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カニ護岸パネル

生き物目線で護岸の形状を考えることで食物連鎖の復活を実現

防災・治水を目的とした護岸改修によって、生物の棲み処であった石積護岸は、コンクリートや鋼矢板護岸に姿を変え、生物たちの棲み処が失われる形となりました。

鹿島では、既存のコンクリート護岸でもカニが生息している実例に着目し、カニ護岸パネルを開発しました。

食物連鎖において海ではカニの存在が重要とされています。カニの好む棲み処は、湿潤した石積の隙間などです。そこでコンクリートを用い、カニが好む石積み機能を再現しました。

また本パネルには、カニだけでなく、ウナギやハゼが生息している様子も確認されています。

特許登録済
2011年日立環境省 環境大臣賞
国土交通省 平成14年度自然創出に関する画期的技術

図版:カニ・ウナギ護岸パネル 断面イメージ

カニ・ウナギ護岸パネル 断面イメージ

キーワード
護岸、食物連鎖、生物多様性、湿潤、減災、カニ、ウナギ、ハゼ、カニパネル、KANIパネル®
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生態系に配慮したカニ、ウナギ、ハゼなどの多様な生息空間の創造

カニ護岸パネルは、カニが好む日光の照り返しが低い色調を採用するとともに、パネル表面をカニが歩行しやすい粗面にしています。また石積みを模した目地や、裏面に通じる貫通穴を再現することで、カニが安心して隠れたり冬眠できるよう配慮されています。また穴を好むウナギの棲み処、食物連鎖の基盤でカニの餌にもなる藻類が繁殖しやすい粗面など、身近な生物を守る様々な機能を有しています。

あわせて生物の多様性を育む潮だまりや干潟などを隣接して整備することで、多様な生物の生息空間を創造することができます。

図版:カニが生息している様子

カニが生息している様子(動画:46秒/音なし)

図版:都市部におけるカニ護岸パネルと潮だまりを有する耐震補強護岸例

都市部におけるカニ護岸パネルと潮だまりを有する耐震補強護岸例

図版:ウナギやスズキの幼生が生息している様子

ウナギやスズキの幼生が生息している様子

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特長・メリットココがポイント

生き物の棲み処をコンクリートで創造

  • 実際に生息している石積みの護岸を参考に、コンクリート製のプレキャスト部材を製作します。
  • カニが歩ける凹凸の粗面と、隠れ場所としての深目地を入れ、照り返しが小さい色にしています。
  • パネルの色は、周辺の景観に合わせて、約10種類の色調から選べます。
  • 新設護岸だけでなく、既設護岸にも施工可能です。

図版:カニ護岸パネル

カニ護岸パネル

食物連鎖を意識した機能

  • 裏まで貫通する穴を設け、裏には棲み処や冬眠場所となるよう小石や土砂を充填しています。
  • 水生生物の生活空間を創出し、カニを要とする食物連鎖を復元することを目的とした生物共生護岸を再現します。
  • 護岸の生物再生は、沿岸魚介類の資源の保全・再生産にも寄与し、身近な内湾の再生につながります。

図版:カニが隠れている様子

カニが隠れている様子

人にも優しい護岸

  • 表面に深目地があるため、河川・運河などに誤って人が落ちたときも登ることができます。
  • 地震などで河川・運河周辺に避難した際に、パネルを登り降りすることが可能なので、そのようなニーズの場所にも設置され、減災に寄与しています。

図版:表面の深目地

表面の深目地

適用実績

図版:芝浦アイランド南地区西側護岸整備

芝浦アイランド南地区 西側護岸整備

場所:東京都

竣工年:2006年4月

発注者:モノレールエンジニアリング

規模:護岸238m 
鋼管矢板 Φ800 L=18m n=108本 Φ500 L=12.5m 他 n=131本 
鋼矢板VL L=13.5m他 n=52枚 他 
埋立工 7,390m3 土留擁壁 1式

