[2017年7月11日発表]
地震時の安全性を備えた超軽量な吊り天井システムを開発
1m2あたり2kg以下の超軽量天井「セーフティ・ダイア™-K」
当社は，1m2あたり2kg以下という重量を達成した吊り天井「セーフティ・ダイア‐K」（特許出願中）を開発した。
一般的に下地材とボード類により構成される吊り天井は，概ね1m2あたり10kg以上の重量があり，また固く割れやすい面材を用いると，大きな地震による破壊・脱落によって人的被害が発生するおそれがある。国土交通省は，脱落によって重大な危害を生じるおそれがある天井を「特定天井※」として規定しており，該当する天井を構築する際には，法の仕様に適合するか，個別の実験や構造計算等による検証を通じて，脱落への対策を講じなければならない。
「W-DECKER」による振動台実験
今回開発した「セーフティ・ダイア‐K」は，吊り天井の下地材（野縁・野縁受け）を減らしながら専用金物によりバランスよく結合し，軽量な面材を採用することで天井総重量を低減。これにより天井自体の脱落による重大な人的被害の回避が期待できるとともに，下地材の数量の削減や面材の軽量化などにより，生産性の向上や材工を含めたトータルコストの低減にも寄与する。また，当社技術研究所が保有する3次元振動台「W-DECKER®（ダブルデッカー）」を用いた実験の結果，告示波（Ｌ2）※の4倍の振動を加えても大きな破壊や脱落は発生せず，地震に対する十分な耐久性も確認した。
当社では今後，「セーフティ・ダイア‐K」をショッピングセンターや学校，体育施設，生産・物流施設など，一般的な吊り天井では特定天井に該当するような大空間に展開することを視野に入れている。
※特定天井
人が日常的に立入る場所の吊り天井であって，高さ6m超，面積200m2超，単位面積の重量が 2kg / m2を超えるもの
※告示波（Ｌ2）
超高層建築物や免震建築物等の構造設計に用いるために国が定めた地震動
超軽量吊り天井「セーフティ・ダイア‐K」
「セーフティ・ダイア‐K」の概要
- ●面材は約90cm角の大判で軽量な材料，下地材は一般のLGS（軽量鋼）材を採用
- ●野縁は面材形状に合わせた独自のグリッド組みとし，間隔を拡げることで数量を削減
- ●各野縁を同一面に納めるため，専用金物にて結合
- ●下地材・面材を含め，1m2あたり2kg以下という軽量化を実現
[2017年7月31日発表]
最終処分場「エコアくまもと」でホタルが舞う
～地域の生態系を守り育てるビオトープの成立を実証～
当社が熊本県公共関与産業廃棄物管理型最終処分場「エコアくまもと」（熊本県玉名郡南関町）に構築したホタルビオトープで，今年もホタルが舞い，地域生態系保全に貢献する施設として成立していることを確認した。
「エコアくまもと」は，周辺地域の水田や雑木林からなる里山環境を保全するとともに，資源循環や生物多様性保全を学習する県北の環境教育拠点としても期待され，ホタルビオトープは，環境教育施設のひとつとして大きな役割を担っている。
ビオトープが地域の環境基盤として機能しているかの指標のひとつがホタルの飛翔だ。ホタルは，成長段階に応じて水中から陸上へ生息場所が変わることから，様々な条件でその生育に適した環境が求められる。また，ホタルの餌となるカワニナの導入・定着が課題だった。
そのため，周辺の環境条件の調査や，水源となる敷地内のため池の水を用いた現地実験などを行い，結果，カワニナが良好に生育する条件を見出すことができた。施工では，ホタルの幼虫の上陸に適した岸辺の構築や，水の流れを多様化させる石材の配置，ホタルの蛹化を妨げない水路周辺の土壌硬度などに留意した。
ビオトープに放流したカワニナとゲンジボタルは，周辺の生態系に影響を与えないように現地で必要最低限採取し，当社技術研究所で飼育増殖した。独自の飼育システムによりホタルの幼虫約700個体，カワニナ約2,500個体の増殖に成功。2015年10月の竣工と同時にカワニナを放流し，その定着を確認したうえで，2016年3月にホタルの幼虫をビオトープへ放流した。
放流後は，動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」を活用した調査・管理を継続して行っている。その結果，ゲンジボタルのほか，希少種であるコガタノゲンゴロウやウチワヤンマなど多様な生き物が確認され，ビオトープが周辺地域の生態系の環境基盤として機能し，生物多様性の維持に貢献していることが確認できた。これらの実績などを含めた取組みが高く評価され，エコアくまもとは，「平成28年度土木学会賞環境賞」を受賞している。
エコアくまもとに整備したホタルビオトープ
ビオトープで光を放つゲンジボタル
「いきものNote」による現況把握と管理支援
