し遂げるにあたりもっとも鍵となると考えていたのが,軟弱地盤と地下の解体,山留工事だった。

写真:桐生雅文所長

桐生雅文所長

「この軟弱な地盤で既存躯体をすべて解体すると地盤沈下など周囲に影響が出るのではないか。近くには建物のほかにも地下鉄が走っている。何かが起きたら取り返しがつかないことになると危惧していた」。

騒音・振動の影響実験の結果も踏まえて発注者,設計者と何度も協議を重ねた結果,周辺施設と近接する日比谷三井ビルの既存地下躯体の最外周部を残置することが決定した。これには大きな意味がある。残置する躯体は,リブ壁や斜梁により山留壁として利用できるとともに,最もデリケートな周辺との近接部を解体せずに残すことで,近隣への影響を抑えて,かつ工程短縮につながるからだ。既存躯体を残置することでセットバックした新築地下外壁との余剰部は,非常用発電機用のオイルタンクを設置することで有効活用している。既存躯体を山留壁として利用できたことにより,地下5階まである日比谷三井ビルの地下3階までと地下4階の一部を施工性の高いオープンな環境で解体することができた。

図版:区画整理全体事業計画

区画整理全体事業計画

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写真:大空間を確保でき施工性が向上した地下工事の様子(2016年2月)

大空間を確保でき施工性が向上した地下工事の様子(2016年2月)

緻密な施工計画

広く不整形な敷地形状と周辺地盤への影響から山留工事では,一般的な切梁支保工ではなく「アースアンカー工法」を採用した。ただ,アースアンカーを打設するにあたり懸念があった。日比谷通り側のアンカーが敷地境界を越えてしまうことだ。地上には道路があり,地下には東京メトロ千代田線が走っている。硬質地盤まで届かせるには千代田線函体の下にアンカーを打ち込まなければならなかった。道路管理者や東京メトロと1年以上におよぶ協議の末,なんとか施工にこぎつけた。

山留工事におけるアースアンカー工法とともに導き出したのが逆打ち工法と順打ち工法を組み合わせた「ハイブリッド逆打ち工法」だ。考案したのは山川祐司副所長兼第一工事長。これまで丸の内での解体や新築工事で“都心の仕事”の経験を積んできた。当現場では,工事全般を担当し,主に施工計画を練ってきた。「2011年の日比谷三井ビルの地上部解体をしていた頃から新築工事の施工計画を支店生産計画部とともに考えてきました。既存躯体解体を伴う新築工事で工期に余裕もない。工事をどう進めるのがベストなのか日々模索するなかで生み出した工法です」(山川副所長)。

写真:山川祐司副所長

山川祐司副所長

一般的な逆打ち工法では1階床を先行して構築し,地下1階,2階と順々に施工していく。今回の工事では,地下2階までを逆打ち工法で施工した後,地下2階以深部分にアースアンカーを打ち山留支保工を施工。そこから最終床付けまでの解体・掘削を行い地下4階,3階と順打ち工法で躯体を構築した。「逆打ちで先行して構築した床が山留支保工としての役割を担うとともに,地下解体時の防音効果も得られた。アースアンカー施工で地下3階以深に大空間を生んだことで大型重機を投入でき作業効率が向上した。また,大型設備機器が設置される地下4階の躯体を早い時期に構築するうえでもハイブリッド逆打ち工法とするメリットがあった」(山川副所長)。

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桐生所長が以前の現場で責任感があると認め,解体工事から地下部分の施工管理を任せた清永康之工事係は「近隣への配慮として作業時間が,朝8時からの30分間だけということもありました。歩道や近隣建物との近接作業もあり,常に気を張っている状態で眠れない日もありました。そうしたなかでも,“地下工事で少しでも工程を縮めるんだ”と職長をはじめとした作業員の皆さんと一体となって工事を進めることができました。この地下工事をやり遂げたことはとても大きな経験です」と話す。厳しい施工条件のなかで,日々協力会社といかに力を出し切れるかを考え抜いた結果が実を結んだ。

写真:清永康之工事係

清永康之工事係

地上工事では,低層部と高層部で異なる柱スパンをつなぎ合わせるトランスファー鉄骨の建て方の精度管理や,建物を象徴する緩やかな曲線,細やかな折り目のある複雑な形状の1フロアあたり160ユニットにもおよぶ外装カーテンウォールなど工程のキーとなるポイントがあったが,着工時の全体工程通りに工事を進めることができた。ひとえに緻密な施工計画があったからだと言えるだろう。

写真:躯体工事の様子(2016年8月)

躯体工事の様子(2016年8月)

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図版:地下空間の施工イメージ

地下空間の施工イメージ

写真:トランスファー鉄骨建て方の様子

トランスファー鉄骨建て方の様子

写真:カーテンウォール据付けの様子

カーテンウォール据付けの様子

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現場の総合力

工事の進捗に伴い移転しなければならない150人を収容する現場事務所や約1,800人の作業員の休憩所の確保,日々の作業員が各々の作業場に行く動線…。建物を造るには直接形にならない仕事もたくさんある。

そうしたいくつもの苦難を乗り越え,竣工に向け一致団結して工事を進める力。桐生所長の統率力や職員・作業員を含めた現場の総合力,それこそが大規模工事を成し遂げる一番の要因だったのではないか。

取材を行った8月末時点,現場では11階から上階は施工が概ね完了し,10階から下の設備工事や仕上げ工事が最盛期を迎えていた。桐生所長は,「三信ビルの解体から約10年におよぶプロジェクトがもうすぐ終わる。工事が無事竣工するまで一丸となってやり遂げる」と気を引き締めてラストスパートをかける。

2017年9月4日には,同施設の名称が「東京ミッドタウン日比谷」に決定し,オープンに向けての期待が高まりをみせている。日比谷に生まれる新たな地域のシンボルは2018年3月29日に開業予定だ。

写真:集合写真(2016年7月 押味社長現場パトロール時)

集合写真(2016年7月 押味社長現場パトロール時)

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