図版:臨海・港湾

他にも多くのパネル納入・設置実績があります。

学会論文発表実績

  • 「環境保全・修復材 ─コンクリート護岸パネルの試み─」,土木学会,海洋開発論文集,第17巻,2001年6月
  • 「自然環境とコンクリート性能について」,コンクリート工学,Vol.45,No.5,2007年5月

地球にやさしく! サンゴ礁を蘇らせる
「コーラルネット®

設置するだけで、サンゴが自然にふえる人工基盤
港湾・空港構造物周辺の環境創造としても活用

鹿島は業界で唯一、サンゴに関する研究開発を長年にわたって行っています。地球規模でサンゴ礁が消滅している原因の一つに、開発による細かい粒子が海底に堆積し、サンゴの子どもが着生しない現象があります。

コーラルネットは、網状構造のため、サンゴの着生を妨げる細かな粒子の堆積を防ぐと共に、外敵であるウニや魚類から守ります。また、基盤裏側にはサンゴが好んで着く石灰分を含む藻類(石灰藻)を増殖させます。

現在、沖縄県におけるサンゴの再生事業、港湾施設において適用し、サンゴの成育効果が確認されています。

2009年土木学会地球環境シンポジウム 地球環境技術賞
第3回いきものにぎわい企業活動コンテスト 審査委員特別賞
平成26年度土木学会賞 環境賞(Ⅰグループ)
特許登録済

図版:コーラルネットを活用した港湾におけるサンゴの再生(イメージ)

コーラルネットを活用した港湾におけるサンゴの再生
(イメージ)

図版:慶良間諸島座間味島でのサンゴ再生プロジェクト

慶良間諸島座間味島でのサンゴ再生プロジェクト

キーワード
サンゴ、港湾、自然再生、臨海、環境
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サンゴ着生基盤「コーラルネット」の用途別タイプと仕様

コーラルネットの素材は、目的や場所によって自然分解性と不分解性の2タイプがあります。大日本プラスチックスと共同開発した自然分解性のコーラルネットは、自然環境に配慮したサンゴ礁再生を実現します。基盤の裏側に自然着生したサンゴは、岩盤などに移設して1年以内で活着し、6〜7年後には基盤は自然分解しサンゴだけが残る仕組みです。港湾などのコンクリート構造物に設置する不分解タイプの基盤は、ステンレスなど腐食の少ない素材で構成され、波や流れのある環境でも安定した設置ができます。

図版:自然分解樹脂製サンゴ着生基盤

自然分解樹脂製サンゴ着生基盤

図版:ステンレス製サンゴ着生基盤

ステンレス製サンゴ着生基盤

図版:慶良間諸島の砂礫帯における自然分解性コーラルネットによる枝サンゴ群集の再生 基盤設置から7年

慶良間諸島の砂礫帯における自然分解性コーラルネットによる枝サンゴ群集の再生 基盤設置から7年

図版:那覇港の港内側におけるステンレス製コーラルネットによるサンゴ群集の再生 基盤設置から8年

那覇港の港内側におけるステンレス製コーラルネットによるサンゴ群集の再生 基盤設置から8年

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コーラルネットの特長・メリットココがポイント

サンゴの着生・成育に最適な構造

  • コーラルネットは、網目状の構造であるため細粒分などのサンゴの着生を妨げる物質を堆積させません。サンゴは、はじめ基盤の裏側に着生し、構造上、光や流れが通り、魚やウニなどからの捕食を免れ成育します。
  • サンゴ着生基盤の裏側には、石灰分を含む藻類(石灰藻)が繁茂する特性があります。サンゴ幼生は、この石灰藻を好んで着生することが判っています。

図版:網状構造によるサンゴ着生基盤の特長

網状構造によるサンゴ着生基盤の特長

図版:基盤裏側に着く石灰藻とサンゴの幼生

基盤裏側に着く石灰藻とサンゴの幼生

軽量・施工性の良さ

  • 薄型、軽量のため運搬並びに施工が容易です。自然海域では鉄筋を使用して固定、港湾ではコンクリートへアンカーボルトにより固定します。
  • コーラルネットは、コンクリート、岩礁、砂礫底など、どんな場所でも簡単に設置することができます。

図版:(左)ダイバーにより基盤を設置(自然分解性コーラルネット)、(中)設置した基盤に自然着生したサンゴ、(右)サンゴの着いた基盤を設置して3年目 産卵による再生産が可能なサイズに成長

ダイバーにより基盤を設置
(自然分解性コーラルネット)

設置した基盤に自然着生したサンゴ

サンゴの着いた基盤を設置して3年目
産卵による再生産が可能なサイズに成長

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生育状況

2010年にコーラルネットを設置以降、基盤にサンゴが着生し、順調に成長しています。設置から4年後の2014年6月に本技術の適用により初めてサンゴの産卵を確認しました。

図版:設置時(2010年)

設置時(2010年)

図版:1年経過(2011年)

1年経過(2011年)

図版:2年経過(2012年)

2年経過(2012年)

図版:3年経過(2013年)

3年経過(2013年)

図版:4年経過(2014年)

4年経過(2014年)

図版:7年経過(2017年)

7年経過(2017年)

図版:自然分解性コーラルネットに自然着生したサンゴ(7年目)

自然分解性コーラルネットに自然着生したサンゴ(7年目)(動画:1分00秒/音あり)
サンゴが成長して岩に根付いた後、基盤は自然分解します。サンゴは海のゆりかご。海の生き物の住み家や産卵場所を提供し、海洋生態系の中で重要な役割を果たしています。

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適用実績

図版:内閣府 実海域実験場提供システム 那覇港内サンゴ再生実験

内閣府 実海域実験場提供システム
那覇港内サンゴ再生実験

場所:沖縄県那覇港

適用期間:2011年3月〜現在実施中

港内側4地点の水深-3m、-5m、-7mに50センチ角ステンレス製着生基盤を設置。計24枚

図版:沖縄県サンゴ礁保全再生事業

沖縄県サンゴ礁保全再生事業

場所:沖縄県慶良間諸島、沖縄本島

適用期間:2012年4月〜現在実施中

事業者:沖縄県 
(沖縄環境調査(株)、いであ(株)と共同実施)

規模:慶良間海域、沖縄本島海域の合計約20地点

図版:座間味島サンゴ再生プロジェクト

座間味島サンゴ再生 プロジェクト

場所:沖縄県慶良間諸島

適用期間:2008年〜現在実施中

発注者:座間味ダイビング協会との共同

規模:慶良間海域

学会論文発表実績

  • 「那覇港内におけるサンゴ再生(1)─港内物理環境とサンゴ被度の関係─」,日本サンゴ礁学会,第15回講演要旨集,2012年
  • 「那覇港内におけるサンゴ再生(2)─網状人工基盤の設置によるサンゴ着生効果─」,日本サンゴ礁学会,第15回講演要旨集,2012年
  • 「台風により崩壊したサンゴ礁地帯のスピード再生 ─生分解性網状基盤の活用─」,日本サンゴ礁学会,第16回大会要旨集,2013年
  • 「港内のサンゴ生息地適性指標モデル(HSIモデル)の開発」,土木学会論文集B2(海岸工学),2013年
  • 「那覇港内における網状人工基盤を用いたサンゴ群集の再生」,土木学会論文集B2(海岸工学),2014年

消失が危惧される藻場の再生・保全技術

地域固有の大型海藻類の種苗生産、ブルーカーボンの創出

全国の沿岸海域では海藻が消失する「海の砂漠化―磯焼け―」が進行しています。神奈川県三浦郡葉山町でも2020年、代表的な大型海藻であるアラメ、カジメが衰退し、特に浅場のアラメは消失してしまいました。

鹿島は、消失が危惧される藻場に生育する大型海藻の再生・保全を目指して、地域固有の大型藻類の配偶体を基にした種苗生産システムを確立し、藻場再生に適用しています。

港湾海域では、陸上施設で生産されたアラメの幼体を付着させた種糸をユニット型漁礁の外周に取付けることで、短期間でアラメの藻場を創ることが出来ました。藻場ではメバルの稚魚の成育場やイカの産卵場としての機能を確認しました。今後、港湾海域の藻場再生は洋上風力発電事業などにおける地域環境保全への適用が期待されています。

自然海域においては、近年の磯焼け対策として、地域漁業者による海藻養殖、地域ダイバーとの連携活動により、藻場を復活し、ブルーカーボンの創出につなげています。

※ブルーカーボン:
海藻等が光合成により、海中のCO2を取り込み、生長の過程で難分解性物質として海底に貯留される炭素のこと。

特許登録済
第31回地球環境大賞 フジサンケイグループ賞 2023年

図版:ユニット型漁礁の設置状況(2021年11月)

ユニット型漁礁の設置状況(2021年11月)

図版:アラメの生育状況(2022年6月)

アラメの生育状況(2022年6月)

図版:葉山海域の磯焼け状況(2020年11月)

葉山海域の磯焼け状況(2020年11月)

図版:カジメ場の再生状況(2023年1月)

カジメ場の再生状況(2023年1月)

キーワード
藻場、海藻、磯焼け、配偶体、種苗生産
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大型海藻の種苗生産技術・海藻養殖への展開

地域固有の藻場を持続させるために、海藻配偶体の単離、培養を行い、成熟促進させて藻体の大量生産を行います。

地域固有の配偶体は、少量での保存が可能であり、1年を通じて藻体の提供が可能です。

種苗生産したカジメやアラメなどの海藻種苗は、地域漁業者の協力により、海面における養殖を実施しています。ワカメ、コンブなどの食用海藻以外で一定規模での大型海藻類の養殖事例は全国でも珍しい取組みです。

図版:大型海藻の種苗生産技術・海藻養殖への展開

図版:室内で種苗生産された海藻種苗(種糸)

室内で種苗生産された海藻種苗(種糸)

図版:漁業者による海面養殖

漁業者による海面養殖

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ブルーカーボンの創出とネイチャーポジティブの取組み

鹿島は、地域の多様な主体(漁協、学校、ダイビングショップ)と連携した地域団体を2006年に結成し、藻場再生活動を18年間継続実施しています。地域の学校でのブルーカーボンの授業、漁業者とダイバーによるウニの駆除や藻場再生の取組みなど、地域連携による持続的な藻場再生は「葉山ブルーカーボンモデル」として注目を集めています。

その成果は、2022年に46.6t-CO2、2023年に49.7t-CO2のブルーカーボンがJBE(ジャパンブルーエコノミー研究組合)により認可されました。今後は、相模湾一帯への展開をはじめ、全国への展開が期待されます。

図版:ダイバーによるカジメの苗の設置活動

ダイバーによるカジメの苗の設置活動

図版:海中でのカジメの観察

海中でのカジメの観察

図版:葉山町、湘南漁協葉山支部との藻場再生の協定

葉山町、湘南漁協葉山支部との藻場再生の協定

図版:学校における出前授業

学校における出前授業

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引き続き、地域の藻場再生や保全、教育活動などのネイチャーポジティブへの貢献の他、洋上風力発電事業他の事業者と共に、地域における藻場再生計画への本技術適用などを展開する計画です。

図版:藻場再生計画イメージ

学会論文発表実績

  • 「フリー配偶体由来のアラメ芽胞体を用いた藻場造成試験」,令和5年度日本水産学会春季大会,2023年
  • 「消失が危惧される地域固有の大型褐藻類の再生 ─海のゆりかごからブルーカーボンの創出まで─」,環境浄化技術,2023年
  • 「葉山町の多様な主体が連携した藻場保全活動」,全国漁業協同連合会シンポジウム「里海保全の最前線」,2023年
  • 「フリー配偶体によるカジメ・アラメの種苗生産と海域における初期生長」,令和4年度日本水産学会春季大会,2022年
  • 「アラメ、カジメのフリー配偶体を用いた藻場再生試験」,令和4年度日本水産学会秋季大会,2022年

臨海・港湾技術 インデックス

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